2021年に大分県大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故の裁判で福岡高裁は22日、一審判決を破棄し、懲役4年6か月を言い渡しました。福岡高裁は「進行制御が困難な高速度とは認められない」などとして危険運転であるとは認めませんでした。判決後に行われた遺族の会見を詳しくお伝えします。

この事故は2021年に大分市大在の県道交差点で市内に住む小柳憲さん(当時50)が運転する車が、時速194キロで直進してきた車と衝突し、小柳さんが亡くなったものです。

直進車を運転していた当時19歳だった被告の男が危険運転致死の罪に問われ、一審の大分地裁は2024年11月、危険運転だと認め懲役8年の実刑判決を言い渡していました。量刑を不服とした検察側と、より刑の軽い過失運転致死罪だと主張する弁護側、双方が控訴して22日控訴審判決を迎えました。

「想像の中で一番最悪な判決」「こんな高速度を出して『4年半』で納得できる人はいない」

◆小柳憲さんの姉・長文恵さん(判決後の会見 22日・福岡市)
「きょうの日をずっと待って判決を聞いたが、私の予想というか想像の中では一番最悪な判決だった。裁判長の判決理由の中で、結局は『この速度が一般道で実際に走って立証できない』ということを使われて、実際できないことをやれと言われてるような気がした。

日本でこの速度が果たして出せる道路があるのか。実際あそこ(事故現場)の道路を封鎖して、同型の車で実証実験が可能かということを考えても、非常に難しい、無理に等しい。そういった立証をしなければ危険な悪質な行為が認められていかないっていう現実をきょうは突きつけられたような気がします。

果たして『一般道で立証できない速度を出されたときにどうしたらいいのか』という課題が大きく残った。あそこ(事故現場)を封鎖して同型の車をどこからか探して、運転する人がいないなら『私でもいいよ』って本当に思うぐらいの気持ちになった。

こんな高速度を出しても、『4年半』という量刑で納得できる人っていうのは、当然いないであろうし、これを今後の先例にするわけにもいかない。そういった気持ちできょうは判決を聞いた。この判決に納得して、これで終わるという選択肢は私の中には今ない、裁判官の話で、この速度を実際にあの場所で同型の車で立証していないことっていう文言がありましたけど、そういったとても無理なことを、今それを言うのかと思うと本当に憤りというか悲しみというか、いろんな感情がありました。

福岡高裁
福岡高裁
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「『何キロ出るか試したかった』と快楽な気持ちだけで運転しているのに…やっぱり加害者を守るためだけの司法なのか」

この事故は道路を逸脱していないが、この速度でわずかなハンドルミス、ブレーキ操作で、運転手本人が何かしら危険になることっていうのは本人が避けたっていう考え方だってある。だからまっすぐにしか走れなかったっていうことだってあると私は思っている。

また、右折した車が普通車だったが、もしこれが大型トレーラーだったらどうなっていただろうと思う。それでもそのまままっすぐ突っ込んだんじゃないかなと。そしたらどうなっていたかなと考えると、ご自分の命が今度逆に失われた可能性だってあった。でも果たしてそうした危険性というのを考えてこの運転をしたのかな?って思ったときに、皆さん今まで相手の供述とか聞いてきたかと思うが、本当に『何キロ出るか試したかった』と快楽な気持ちだけで運転しているのに、そういったことが果たして運転手にできるかっていう話。だから、そういったことが全然盛り込まれていない。やっぱり加害者を守るためだけの司法なのかと、きょう大きな壁にまたぶつかった気もする。

大分市の事故現場(2021年)
大分市の事故現場(2021年)

「一般市民感覚と司法がこれだけかけ離れている」「このままではいかない」

一審が、裁判員裁判という国民から選ばれた意見を取り入れた判決であったということを考えると、きょうの判決の中でも『一般論』という言葉が出てきたが『一般市民感覚と司法がこれだけかけ離れている』っていうのを改めて感じる判決だったっていうふうに思いますので、このまま私が引き下がって納得してしまえば、今後に影響すると考えたときに『私はこのままではいかない』という気持ち。

だからこの大分の事故のことだけじゃなくて今後のことも考えて『このままではいかない』という気持ちで、今後考えていきたいっていう気持ちで今いる。

(Q検察とは何か具体的な話をしたか?)
少しだけ。今後のことを相談するような具体的なことではなく、私が一方的に『相談させて欲しい』という気持ちをお伝えしたような感じです。

(Q2025年9月の控訴審のときに『法の限界を見るのかどうか』という話をしていたがこの意味も含めてもう一度今現時点でのお気持ちを)

きょうの判決を聞き、今の日本の法律の限界というのがこれだとしたら、きょうの判決なのかもしれない。けど、そうではなくて違う裁判所ではどうなのかな、違う裁判官ではどうなのかなということが感じられる判決ではないかなと思う。まだまだ『日本の司法の判決』っていうふうに諦めてるわけではない気持ちではある。

小柳憲さんの姉・長文恵さん
小柳憲さんの姉・長文恵さん

被告の男は初公判にも、今回の判決にも出廷せず「人任せな印象」

(Q初公判と今回の判決、それぞれ被告は出なかったが、なにか感じることは?)

