内閣府が公表した2022年7月から9月のGDP(国内総生産)の一次速報値は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前の3カ月(4-6月期)に比べて0.3%のマイナスだった。
年率に換算して1.2%減り、4四半期ぶりのマイナス成長だった。公表前の14の民間機関の予測では年率1.2%のプラス予測だったが、ハズれた形だ。
この記事の画像(5枚)主な要因は
・買い物や外食などの個人消費が伸び悩んだこと
・輸入が輸出を上回ったこと
・住宅で長らくマイナスが続いていること
個人消費の伸び悩み
個人消費は前の3か月に比べて0.3%プラスだった。前期は1.2%の伸びだったので、行動制限のない夏だったにもかかわらず伸び悩んだ。
外食、飲料や衣服などはプラスだったものの、7月、8月に新型コロナの“第7波”の感染拡大を受けて小さな伸びにとどまった。
また、スマートフォンや家電などの耐久消費財は前期比3.5%減と、マイナスに寄与した。物価高を受けた節約志向の高まりが見える。内閣府担当者は「賃金もプラスで推移しているものの、物価の上昇幅には追いついていない。消費者心理にマイナスだ」と話す。
予測がハズれた要因は
輸入が輸出を上回るとGDPを下げる要因になる。今回は輸入が5.2%増と前期比で大きく膨らみ、一方で輸出は1.9%増だった。民間機関の事前予測ではこの輸入が平均で3.3%増だった。この約2%のずれが、GDPのプラス成長予測がマイナスに転じた原因だ。
中でも今回、サプライズに近い形で大きく増えたのは広告サービス。日本から海外の広告サービス関連に大きな金額の支払いがあり、これらを含めた「サービスの輸入」は前期比で17.1%増と過去最大の増加だった(1994年の統計開始以来)。内閣府担当者によると、この詳しい内容は分析が難しいものの、一時的な決済時期のずれによるもので、大きなイベントによる支払いではないと見ている。
ほか、石油や石炭などのエネルギー関連や、合成樹脂などの化学製品の原材料の輸入も増えている。ただし、価格高騰や円安の影響は、ここでは実質なので含まれない。単純に量が増えたということで、背景について内閣府担当者は「特定はなかなか難しいが、全体的に経済が動けば増えるということ」と話す。中国のロックダウンで滞っていた原材料の供給が緩和されたことも背景にある。
次の10-12月期GDPは
政府は今回、マイナス成長に転じたことついて、広告サービスの支払いなど一時的な要因が大きいとして「景気は緩やかに持ち直しているという姿に変わりはない」というスタンスを貫いている。
だが10月に値上がりした食料品は6699品と、止まらない物価の高騰はさらに消費者の買い物に影響を落とす。さらに新型コロナの“第8波”による影響も懸念される。
後藤経済再生担当大臣は「物価上昇が続く中で、家計の実質所得の減少や企業のコスト上昇など、環境には厳しさが見られる。さらに欧米において金融引き締めが続く中、世界的な後退懸念に注意が必要」とコメントを出している。
(フジテレビ経済部 井出光)