車も電車もない江戸時代、人は歩いたり走ったり、いまでは考えられないほど体を動かしていた。

一方、現代は歩数も減り、デスクワークが増え、動かないことが多い。

自分でも気づけない疲れの正体をわかりやすい図解で解説する、『疲れとり大図鑑』(世界文化社)。著者は、東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長、副院長兼卒後臨床研修センター長の市原淳弘さん。

本書から、昔と現代の疲れの違いと回復のカギは「動くこと」について、一部抜粋・再編集して紹介する。

寝ても疲れがとれないのはなぜ? 

昔の人の疲れは、体をよく動かす中で「酸化物質」や「アンモニア」が一時的にたまるのが原因でした。でも毎日歩いて体を使っていたため、乳酸をエネルギーにリサイクルする力も高く、寝ればスッキリ元気になれたのです。

現在は座りっぱなしの時間が長く、乳酸を燃料として使えないまま体に残しがち。そこに炎症物質やサビ(酸化ストレス)が重なって、「休んでもだるい」状態が続くのです。

実は乳酸は“疲労物質”ではなく、脳や心臓の大事なエネルギー源。しかも動くと乳酸が再利用される過程で、余分な疲労物質を一緒に掃除してくれます。だから現代人の疲労回復は「とにかく動くこと」。乳酸を味方につけて、体の中のお掃除を。

『疲れとり大図鑑』(世界文化社)から抜粋
『疲れとり大図鑑』(世界文化社)から抜粋
この記事の画像(4枚)

<ソファーでぐったりvs軽く走る人、回復後のパワーは7倍差>
ゴロ寝より、軽く体を動かしたほうが回復は速いです。リサイクル燃料となる、乳酸の処理は15〜25%スピードアップ。

回復後のパワーも7倍も維持します。さらに筋肉ダメージや炎症の回復も15 〜25%早いのです!つまり“ 休む=ちょこ動き” が効率的なのです!

体内時計は24時間じゃない!?

人間の体内時計は、実は地球の自転と同じではなく、約24時間と12分あります。つまり、何もしなければ毎日12分ずつズレていくのです。

夜に不規則な生活が続くと体内リズムはズレていく(画像:イメージ)
夜に不規則な生活が続くと体内リズムはズレていく(画像:イメージ)

朝に光を浴びず、夜に不規則な生活を続けていると、体内リズムは1週間で84分も後ろにズレていき、これが続くと夜更かしの完成です。気づいたら「最近、23時に寝られなくなった…」なんてことに。

このズレは、一晩寝るだけでは戻らないのが、体内時計の厄介なところです。体内時計のズレを戻せる速度は、理論的には1日で1時間が限界。

1時間半のズレを戻すには1.5日~2日ほどかかる計算になります。実際には、起きる時間、寝る時間、朝ごはんなど、さまざまな要因で体内時計をコントロールするため、1時間半のズレを完全に修正するには、倍近い時間──つまり、1週間近くかかることもあります。

たった12分のズレでも、油断すれば、1週間で「オーストラリア帰りぐらいの時差ボケ」になり、その修正にまた1週間かかる、という“蓄積型の不調”につながるわけです。

『疲れとり大図鑑』(世界文化社)

市原淳弘
東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長、副院長 兼 卒後臨床研修センター長。専門医としてホルモンの観点から疲れの原因をひもとき、慢性疲労で悩む患者が全国から訪れる。

市原淳弘
市原淳弘

1986年慶応義塾大学医学部卒業。日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本高血圧学会高血圧専門医であり、現在、東京女子医科大学高血圧・内分泌内科教授・基幹分野長、副院長 兼 卒後臨床研修センター長。日本高血圧学会理事・評議員、日本内分泌学会評議員なども務める。内分泌代謝科専門医としてホルモンの観点から疲れの原因をひもとき、慢性疲労で悩む患者が全国から訪れる。教授就任以来、現在まで15 年間毎日外来診療を続け、日本一患者を診ている教授として厚い信頼を集めている。