浮気やDV、別れ話をした場合は500万円の慰謝料を支払え―――。
結婚を見据えた交際相手と交わした「合意書」が破られたとして、女性が元交際相手の男性を提訴し、慰謝料などを請求した。一方で被告の男性は、高額な慰謝料を求めた“合意書”はあくまで交際を円滑に進める目的のもので、効力はないと主張した。
結婚前に交わされた“約束”がどこまで法的拘束力を持つのか…。一時は結婚を約束した男女が法廷で相まみえた。
同居開始も、たびたび口論…
原告の佐藤真理さん(仮名)は離婚歴があり、シングルマザーとして元夫との間の子どもを育てていた。被告の田中健一さん(仮名)と2022年10月頃に知り合い、11月頃から交際を始めた。
2人は結婚を視野に入れ、真理さんが暮らしていた賃貸アパートで同居を開始。12月には、真理さんが子どもを伴って健一さんの親に「結婚を前提に交際している」と挨拶をしている。
交際開始早々に親への挨拶を済ませるなど、順調に交際が進んでいるように見えたが、その年の年末頃には、子どもへの対応をめぐって2人は口論となり、健一さんが真理さんの胸ぐらや首をつかむ場面があった。
そして同じ頃、真理さんの妊娠が判明。入籍を意識するきっかけとなったが、年明けに流産が明らかになる。
2023年2月頃、健一さんは「不貞や暴力、別れ話をした場合に500万円を支払う」などと記した合意書を作成し、婚姻届とともに真理さんに渡したが、これらの書面は後に真理さんによって破棄される。
5月に再度、「契約書」と題する合意書が作成され、双方が署名押印した。合意書には、2人は結婚することに合意したとの記載があり、「不貞行為をした場合は相手に500万円の慰謝料を払う」「DV行為をした場合は相手に500万円の慰謝料を払う」「健一さんが真理さんに別れ話をした場合は500万円の慰謝料を真理さんに払う」などの条項が並んでいた。
この“合意書”作成後、夏頃にかけて2人は口論になることがあり、真理さんが警察に通報することも複数回あった。
交際再開も、不貞疑惑浮上…
2人は8月に同居を解消したが、健一さんはその後も真理さん宅に宿泊することがあった。これまでの暴力を謝罪し、交際を再開するなど、関係は切れていなかった。
そして10月、健一さんのもとに「MIKI」と名乗る女性から、「SEXしてから音信不通されるといろいろ自信なくすからやめてくれる?」とのメッセージが届き、不貞疑惑が浮上した。
2人は11月頃に再び交際・同居を解消。さらに2024年1月、健一さんは真理さんへの暴力を理由に、警察に逮捕・勾留された。
原告は「合意書違反」で慰謝料請求
原告の真理さんは、2人は過去に「不貞や暴力をした場合は500万円を支払う」などとする合意書を交わしており、この合意に基づき、暴力と不貞の双方について慰謝料を請求した。
真理さんは、交際当初から健一さんが継続的に暴力を加えていたこと、診断書に基づく傷害が確認されていること、さらに「MIKI」という女性との不貞行為があったと主張。これらは合意書の条項に違反する行為であり、慰謝料請求の根拠になるとした。
合意書の有効性については、「暴力や不貞行為を行わないという約束は真意に基づく」ものであり、500万円という金額も「不当に高額とまでは言えない」し、「公序良俗に反して無効ということにもならない」と主張した。
本来、合意書に従えば合計1000万円(不貞500万円+暴力500万円)の請求となるが、今回の訴訟ではその一部として100万円を求めた。
また、健一さんが同居中に真理さん宅の壁に穴を開け、玄関ドアに凹みを生じさせたとも主張。真理さんは賃借人として、退去時に家主に対して原状回復義務を負う立場にあるため、損傷によって修理費用が増加することになる。
提出された修理費用の見積額は62万2000円であり、真理さんはその一部として40万円を請求。慰謝料の100万円と合わせて、計140万円が健一さんへの請求額となった。
