安倍元首相の銃撃事件で奈良地方裁判所は、殺人罪などに問われている山上徹也被告(45)に無期懲役の判決を言い渡しました。
山上徹也被告は2022年、奈良市内で街頭演説中だった安倍晋三元首相に手製の銃を発砲し殺害した罪などに問われています。
山上被告は動機について、母親が入信し、多額の献金をしていた旧統一教会を攻撃するため、つながりのある安倍元首相を狙ったとしていて、弁護側が「生い立ちを考慮し懲役20年までにとどめるべき」と主張するなど、量刑が裁判の焦点となっていました。
21日の判決で奈良地裁は「旧統一教会への複雑な感情が怒りに転じたことも理解不可能とは言えないが、恨みを抱いても殺人行為で生命を奪う意思決定には大きな飛躍がある。生い立ちが影響したとは認められない」として、無期懲役の判決を言い渡しました。
閉廷後、山上被告の弁護団は記者会見で、「弁護側の主張が認められなかったことは遺憾である。控訴するかどうかについては被告人と協議のうえ判断する」と述べました。
なぜ無期懲役なのか、そして判決が旧統一教会に与える影響について、中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也氏とフジテレビ・平松秀敏解説副委員長とともにお伝えします。
今回の裁判は量刑が争点となっていました。
まず検察側は「不遇な生い立ちがあったとしても被害者とは無関係」と主張し、無期懲役を求刑しました。
一方で弁護側は、宗教被害を訴えて懲役20年までにとどめるべきと主張していました。
今回の無期懲役について、裁判所は「不特定多数の人がいる現場で殺意を持って2回手製銃を発射し、犯行態様は悪質で危険性が高い」と指摘。
そして、「旧統一教会への複雑な感情が怒りに転じたことも理解不可能とはいえないが、恨みを抱いても殺人行為で生命を奪う意思決定には大きな飛躍がある。生い立ちが影響したとは認められない」としています。
この「生い立ち」という部分ですが、これまでの裁判では、4歳の時に父親が自殺して、兄が事故で失明し、その時に母親が心の救いを求めたのが旧統一教会だったということで入信したという経緯が明らかになっています。
その後、多額の献金を繰り返し総額1億円に上っていたということです。
裁判で山上被告は「生きているべきではなかったと思います」などと証言をしていました。
青井実キャスター:
今回の無期懲役という判決、生い立ちは関係ないという判断でしょうか?
平松秀敏解説副委員長:
判決文そのままの表現でいうと遠因ではあると。遠い遠い原因ではあるけれど、大きく影響したわけではないということです。山上被告は40代の大人なんです。犯行を思いとどまることができる大人ということは、これは生い立ちが影響したのではなくて、自分の判断で身勝手な動機によって犯行に至ったと。この辺をちゃんと認定したということは、真っ当な判断だなという気はしますね。
青井実キャスター:
野村さん、無期懲役という判決ですが量刑は妥当といえますか?
中央大学法科大学院教授・野村修也氏:
実は裁判員裁判をする時というのは、量刑についてデータベースがあるんですね。このデータベースの中で、どのぐらいの事件はどのぐらいの刑なのかということを確認する作業があるのですが、今回は殺人罪についてそれをベースにした時に、検察側が言っているのは、今回銃を作って、これを銃刀法違反の発射罪にあたるという認定もしているんですが、それを利用して殺人を行った場合には、かなり量刑が重くなるというのが今回の判断のポイントになっていると思います。
宮司愛海キャスター:
この事件をきっかけに旧統一教会の高額献金や信仰を持つ親らのもとで育った宗教2世、そして宗教虐待といった問題が注目されました。そして、旧統一教会にも解散命令が出されましたが、平松さん、今日の判決が旧統一教会に与える影響はどう見ますか?
平松秀敏解説副委員長:
解散命令請求でいきますと、去年、東京地裁が解散を命じる決定をしました。その後、教団側が即時抗告して現在、東京高裁で審理が続けられていて、早ければ年度内にその判断が下されるんですが、この解散命令に対する請求には今回の判決は全く影響はないと思います。
ただ、やっぱり宗教2世の問題というのを我々も連日のように大きく取り上げていますから、これぐらい大きく知れ渡ったという意味では本当に影響は大きかったと思いますね。
そして、この判決に安倍元首相の妻・昭恵さんは「突然の夫の死からの長かった日々に1つの区切りがついたと感じています。被告人は夫の命を奪い去った罪を償っていただきたい。私はこれからも前を向いて夫の遺志を紡ぎ、日々を大切に生きてまいります」とコメントを発表しています。
青井実キャスター:
野村さん、コメントが発表されたわけですが、このコメントを受けていかがでしょうか?
中央大学法科大学院教授・野村修也氏:
今回の判決の中では、安倍元総理には殺されるような大きな落ち度はなかったということは認定されているんです。しかも、被害者の死亡によって昭恵夫人が大きな喪失感を感じたということ自体が、量刑に判断として加わっているわけです。やはり被害者の感情というのは量刑判断においてとても大事なポイントになりますから、安倍昭恵さん自身は「罪を憎んで人を憎まず」という発想を持っておられますが、そうはいっても客観的に見れば、大きな喪失感があったということは、今回のコメントからもうかがわれるんじゃないかと思いますね。
青井実キャスター:
今後について、山上被告の弁護団は被告と控訴について協議のうえ判断すると。控訴する可能性はありますか?
平松秀敏解説副委員長:
可能性はあると思います。弁護側がなぜ懲役20年程度を求めていたかというと、社会復帰後に宗教虐待の経験を社会の中で生かしてほしいという思いが強いからです。ところが無期懲役になると30年、40年と服役することがありますから、そうすると社会復帰はかないませんので、その点で考えると控訴する可能性は高いんじゃないかなという気がします。