ご自分の人生なんでしょうけど、人任せっていう印象。あとは、私たち遺族に顔を合わせる機会は、なかなか裁判の場でしかないが顔を合わせる頭を下げるっていう1回の機会を彼は、今回もされなかったっていうことに尽きると思う。

(Q過失運転という言葉を聞いたときに、率直に思った感情を改めて)

この危険運転致死傷罪がつくられたきっかけとなるのは、故意で悪質な運転をした者を罰するためにつくられたはず。条文は今まで途中ちょっと変更されたり、追加されたりして変わってきたかと思うんですが『ここに含まれてなければ、法律の中になければ捌けない。だから過失に落とす』っていう、今回の判決だと思う。

大分の事故に置き換えれば『制御困難な高速度じゃない。制御できてた』っていうのであればハンドルもそのまま、ブレーキも踏まず、そのままの状態で人の命を奪ったこの事故は、果たして過失なのかなって思う。制御できていたのであれば、殺人であるんじゃないかなと。だから軽くするのではなく、重くできるようにしていただかないと大変だなというのを感じている。

福岡高裁
福岡高裁

「この判決に被告がわずかでも安堵したのであれば悔しい思い」「遺族は数値だけで認めてくれと言ってるわけではない」

(Q裁判中メモを取ろうとしていたが、あまり進んでいなかった?)

メモをお見せしたい気持ちだが、『4年半』しか書けなかった。何を認め、何を認めないかっていうことを書こうかなと思ったんですけど、ことごとく認められていないので、書くことができず、一番上に4年半だけ書いて後はペンをもう止めた。

(Q最後の方には涙を流しているように見えたが)

最初に過失で起訴されてから3年以上、私こうやって『過失じゃない』っていうふうに闘ってきて、来月で5年を迎える。闘ってきた私の人生はどうでもいい。ただ、弟の無念を晴らしたいためだけに生きてきた5年だったと私は思っているので、この期間の私達家族の苦しみよりも短い判決であったこと。それが悔しくてたまらないのと、この判決を聞いて相手はどう思うのかなって考えたときに、わずかでも安堵のような気持ちが湧いたのであれば、私はそこは悔しい。悲しいというとより悔しい思い。少しだけですけど涙が出た。

(Q結局数値が明示されていないと、こういうふうな判決になってしまう?)

高速度の事故が、実際きょうこのような判決になったわけですけど、このようなことが起きているからこそ法改正をしなければならないんだっていうふうになっているのかと言ったら、そうではなく。やはり『悪質なものは悪質』と問えるような分かりやすい法改正を求めているだけであって。そこが『数値がまだ決まってないからこんな速度でも、速度だけでは認められないよ』っていうような、きょうの裁判の中でもあったと思うんですけど『数値だけでは決められないよ』って言うけれど、果たしてこの速度を遺族が数値だけで認めてくれって言ってるわけではないので、そこははき違えず考えていただきたい。今回の判決も見て、法改正の方も、なお一層、足りない部分を補わなくてはいけないというふうに考えていただきたいと思う」

福岡高裁
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会見には2023年に交通事故で夫を失くした栃木県の佐々木多恵子さんも同席

◆佐々木多恵子さん
「私も宇都宮で時速162キロの事故で制御困難な高速度にあたるということで、危険運転に訴因変更している。私の事故と重ねながら、いろいろときょうの判決を聞いていたが『まっすぐ走れているからいくら速度出しても大丈夫だ』と、まさか裁判官からそんなことを聞くとは思わなかった

実証実験のことも、先ほど長さんもおっしゃってましたけれども、不可能なことをいかにもできるかのように、それがなされていないから証拠が足りないと。本当に市民の感覚とかけ離れている。少し車の運転をした方ならわかることなのに、それをやれと言ってるのか。また、これからやらないと認めないって言ってるのか、、喧嘩売られたような感じがしました。とにかく、私は今日の判決聞いてとても憤りを感じていて、何とかしないといけないのかなと。訴因変更するまでは、問題なのは警察、検察官だと思ってたんですが、実際の問題は裁判官なのかなとそういうふうなことも感じた」

福岡高裁
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テレビ大分
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