SNS上で、偽広告被害が拡大している。70代女性がSNS広告を見て「インスタント入れ歯」を約5200円で購入したが、届いたのは装着不能なゴム製おもちゃだった。
同じ通販サイトではロボット犬の偽販売例もあり、大学名を騙る誇大表示も確認された。大学側は、大学名を不正に使用した広告動画について注意喚起を行っている。
「届いたものは全く別物」噛めないゴム製おもちゃ
サーキュレーターやロボット犬など、様々な商品を巡るSNSでの「偽広告」が問題となっている。

新たに被害を訴える声が上がっていた商品は、入れ歯だ。
購入したAさん(70代):
「インスタント入れ歯」というんですね。
取材班:
何を見て購入されたんですか?
購入したAさん(70代):
TikTokです。
「インスタント入れ歯を購入してしまった」と話すのは、千葉県に住む70代の女性Aさんだ。

問題の商品を知ったのは、寝る前の暇つぶしに見ていたというSNSに表示された広告だった。
偽広告:
シリコン製・義歯セットは、発売以来、多数の歯の矯正や隙間歪みの問題を解決してきました。
広告動画では様々な年代の女性がインスタント入れ歯を装着し、白い歯を見せてニッコリと微笑む様子が映っていた。Aさんには、それがとても魅力的に見えたという。
購入したAさん(70代):
それ(入れ歯)をカタッとはめればいいだけになっていたんです。そういう説明が広告の中にあったので、それなら簡単でいいかなと思って。

口にはめこむだけの手軽なインスタント入れ歯で、1セット5258円という手頃な価格にも惹かれ購入を決めた。
購入したAさん(70代):
頼んでもらって届いたのがこれだったんですよ。最初に届いた時はちょっとショックだったんですけど…。
広告とは似ても似つかない商品だ。 動画のように、口の中にはめ込むことすらできなかった。
購入したAさん(70代):
(広告では)総入れ歯の形になってるじゃん。皆そうやってカパってやってるもんね。だからそういうものが届くのかなと思ったけど、これが届きました。着けられない。オモチャみたいね。

装着不可能な歯のおもちゃを実際に使用できるのか、歯科医師に実物を見てもらった。
葛飾かもめ歯科・木下宗貴院長:
いやこれ…これはヒドいというか…。元来、入れ歯ですと、レジンと言ってプラスチックの材料で作るんですけど、これはゴムですね。ピンクのゴムに白のゴムを貼り付けているような感じなので、およそ噛むことはできないですね。
歯科医師も、ヒドい商品だと唖然とする。Aさんが見た広告動画と比較してもらった。
葛飾かもめ歯科・木下宗貴院長:
別物ですね。PRしている動画と届いたものが全く別物ですので、これはもう詐欺と言ってもいいのでは。
偽広告に多い“実在の団体名”騙る手法
実はAさんがこの入れ歯を購入したネット通販サイトを見ると、一連の偽広告被害との共通点があった。

取材班:
入れ歯の販売サイトなんですが、同じサイトではペットロボットも売られています。
販売されていたAIロボット犬の商品も、やはり広告とは似ても似つかない犬のオモチャが届いたとの被害報告が続出している。入れ歯も同じ通販サイトで販売されていた。

実は、Aさんがインスタント入れ歯の偽広告被害に遭ったのは、これが2度目だ。約3カ月前にも似た広告動画を見て、入れ歯を注文し、同様の被害に遭っていた。
購入したAさん(70代):
心から期待をこめて頼んだんですけど、同じものが届きました。
1回目に届いた入れ歯が入っていたパッケージと同じ商品の広告動画を見ると、こんな宣伝文句が書かれていた。
偽広告:
みなさん、東京医科歯科大学が最新開発したシリコン入れ歯が、人類の歯の問題を解決します。
偽広告に多く見られる、実在の団体名を騙る手法だ。

名前を使われた東京医科歯科大学は、現在「東京科学大学」に名称が変わっているが、HP上で大学名を不正に使用した広告動画について注意喚起を行っている。
(「イット!」7月25日放送より)