沖縄県名護市の辺野古沖で船2隻が転覆し、修学旅行中だった女子高校生ら2人が死亡した事故から16日で半年を迎える。
この間、遺族は修学旅行を引率していた教師らを告訴し、刑事事件へと発展した。
今回、「newsランナー」はメディアで初めてこの修学旅行を引率し、遺族に告訴された教師を独自取材した。
引率していた男性教師:『後悔している』、『していない』という話だけで言うたら…そんな質問しなくても分かるじゃないですか。
また同志社国際高校の生徒やその保護者からも、学校側の説明が不十分であることに不信感が募っている。
■修学旅行を引率していた男性教師を独自取材
8月、ランナーが独自取材したのは、同志社国際高校に勤務する男性の教師。辺野古で転覆事故が起きた修学旅行を引率していた一人だ。
長い沈黙の末に今回、初めてメディアの取材に応じた。
引率していた男性教師:逃げずに、みんなしんどい思いをしながら…当然、武石さん(遺族)の方がしんどいですけど、大小なりともしんどい思いをして、それでも向き合っていく。

■小型船2隻が転覆 修学旅行中だった女子高校生ら2人が死亡
金井創船長:この基地建設が始まってから、アジサシが飛んでくる例はゼロになってしまいました。
船の上で船長の説明を聞くのは、修学旅行の平和学習で沖縄県名護市の辺野古沖を訪れていた同志社国際高校の生徒たち。
しかし、この後…小型船2隻は転覆。
当時2年生の武石知華さん(17)と船長の金井創さん(71)が死亡した。

■生徒が乗ったのは“抗議船” 船の下見なしなど学校側のずさんな安全管理
事故後、次々と明らかになったのは、学校側のずさんな安全管理の数々だった。
同志社国際高校 西田喜久夫校長(当時):下見に関しては、毎年、夏休みを利用して教員が行ってます。船に乗っているときもありますし、ことしは乗っていないと聞いている。
(Q.金井船長の話だけで安全と判断か?)
同志社国際高校 西田喜久夫校長(当時):実際はまさしくその通りでございます。私どもと金井先生(船長)との間の信頼関係の中で大丈夫だと。
船での下見や調査が行われていなかったほか、生徒たちが乗った船は米軍基地の辺野古移設に反対する「抗議船」だったことが明らかになった。
こうした学校側の不十分な安全管理を、事故原因を調査した第三者委員会は次のように指摘した。
特別調査委員会 渡辺徹委員長:学校法人同志社は、生徒に対する安全配慮義務違反の責任は免れない。

■娘を失った両親は「校長や引率教師ら11人を刑事告訴」
本来、生徒を守るべき学校の無責任な対応によって命を落とした武石知華さん。最愛の娘を失った両親は行動に出た。校長や引率教師ら11人を刑事告訴した。
武石知華さんの両親:学校を信じて送り出した研修旅行で、私たちの知らないうちに抗議活動に使われた船に乗せられ、大波にのまれ、帰って来ませんでした。
誰から見ても明らかな安全管理の欠如があるにもかかわらず、このまま時間が過ぎれば、最悪の場合、亡くなった船長1人が、被疑者死亡のまま送検され不起訴となる。
誰一人、法廷で刑事責任を問われることなく終わってしまう。その可能性すらあると感じました。私たちにはそれは耐えられません。

■引率していた男性教師“胸中”を語る
今回の事故をめぐる学校側の安全管理の不備の中でも、重要な問題の一つとなっているのが、引率していた教師2人が船に乗っていなかったという事実。
第三者委員会も、「安全管理の全てが船長などに委ねられていた」と指摘している。
今回「newsランナー」は事故当日、自らは船に乗らず、港から知華さんたちを見送り、その後、遺族に刑事告訴された教師の1人を独自に取材した。
(Q.遺族は責任の所在を明らかにしたいと告訴したが?)
引率していた男性教師:今、言った通りです。学校に問い合わせてください。
記者が何度質問をしても、「組織の一員として答えられない」と男性教師は繰り返したが、対話を重ねると少しずつその“胸中”を語り始めた。

