世界的なワクチン争奪戦の様相を呈していた2020年末、日本政府はアストラゼネカ製ワクチン1億2000万回分の供給を受けることで基本合意した。期待されたワクチンだったが、その後、副反応として、ごく稀に血栓症が起きるリスクがあることが海外からの報告でわかり、国内では接種が広がらなかった。1億2000万回分のワクチンはどこへ行ったのだろうか。

4000万回分はキャンセル

厚生労働省の佐原健康局長は4月、国会で、契約したワクチンについて、「1億2000万回分『ドン』といただくのではない」と述べ、必要となる時期や量を踏まえて順次納入されていると説明した。その上で、アストラゼネカ製ワクチンの契約分の3分の1にあたる「4000万回分はキャンセルした」と明らかにした。

後日、後藤厚労相は国会で、「キャンセルに伴ってアストラゼネカ社に対して、違約金を支払う必要はない」と説明。「すでに支払い済みの金額から、4000万回分のために生じた必要経費を除いた額が返還される」と明らかにした。

6000万回分は海外に

4000万回分はキャンセルされたものの、残りの8000万回分はどう使われたのだろうか。約20万回分は国内の自治体に供給済みで、6000万回分は「国際貢献」として海外供与することになっているという。

2000万回分の一部は廃棄か

一方で、後藤厚労相は「結果として国内使用や海外供与に用いられず、有効期限を迎えた場合は廃棄せざるを得ず、多少の廃棄は生じていると考えられる」と答弁。自治体にも供給されず、海外にも供与されなかった約2000万回分のうちの一部が廃棄されたとみられるが、廃棄した具体的な量など詳細は明らかにしなかった。

海外供与6000万回分の行き先は

海外供与分の6000万回分のうち、約4300万回分は既に供与済みだという。相手先への直接供与のほか、新型コロナワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組み「COVAX」を通じた供与が行われている。

外務省がまとめた資料では、4月15日時点で、直接供与分は、ベトナムへの735万回分を筆頭として、インドネシア(688万回分)、台湾(420万回分)、フィリピン(308万回分)など東南アジア諸国を中心に計約2465万回分。

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政府が最初に供与を決めたのは台湾で、その際、茂木外相(当時)は「東日本大震災の際も台湾の方々からいち早く多くの義援金を送ってもらった。台湾との友情を踏まえた提供だ」と説明した。

そのすぐ後に供与を決めた東南アジア諸国については、「ASEAN(東南アジア諸国連合)と日本は、極めて重要な関係を有してきた。さらに、『自由で開かれたインド太平洋』を実現していく上でも極めて重要な国々だ」と述べ、相手方との関係も踏まえた上での決定であることを認めている。

一方で、国際的な枠組み「COVAX」を通じては、東南アジア、 南西アジア、中央アジア、大洋州、中南米、中東、アフリカの24カ国に約1928万回分を供与した。2021年は東南アジアや南西アジア、大洋州への供与が中心だったが、2022年には中央アジアやアフリカ諸国にも供与先が広がった。内訳は以下の通りだ。

海外から寄せられた感謝の声

政府がまとめた2022年版の外交青書では「新型コロナウイルス感染症との闘い2021」と題した巻頭特集が組まれており、途上国への医療支援の取り組みなどが紹介されている。

特集内の「日本によるワクチン供与」のコラムでは、世界各地からの感謝の声が紹介されている。スリランカ(146万回分を供与)では、日本が供与したワクチンの空港到着の様子や、大統領臨席で行われた引渡式典が、現地主要メディアにトップ記事として取り上げられたことや、スリランカ国民から数多くの感謝の声が寄せられたことを紹介している。

「外交青書」より

また計6回、累計約420万回分の供与が行われた台湾では、日本からのワクチンが届くたびに、台湾のランドマークタワー「台北101」の壁面に「台日の絆」「台日友好」などのメッセージが灯されたことなどが記されている。

ワクチン争奪戦の末に獲得したものの、国内で接種が広がらなかったアストラゼネカ製ワクチンだったが、「自前ワクチン」がない日本の「ワクチン外交」の武器として活用された形となった。しかし、いまだに使い道が決まっていない分も多く、大量廃棄は避けたい政府にとって頭痛の種となっている。有効期限は製造から6カ月、時間は限られている。

(フジテレビ政治部)

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