「障害者と健常者をつなぐ」をテーマに、パラカヌー日本代表の小松沙季さんが奄美大島で開催したイベント「ミライのサキ」。高知出身のアスリートたちが集結し、障害の有無を超えた交流の場を作り出した。
グーグルマップでの偶然の出合いから生まれた「ミライのサキ」
2大会連続でパラリンピック・カヌー日本代表に選ばれた、高知県四万十市出身の小松沙季さん。

小松さんはプロバレーボーラーとしてVリーグで活躍。引退後に体調を崩し、車いす生活となった時、カヌーと出合った。

小松沙季さんと奄美大島の縁は、グーグルマップでの偶然の発見から始まった。「どこか暖かいところで個人トレーニングをやりたい」という思いから、地図アプリで内海を見つけ、トレーニングにうってつけの環境を得たのだ。

この偶然の出合いから3年。小松さんは奄美大島に通うようになり、地元との絆を深めていった。奄美市は小松さんのために桟橋を設置し、宿泊先のバンガローにはスロープが取り付けられた。

小松さんは、このイベントを通じて障害者への理解を深めたいと考えている。「実際に触れ合う、同じ空間でひとつのことをみんなで体験して共有するのが一番早い」と、その狙いを語る。
高知が誇るアスリートたちが集結!笑顔のバリアフリー体験
4月6日に開催された「ミライのサキ」には、小松さんの他にも高知出身のアスリート、車いすラグビー日本代表の池透暢さんと元関脇の豊ノ島さんが参加した。

さらにバレーボール界のレジェンド大林素子さんも加わり、多彩な顔ぶれとなった。

イベントでは、車いすの操作方法や介助の仕方を学ぶ機会が設けられた。子どもたちは真剣な表情で車いすの操作に挑戦し、段差の降り方や介助の際の声かけの重要性を学んだ。

イベントの中で最も盛り上がったのは、チームに分かれての車いすリレー対決だった。参加者の一人は「回る時とか(車いすを)動かすのがすごい難しかったです」と感想を述べ、車いすの操作の難しさを実感したようだ。

車いすに乗る人も応援する人も、誰もが笑顔になれるこのレースは、小松さんが思い描く未来の一端を垣間見せるものとなった。
「優しい空間がどんどん日本全体に広がって」奄美の子どもたちと紡ぐミライ
車いすラグビー金メダリストの池さんによる世界レベルのタックル体験も、参加者に強烈な印象を残した。体験者の一人は「あ、軽トラ来た」と思ったと表現し、その衝撃の大きさを物語っている。

さらに印象的だったのは、池さんと車いすの子どもたちがキャッチボールを通じて交流する姿だった。池さんは「奄美ではなかなか車いすの競技が実際見られないところを、こうやって見てもらうことができて、二人ともかなり興味を持ってくれた。何かを始める一歩になるとか、そういうきっかけになる、今日のこのイベントだったら良かったなと思う」と、イベントの意義を強調した。

小松さんは「このイベントを通して障害者に対するハードルが下がって、街中で困っている人を見かけた時に声をかけやすくなったりとか、この空間、こういう優しい空間というのがどんどん日本全体に広がっていってくれるといいな」と未来について語った。

年齢も障害も関係なく、たくさんの笑顔が生まれた一日となった「ミライのサキ」。このイベントをきっかけに、奄美から新たなメダリストが誕生する可能性も秘めている。小松さんたちの取り組みが、障害の有無を超えた共生社会の実現に向けた一歩となることが期待される。
(高知さんさんテレビ)