国境を巡る対立が長年にわたって続いているタイとカンボジアで、24日本格的な軍事衝突が発生。衝突が起きた国境地帯をFNNが戦闘直前の前日に現地を取材していた。

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タイ東北部スリン県とカンボジア北部が接する国境地帯。

タイ軍の兵士が、9世紀から15世紀にかけて東南アジアで繁栄したクメール王朝の寺院遺跡の周辺で警備に当たっていた。

この時点ではまだ戦闘前ということもあり、多くの観光客が訪れていたが、遺跡に向かう入り口にはシェルターがあり、物々しい様子がうかがえた。

実はこの一帯は国境が定まっておらず、タイとカンボジアの両国が領有権を主張し、争いを続けている。

FNNは特別な取材許可を得て、遺跡の方へ向かった。

クメール寺院遺跡「ターモアン・トム」の周辺はタイが実効支配しており、カンボジア側からも観光客が入ることが許されている。

領有権を争っているという様子は遺跡の中にも現れていた。遺跡には黒いベレー帽を被ったタイの兵士と迷彩柄のキャップを被ったカンボジアの兵士の姿。

国境を巡る武力衝突を繰り返してきた両国の間で、5月末には別の国境地帯で銃撃戦が発生。
カンボジアの兵士1人が死亡した事件をきっかけに対立がエスカレートしていた。

この地域でも、観光客を巻き込んだ小競り合いが相次いでいる。取材中、たばこを吸ったカンボジア人の観光客をタイの兵士が注意したことをきっかけに一瞬緊張が走る場面もあった。

一方、記念撮影に一緒に映り、笑顔で握手をしたり、時には互いに会話をするような様子も見られ、観光客からも両国の争いは望んでいないという声も聞かれた。

しかし、7月に入り関係は悪化。取材した「ターモアン・トム」を含む2つの寺院遺跡を24日から閉鎖した直後、本格的な衝突が起きた。タイ軍によると、スリン県の国境地帯でカンボジア軍が発射したロケット弾が着弾し、民間人が死亡した。

被害はタイ側だけでなく、カンボジアの世界遺産にも及んでいるという。

カンボジア政府は、国境付近にある世界遺産のヒンズー教寺院遺跡がタイ軍の空爆などで被害を受けたと発表。

一方、タイ軍は遺跡周辺にあるカンボジア軍の兵器貯蔵施設付近をドローンで攻撃したと公表しました。

急速な関係悪化の影響は市民生活にも及んでいる。タイ政府はカンボジアとの国境にある全ての検問所を封鎖した。国境検問所で姿が見られたのは学生のみ。

しかし、国境を越えて学びに来る学生たちにも影響が出ている。

国境近くにある学校の校長は「まだ連絡が取れない人もいます。状況が改善し、子どもたちが通常通り学校に戻れるようになることを祈っています」と話す。

児童およそ130人のうち、4割がカンボジア人。国境の閉鎖により、その半数近くがカンボジアに帰国したまま、登校できていないという。
この学校では5月に起きた軍事衝突の後から、毎日、有事に備えた授業を組み込み、避難する準備を整えていた。

日常が離れていく現状に子どもたちは「話をつけて終わらせて欲しい。ケンカをやめて」と訴える。

両国の交戦は25日も続き、国境地帯からはおよそ13万人が避難しているという。
タイ保健省はこれまでに14人が死亡、45人がけがをしているとしている。

(7月25日イット!放送より)

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