東京都立川市の住宅街。毎朝、学校近くの「スクールゾーン」で車通り抜け禁止の柵を置いたり、登校する子供たちの安全を見守るPTAの保護者たち。

ところが、このPTAを解散するという。いったい何があったのか?

従来通りの活動に疑問…PTAを“リセット”

今年度いっぱいでPTAの解散を決めた立川市立柏小学校を訪ねると。

この記事の画像(23枚)

柏小学校PTA 吉澤康貴会長:
今、片付け中になってます。各部のものを廃棄してもらうように。

PTAの部屋は…
PTAの部屋は…

学校の中にあるPTAの部屋は、片付けの真っ最中だった。

「数年後には起こりうるのではと、もともと感じていました」
「数年後には起こりうるのではと、もともと感じていました」

柏小学校PTA 吉澤康貴会長:
人が決まらなくて(PTA活動が)できなくなる時期が、数年後には起こりうるのではと、もともと感じていました。

5年間会長を務めた吉澤さんは、役員決めの難しさや“今まで通り”の活動に疑問を感じたと話す。

「5年間、PTAの会長をやらせてもらう中で毎年、同じ時期に同じことの繰り返しで」
「5年間、PTAの会長をやらせてもらう中で毎年、同じ時期に同じことの繰り返しで」

柏小学校PTA 吉澤康貴会長:
5年間、PTAの会長をやらせてもらう中で毎年、同じ時期に同じことの繰り返しで。本当に子どもたちのためになっているのかと、疑問に思うことがあった。

保護者にアンケートを取ったところ98.7%が賛同
保護者にアンケートを取ったところ98.7%が賛同

そこで2022年夏、PTA解散を提案。保護者にアンケートを取ったところ、実に98.7%が賛同した。

柏小学校PTA 吉澤康貴会長:
私もそこまで(賛同が)いるとは思わなかった。そしたらもう「みんな、解散でいいですよね」という雰囲気が一斉に出てきた。

異例のPTA解散。この決断を学校も受け入れた。

「(最初は驚きましたが、保護者の協力が)必要であれば学校側から声をかけて都度募集する。ボランティアとして」
「(最初は驚きましたが、保護者の協力が)必要であれば学校側から声をかけて都度募集する。ボランティアとして」

柏小学校 田中義典校長:
最初は確かに驚きましたけど、今の時代を考えた時に、それも一つの変革なんだろうと思いました。(保護者の協力が)必要であれば、学校側から声をかけて都度募集する。ボランティアとして。それでかなり賄えるだろうと感じています。

田中校長は、学校の負担は多少増えるものの、行事などで保護者の協力が必要になれば直接、協力を呼びかけるつもりだという。

PTAで続けてきた、子どもへの本の読み聞かせボランティアなども、保護者の有志で続ける。しかし、スクールゾーンに柵を置く「馬出し」は新年度以降、廃止すると割り切った。

「保護者の方と一緒に、子どものために何ができるだろうと改めてつくっていくのも、一つなのだと」
「保護者の方と一緒に、子どものために何ができるだろうと改めてつくっていくのも、一つなのだと」

柏小学校 田中義典校長:
(PTAが)ない状況だったら、どんなことになるのだろうというのは、我々も保護者もそういう状況を知らないでいる、ということもある。保護者の方と一緒に、子どものために何ができるだろうと改めてつくっていくのも、一つなんだろうなと。いったん、そこでリセットされることを前向きに捉えてもいいのかなと思ったんです。

登校する子供たちの安全を見守る吉澤さん
登校する子供たちの安全を見守る吉澤さん

何十年と当たり前に続いてきたPTAを“リセット”する。新年度は、吉澤さんら現在の役員で「フィードバック委員会」を作り、PTA解散の影響を検証するという。

どう違う?新組織「PTCA」を発足

一方、PTAとは少し違う組織をゼロから立ち上げた学校もあった。

9年前に新設された、愛知県豊田市にある浄水北小学校。こちらの学校で立ち上げたのが「PTCA」だ。

「PTAとの違いは会費があるかないか。PTCAの場合は基本会費はない」
「PTAとの違いは会費があるかないか。PTCAの場合は基本会費はない」

浄水北小学校PTCA 本幡和之会長:
PTCAのPが「保護者」、Tが「先生方」、Cがコミュニティーで「地域」。PTAとの違いは会費があるかないか。PTCAの場合は基本会費はない。入る・入らないはまずないと思う。

この学校で立ち上げた新組織「PTCA」 会費は0円、その活動費は?
この学校で立ち上げた新組織「PTCA」 会費は0円、その活動費は?

なんと会費は0円。では、活動費はどうしているのか?その秘密の一つが、この場所にあった。

女子児童:
空き缶と牛乳パック。

男子児童:
段ボールを持ってきました。

学校の中につくられた「リサイクルセンター」
学校の中につくられた「リサイクルセンター」

ここは、学校の中につくられた「リサイクルセンター」。子どもたちが持ってきた古紙や空き缶などの資源を売り、会費のないPTCAの資金にしている。多くの家庭が協力し、市の補助金と合わせると年間20万円以上になるそうだ。

多くの家庭が協力し、市の補助金と合わせると年間20万円以上に
多くの家庭が協力し、市の補助金と合わせると年間20万円以上に

この資金を元にした活動の一つが、授業でも使う、校舎の周りにある森の整備。

資金を元にした活動の一つが…
資金を元にした活動の一つが…

浄水北小学校PTCA 地域ボランティア 茨泰憲さん:
開校当初、学校の敷地の25%が緑化され、森があると聞いていた。その森を子どもたちのために生かすことができないかということで、地元の有志が立ち上がってきれいに整備しました。

「開校当初、学校の敷地の25%が緑化され、森があると聞いていた」
「開校当初、学校の敷地の25%が緑化され、森があると聞いていた」

元PTCA会長の茨さんは、現在は地域ボランティアとして参加。草刈り機などの道具はPTCAの資金などで購入した。

地域の有志が立ち上がり、子どもたちのために活動
地域の有志が立ち上がり、子どもたちのために活動

地域の大人が、地域の子どもたちのために活動する。これがPTCAのC=コミュニティーだ。

浄水北小学校PTCA 地域ボランティア 茨泰憲さん:
ボランティアをやっていて、一番のエネルギーは子どもたちの喜ぶ顔ですね。

PTCAには保護者・教師に加えて、民生委員や老人クラブの代表など地域の人も参加。活動内容やお金の使い方を決めている。活動は保護者も含めすべてボランティアで、強制はない。

会費ゼロ、強制ゼロの「PTCA」。立ち上げたのはこの学校の初代校長だった。PTAのように、親たちが役員を押しつけ合うような組織にはしたくないという強い思いがあった。

「親たちが役員を押しつけ合うような組織にはしたくない」と、PTCAを立ち上げた片桐さん
「親たちが役員を押しつけ合うような組織にはしたくない」と、PTCAを立ち上げた片桐さん

浄水北小学校 初代校長 片桐常夫さん:
(以前勤めた学校で)役員決めの場所が、協力とは逆の方へ向いている。あの姿を見た時に、これはあってはいけないと思った。

変わりつつある学校と保護者の関わり。今、過渡期にあるのかもしれない。

(「イット!」3月29日放送)