秋篠宮妃紀子さまは、7月21日、難病患者を支援するためのチャリティコンサートを鑑賞されました。

紀子さまが、このコンサートに姿を見せられたのは初めてでしたが、おいでになるに当たり、難病について知識を得る機会を持たれていました。それは、大阪・関西万博でのことでした。
万博で難病患者と交流
紀子さまは、5月22日から1泊で大阪・関西万博を訪問されています。
23日は、オーストリアのナショナルデー。その国の文化を知ってもらい友好関係の増進を図るため設けられているスペシャルデーで、小中学生の頃の2年間、家族と首都のウィーンに住んでいたことがある紀子さまが出席されたのでした。

オーストリア館を見て回り、ナショナルデーイベントのウィーン少年合唱団の演奏を鑑賞されたのですが、その後、訪問されたのが「RDD×難病の日」イベントが行われていたフェスティバル・ステーションでした。
RDDとは、「Rare Disease Day」のことで、世界希少・難治性疾患の日と訳されています。

このときに、紀子さまは難病患者とその家族とお会いになられました。
難病とは、「発病の機構が明らかでない」「治療法が確立していない」「希少な疾患」「長期の療養を必要とする」ものをいます。
こうした疾患には、専門医も少なく診断に時間がかかることなどから、就労や社会生活に問題を抱え孤立するなど、患者さんや家族はたくさんの課題をかかえています。

万博のイベントで、紀子さまは患者さん本人や家族から話を聞かれたのです。
そして、視神経脊髄炎という難病を発症しているオペラ歌手の坂井田真実子さんと出会われたのです。
難病の歌手の歌に涙
7月に行われた難病患者を支援するチャリティコンサートでは、オーストリアの宮廷歌手を招き、坂井田さんや仲間のオペラ歌手による演奏が行われました。

一部の演奏が終了し、休憩に入る前には、「視神経脊髄炎」とはどのような病か、東京女子医大の専門医から説明がありました。
この病気は、日本では約6500人が発症している自己免疫疾患で、視力や視野に異常が出たり、手足や体の筋力低下、しびれや痛み、感覚鈍麻、吐き気や長いくしゃみなどの症状が出るということです。患者の9割が女性だということでした。
さらにこの疾患がやっかいなのは、症状が治まった後に再発症するというところだというのです。
患者会の理事長を務める坂井田さんは、オペラ歌手活動をしている37歳の時に発症し、いったん症状が治まりましたが、おととしと昨年に再発したということでした。
こうした専門医の説明を、紀子さまはメモを取りながらお聞きになっていました。

コンサートは、患者さんや家族、そしてサポートする人など50人を超える人たちの合唱によるベートーベンの第9番の後半、そして、坂井田さんによる「いのちの歌」で締めくくられました。最後の「いのちの歌」では、二階席で聞いていた紀子さまも目頭に手を当てられていました。
「多くの方に知られるといいですね」
終演後は、紀子さまが出演者と懇談されています。
合唱に加わった患者さんから発症した時のことを聞き、「(難病のことが)多くの方に知られるといいですね」、「お子さんは大変だったでしょうね」と声をかけられたということでした。
またシンガポールで発症した方には「あちらでは大変でしたね」などと声を掛けられ、最終的には、出演していた3~40人の方と交流されました。
坂井田さんには、コンサートの感想として「胸に来ました」と話し、「またお会いしましょう」と述べられたということです。

難病という課題に触れ、新たに知識を得ようとされている紀子さま。
会場を去る際も、患者や家族に大きく手を振り、さらに両手でハートを作りお帰りの車に乗り込まれました。
難病への理解が進むことを望むのと合わせ、患者や家族の方々へのエールを送られたご様子でした。
【執筆:フジテレビ報道局解説委員 橋本寿史】