年明けは新しい年を展望するのが恒例だが、米英の有力マスコミがそろって「南北戦争の再発」を警告するという異常なことになった。

「南北戦争の再発」への警告

「我々は第二の南北戦争に直面しているのか?」(ニューヨーク・タイムズ紙電子版6日)

ニューヨーク・タイムズ紙電子版6日より
ニューヨーク・タイムズ紙電子版6日より
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「米国人の半数が南北戦争の再発はあり得ると信じている」(タイム誌電子版6日)

タイム誌電子版6日より
タイム誌電子版6日より

「南北戦争に向かっているのか?」(ザ・ニューヨーカー誌電子版5日)

 

ザ・ニューヨーカー誌電子版5日より
ザ・ニューヨーカー誌電子版5日より

「我々は新南北戦争の渦中にあるが、何をめぐって?」(政治専門サイト「ポリティコ」6日)

政治専門サイト「ポリティコ」6日より
政治専門サイト「ポリティコ」6日より

英国も「南北戦争」に注目

英国の有力紙も米国の「南北戦争」に注目している。

 「南北戦争の専門家が米国について警告を発す」(ジ・エコノミスト紙電子版8日)

ジ・エコノミスト紙電子版8日より
ジ・エコノミスト紙電子版8日より

「米国の次の南北戦争は既に始まっているー我々が認めようとしないだけだ」(ザ・ガーディアン紙電子版4日)

ザ・ガーディアン紙電子版4日より
ザ・ガーディアン紙電子版4日より

修復不可能な「保守」と「革新」の分断

1月6日が、トランプ支持者たちが大統領選挙に不正があったと抗議して合衆国議事堂を襲撃した事件から一年を迎えるのにあたり、改めて国内の分断の実態と対立が激化した場合の危険を指摘するものだが、こうも有力マスコミの論調が揃うと説得力がある。

いずれの記事も、米国社会が「保守」と「革新」に大きく分断され修復の可能性も見られないとする。

「21世紀の米国は多民族民主主義が多数派を占めて多様な社会を支えており、平等の権利を保障する法制度を保有している。しかしその一方で少数派の共和党は別の見方をしており、危険な過激派が代わりに行動している」(ザ・ニューヨーカー誌)

民主党に心情的に近い同誌は、一年前の議事堂襲撃事件は白人至上主義者たちが(トランプ)前大統領にそそのかされて大統領選の結果を覆そうとしたものだったと断ずるが、その一方で多くの共和党支持者は、2020年の大統領選でトランプ氏が敗れたのは民主党に票を盗まれたからだと信じているのも確かだ。

アメリカ議会議事堂を襲撃したデモ隊(2021年1月6日)
アメリカ議会議事堂を襲撃したデモ隊(2021年1月6日)

「民主党支持者の85%は共和党が人種差別主義者に乗っ取られていると考え、共和党支持者の84%は民主党が社会主義者に支配されていると信じている」(タイム誌)

物理的衝突の危機

こうなると、両派の対立は主義主張の違いというよりは「好き」か「嫌い」かという問題になって救いようがない。

その「嫌い」のエネルギーが溜まりに溜まると両派の物理的衝突に発展するのだが、それは米国人が考えているよりも現実的な危機なのかもしれない。

「米国の政治は毀損し崩壊するかもしれない。カナダはそれに備えなければならない」(グローブ・アンド・メール紙電子版は2日)

カナダの「グローブ・アンド・メール」紙電子版は2日こういう見出しの論評記事を掲載したが、その根拠としたのがロイヤル・ローズ大学カスケード研究所のトーマス・ホーマー・ディクソン所長の近著からの次のような引用だ。

「米国の民主主義は2025年までに崩壊して政治が不安定化し暴力がはびこるだろう。さらに遅くとも2030年までに米国は右派の独裁者に支配されているだろう」

現大統領と前大統領の感情的対立

こうした中で、バイデン大統領は議事堂襲撃事件一周年にあたって珍しく語気を荒げてこう言った。

「(トランプ)前大統領は2020年の大統領選について嘘に嘘を重ねている。彼は米国の利益よりも自分の利益を重視し、我々の民主主義よりもその傷ついた自尊心を大事にしている」

バイデン大統領は議会演説でトランプ氏を痛烈に批判(2022年1月6日)
バイデン大統領は議会演説でトランプ氏を痛烈に批判(2022年1月6日)

これに対して、トランプ氏も次のような声明を発表して反撃した。

「バイデンは数々の失政から国民の目を背けるために、議事堂襲撃事件の問題を大袈裟に取り上げ、米国の分断をはかろうとししている」

トランプ氏は声明でバイデン氏に猛反撃
トランプ氏は声明でバイデン氏に猛反撃

両派の頭領がこうも感情的に対立していては、宥和の糸口を探るのも難しそうだ。

日本も、カナダのように米国の「新南北戦争」に備えておいた方が良いのかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】