(Q.自身はあの時、乗るべきだったという考え?)
引率していた男性教師:自分の考え方は(学校側に)伝えています。『後悔している』、『していない』という話だけで言ったら…そんな質問しなくても分かるじゃないですか。
今後、今回についてどう真摯(しんし)に向き合っていくかとか…今後どうやってやっていくかとか…
組織もそうだし、個人としても、対応が校長とか教頭になっているのであれば、表には出せないから非難は当然、闇の中で受けるしかないと思いますけども、それでもその中で…向き合って…いくしかないですし。
学校全体で、“事故に対する後悔の思いを抱いている”と明かす男性教師。
しかし、引率していた教師として事故の詳細について答えてほしいと再度、問うと…。
引率していた男性教師:学校もやっぱり組織ですから、パニックを起こしているから、いろんなことが起こっているんで。
証言が二転三転したら、『隠ぺいしているんじゃないか』と出てくるのも怖いと思うので、事実を集約をしてというところで、考えてはるんじゃないですか。

■地元の漁師は違和感 生徒たちが乗船したのは防波堤の一角
半年前、事故のあった海で一体、何が起きていたのか。その答えに近づくため、取材班は沖縄県名護市の辺野古へと向かった。
現場となった海域に案内してくれたのは、地元の漁師だ。
修学旅行で生徒たちが実際に船で通ったとされるルートをたどってもらい、明らかになったのは、地元の海を知り尽くした漁師が抱く複数の違和感だ。
生徒たちが乗船したのは、漁港の船着場ではなく、防波堤の一角。
(Q.普通はこの岩場みたいなところから?)
地元の漁師:乗り降りしないと思います。
(Q.この辺から修学旅行生を乗せていたと聞いて?)
地元の漁師:『乗せたんだ…』という感じですね。危ないと思います。せめてあっち(船着場)に着けて乗せれば良かった。
抗議船は、名護市から辺野古漁港への係留許可を得ていなかったため、いつもこの防波堤から船を出航させていたとされています。
記者リポート:実際に歩いてみますと、幅もかなり狭く、岩場からの高さもあります。

■船が転覆したのはサンゴ礁が見えやすい「浅い」海
次に、船が転覆したとされているエリアに近づくと、広がっていたのはサンゴ礁が見えやすい「浅い」海。
(Q.他と比べてサンゴ礁がきれいなエリア?)
地元の漁師:浅ければサンゴ礁も多いはずなんで。
きれいな一方で、こういったエリアは危険が伴うと指摘する。
(Q.浅いところを走るのは危ない?)
地元の漁師:危ないですね。今は何もないですけど、岩とかがあったら、エンジンに当たったらやばいので。

■転覆場所は波が立ちやすい場所「リーフエッジ」
さらに、こういった海域特有の光景も。
地元の漁師:今わかります?船が近いから波立ってるじゃないですか。白波が立ってる時点で、近くには自分なんかでも行かない。
今回の事故で船を襲った「波」。転覆場所は、サンゴ礁のある浅い海と深い海の境目にあたる「リーフエッジ」と呼ばれる場所で、波が立ちやすいという。
地元の漁師:例えば10分波が立ってなくても、いきなり波が立ったりとかあるので危ない。
(Q.地元の人はやっぱり通らない?)
地元の漁師:通らないっていうか、近づきもしないですね。

■転覆した抗議船は人を乗せる“許可なし”
そんな海で、生徒たちを乗せたのは、ヘリ基地反対協議会の「抗議船」。
この船にも、危険が潜んでいると言う。
地元の漁師:(小型の船は)大きい船よりは波に弱いので転覆しやすい。危ないですよね。そもそも人乗せていく時点で間違ってる。
一般的に、小型船は波に対抗する力が弱く、波の変化に耐えることが難しいとされていて、さらに、転覆した抗議船は、人を乗せるのに必要な許可を受けていなかったのだ。

