私がお伝えしたいのは「謎の電気余り」です。
ウクライナ情勢による火力発電燃料の高騰で、高止まりしている電気料金。しかし最近、この貴重な電気がなぜか余り、発電を止めざるをえない異例の事態が頻発しているのです。
なぜ、こんなもったいない事になっているのか?ポイントはこちら。「お金と一緒!貯めるのが難しい」注目です。
【注目ポイント・記者解説】
東京電力管内では、2022年6月分まで9カ月連続で値上がりするなど、全国的に電気料金が高騰しています。これはコロナ渦からの経済回復によってエネルギー需要が増えたこと、そしてウクライナ情勢でロシア産の石炭やLNGの供給が減るとの見通しから、発電用の燃料の価格が上がったためです。
そうなると、燃料を使わない、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの期待が高まります。ところが、この貴重な太陽光発電が余ってしまい、発電を止めるという、もったいない事態がこの春に頻発しています。
再生可能エネルギーの電気余りは、これまで九州電力管内だけで起きていました。しかし2022年に入り、4月9日に四国電力、4月10日には東北電力、4月17日には中国電力、5月8日には北海道電力と、立て続けに起きているのです。
一体なぜなのか?そもそも電気というモノは、発電する量と使う量のバランスが取れなくなると、大規模な停電を起こしかねない特性があります。
例えば2月に東京で起きた大規模停電は、福島県沖で発生した地震の影響で一部の火力発電所が止まり、発電と電気使用量のバランスが大きく崩れたために発生しました。この春の「電気余り」は、2月の停電とは逆に、発電量が多すぎることによる大規模停電を防ぐために、一部の発電所を止めて発電量を下げざるを得なかったために起きたのです。
2022年に入って「電気余り」により太陽光発電がストップする事態が頻発しているのは、太陽光発電が急速に普及しているためです。工場や企業がお休みになる休日で、かつ天気が良いときには、太陽光発電の発電量が増大し、どうしても電気が余ってしまうのです。
萩生田経産相は「電気を貯める技術を持たないといけない」と発言しています。確かに高機能で安価な蓄電池ができれば無駄を防ぐことができますが、開発にはもう少し時間がかかり、技術の革新が待たれます。
2020年度の日本の発電量のうち約2割が再生可能エネルギーで、太陽光発電はそのうち約8%を占めています。また政府は、脱炭素に向けて再生可能エネルギーを主力電源と位置づけ、2030年には現状の倍近い36~38%を導入するとの目標を持っています。
今後、ますます太陽光発電を増やさないと、この目標を達成することはできません。燃料価格に左右されない貴重なクリーンエネルギーを無駄にせず、フル活用するための対策が急がれます。
(フジテレビ経済部 渡辺康弘)