隣り合う2軒の家の“視線の問題”を巡る隣人トラブルが、法廷バトルに発展した。
お隣に新築された家の窓から自宅の敷地が見渡されるとして、前から住んでいた住民が隣人に対して目隠しの設置を求めたのだ。
争点は、境界から1メートル以内に「他人の宅地を見通せる窓」を設けた場合に、目隠しを義務づけている民法の規定が適用されるかどうかだ。訴えられた隣人は、「浴室用の窓で曇りガラスだから見通せる窓ではない」と反論。訴え自体を「嫌がらせが目的」などと反発した。
しかし、裁判所は「目隠しを設置せよ」との判決を下した。その理由とは…。
隣の家の窓が…
原告の高橋さん(仮名)は、2008年8月にとある大都市圏の土地を購入し、自宅を建てて居住してきた。
その隣の土地では2023年に、被告となる川崎夫妻(仮名)が新たに二階建ての住宅を建設した。建物は高橋さん宅との境界線から約60センチの位置に建てられ、夫婦はそこに住み始めた。
この川崎さん宅には、西側、すなわち高橋さん宅と向かい合う側に4カ所の窓が設置されていた。
それぞれの大きさは次の通りだ。(横×縦、単位はセンチメートル)
・浴室の窓(119×70)
・乾燥室の窓(165×200)
・リビングの窓(150×110)
・2階の腰高窓(165×100)
計4カ所の窓が設置された。
さらに、2階南側にはバルコニーが設置され、その西側の手すり部分(手すりの高さは125センチメートル)も、高橋さん宅の方向に面していた。
これらの窓・バルコニーはいずれも、両家の境界線から約60センチという近接した位置関係にあり、高橋さんは「自宅敷地が見えてしまう」ことに関して不安を感じるようになった。
こうした経緯を背景に、高橋さんは川崎夫妻を相手取り、目隠し設置を求める訴訟に至った。
「見られている」に精神的負担を主張
原告の高橋さんは、次のように訴えた。
民法235条は、「境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む)を設ける者は、目隠しを付けなければならない」と定めている。
高橋さん宅側に作られた4つの窓とバルコニーは、その要件に明らかに該当するという。
実際、高橋さん宅の敷地や通路、物置、さらには温室と呼ぶ建物の一部まで、お隣の川崎さんの自宅側から視界に入る状態であり、心理的負担は大きかったと主張した。
また、高橋さんは、プライバシーが脅かされ、不安感が続いたとも主張。「見られているのではないか」という不安が続き、精神的な負担が大きかったとして、目隠しの設置とともに、慰謝料100万円の支払いを求めた。
「観望する用途ではない」と反論
一方、被告の川崎夫妻は、窓やバルコニーから見えているのは宅地ではない、と反論した。
見えるのはあくまで物置や通路、駐車場であって「宅地としての生活空間」ではないと主張。浴室窓は曇りガラスで、外を観望するような用途ではないとした。
また、乾燥室の窓やリビングの窓も生活のための設備であり、覗き込みを意図した構造ではないと主張。さらに、この地域には、建築協定を元に「窓同士が向かい合わないように住民同士が配慮することにより、目隠しを設置しない慣習」があるとした。
ほかにも、目隠しを設置すると、認定を受けた長期優良住宅が反故になり重大な金銭的・環境的負担を被ることになるとも主張した。
目隠しを設置すれば被告側の日照権が奪われ、健康で文化的な最低限度の生活が送れなくなると強調した上で、原告の真の目的は「原告のプライバシーを保護することではなく、被告宅を傷つけ破壊することにある」とまで述べた。
以上の理由から、原告の要求は過度であり、権利の濫用にあたると訴えた。
