頭の中で風景や人物などの映像を思い浮かべることができないという脳の特性を持った若手アーティストが秋田にいる。「アファンタジア」というその特性は“自分の強み”と語り、自分自身と向き合いながら言語や感情を抽象画として生み出している男性を紹介する。

絵を描くことの楽しさに気付く

鮮やかな色が花火のように広がっている抽象画。

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この絵を描いたのは、秋田県内で創作活動する画家・のうんさんだ。

県内で介護職員として働いていたのうんさんは、5年前に友人から絵画用のパネルを贈られたことをきっかけに、絵を描くことの楽しさに気付いた。

県の若手アーティスト支援プログラムに選出され個展を開催
県の若手アーティスト支援プログラムに選出され個展を開催

以来、絵の制作を続け、県の美術展覧会に応募したところ見事入選。そして若手アーティストを支援する県のプログラムに選ばれ、個展を開催した。

映像をイメージできない特性を強みに

のうんさんには実は「アファンタジア」と呼ばれる脳の特性がある。

頭の中で風景や人物などの映像をイメージすることができないのだ。

「イラストの練習を趣味の範囲でしていた頃に、人の体の角度を変えて描こうとすると絵のレベルが下がったり、記憶にある風景画を拙い形でも描こうとするとどうしても描けない」と話すのうんさん。
ただ、抽象画は描けるのだという。

のうんさんは「アファンタジアは自分の強み」と語る。

画家・のうんさん:
あの時見たあの光景が忘れられないなど、人間はそのような感動がある思うが、自分の場合は、明確に映像として残らないとしても、衝動や抽象画の形として何か残るものがあれば人に伝わるものがあるのかなと思う。それがために与えられる感動を模索していきたい。

頭に残る言語や感情を絵画に

のうんさんは、映像の代わりに頭の中に残る言語や感情を線で描き、色を重ねることで表現している。

『息ぐるしさと生きぐるしさ』という作品は、内側にため込むような苦しさを表現した左側の作品と、ため込んだものが外側にはじけるような右側の作品で構成されている。

「生きていれば何かしらためる時、それがはじけてしまう時、その対比としての一枚ずつ、もしくは息ぐるしさと生きぐるしさ、それぞれの要素を内包して2つで一作品として、その2つのギャップで楽しんでもらいたい」と、のうんさんは話す。

『にくのほしぼし』は、心が疲れて絵が描けない日々が続いたとき、衝動的に誕生した作品だ。オイルパステルを指につけ、直接パネルにこするように円を描き、それを何度も繰り返して色を混ぜた。

のうんさん:
絵を描けなかった衝動の発散でもあるし、心のかさぶた。誰しもある部分かもしれないが、心の形を表現したらこうなったという作品。

絵は“最大の自己表現”

絵を描くことによって抱えている感情に初めて気づくこともあるというのうんさん。絵は“最大の自己表現”だと語る。

のうんさん:
つらい思いを抱えている人や、自分と同じく強みにできるか分からないコンプレックスを抱えている人などの少しでも支えになれるような絵になっていればいいなと思う。

色を立体的に塗り重ね“力強さ”を表現した作品
色を立体的に塗り重ね“力強さ”を表現した作品

少しでも多くの人の心を動かすことができたら。のうんさんは自身と向き合いながら、きょうも絵を描き続ける。

(秋田テレビ)

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