■学校の事故後の対応は「保護者の気持ちを逆なで」
現場取材で見えてきた、同志社国際高校の安全管理の無責任さ。さらに、事故後の対応についても厳しい目が向けられている。
同志社国際高校に通うAさんの父親:コミュニケーションがないので、非常に学校に対しての不信感。ずっともやもやしたままではいます。
ランナーの取材に、学校への不信感を語ったのは、同志社国際高校に通うAさんとその父親。
複数回にわたって保護者説明会が開かれたが、不誠実な対応に怒りを滲ませる。
同志社国際高校に通うAさんの父親:保身に走っているような印象が強くて、用意されたものをただ読み上げて終わろうとしている印象がかなり強かった。
読み上げるだけでは、理解できないものもたくさんあったと思う。そこを聞きたいはずなのに、それ(読み上げた)だけで終わろうとしたところは、余計に保護者の気持ちを逆なでした。

保護者説明会には知華さんの遺族も参加。引率していた教師からの直接の謝罪を求めたということだが…。
同志社国際高校に通うAさんの父親:(学校は対応を)後回しにしている。きちんと対応されていない。何の謝罪も先生たちから現状ないところに、(知華さんの遺族は)意見をされていました。
遺族、そして保護者や生徒への十分な説明がなされないまま、高校側は8月、沖縄県への修学旅行を今年度は中止にすると明らかにした。
Aさんは、自身が通う同志社国際高校についてこう、批判する。
同志社国際高校に通うAさん:もし自分が船に乗っていて、あの学校体制の中で先生の安全管理や、学校の本質的な部分が原因で、自分の命をなくすって考えると、本当にもう信じられないことだったなと。

■在校生の学校に対する不信感 引率していた男性教師は「死ぬまで背負っていく」
在校生からも聞かれる学校への不信感。引率していた男性教師はどう受け止めているのか。
引率していた男性教師:みなさん(教師らは)いろんな思いを持っているとは思いますけど、すみませんがお答えできないです。抱えていることはみんないっぱいあると思います。
それぞれの思いはあるものの、個人としての意見は「混乱を生む可能性がある」ので答えられないとした。
その一方で、事故後も教壇に立ち続ける中で抱えてきた葛藤を口にする。
引率していた男性教師:生徒の前では笑顔とか励ましながら向き合って、生徒のいない裏では、なんて言ったらいいんですか、悩むのは当たり前なので向き合って。
もう当然、死ぬまで背負っていくと。言葉にそれ以上できないですね。背負うということしか。

■遺族は真相が明らかになる日を待ち続けている
17歳という若さで突然、この世を去った知華さん。残された家族は、真相が明らかになる日を待ち続けている。
知華さんの父親:もし、知華が今、話せたらなんて言うかな…『パパママ、十分だよ』って…。
知華さんの母親:言わないね。多分曲がったことが嫌いなので、安心して過ごせる場に変ってほしいって思ってると思うので。話したいこともいっぱいある。
でももしもう1度会えるなら、まず最初に言うのは『本当に会いたかった』。それしか言えないと思います。会いたくて、会って抱きしめてあげたくて仕方がないです。
学校教育のあり方や安全管理の重要さを社会に問いかけた事故から、16日で、半年がたつ。

■遺族は「全てを話し、明らかにしてほしい」とコメント
引率していた教師が取材に応じたことを知華さんの遺族に伝えたところ、代理人を通じてコメントをした。
知華さんの遺族コメント:現時点で特定の先生についてのコメントは控えます。過去の年度も含めて、研修旅行の安全に関わる一つ一つの判断を、各々の先生がその時どう感じて下したのか。事件の重大さにしっかりと向き合い、全てを話し、明らかにしてほしいと思っています。
第三者委員会の調査報告書を受け、学校側は「会見を開催する」としていますが、1カ月以上たってもまだ開催されていない。学校側は、どう検証し、どう説明するのか注目される。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月14日放送)


