医療費が高額になった場合の患者負担を抑える高額療養費制度。政府はこの制度を見直し、月々の負担上限額を2026年8月から段階的に引き上げることを決めた。

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膨らむ医療費と制度の維持という課題の一方で、患者に重くのしかかる経済的な負担への不安。福岡の当事者の声を聞いた。

「ここにはいなかったかもしれない…」

「私の病気は多発性骨髄腫という血液のがんで完治のない病気。入院がない年で自己負担で50万円程度。入院が長期になった年とかはやっぱり150万円前後近くはかかっていますね」と話す福岡県内に住む40代の女性。

高校生と小学生の子どもを持つ女性は、2021年に多発性骨髄腫を発症し、週に1度の通院を続けている。

「高額療養費制度を使用することでぐっと抑えられて、60万円程度の自己負担でできましたが、元々のかかった治療費は4千万円近く。私自身が高額療養費に守られてここまで治療できてることに感謝していて」(多発性骨髄腫を治療中の県内在住の40代女性)。

2025年病気が再発し、適用となった免疫療法の医療費は3500万円。この治療が受けられなかったら「今、ここにはいなかったかもしれない」と女性は話す。

女性が使った高額療養費制度は、医療費が高額になった場合、患者の年齢や所得に応じて医療費を補助し自己負担額を抑える仕組み。

患者にとって命綱ともされる制度だが、膨らむ医療費を抑制し、制度を維持していくことを目的に政府は2025年12月、1カ月あたりの患者の負担上限額を2026年8月から段階的に引き上げることなどを決定した。

具体的には平均的な所得区分とされる年収、約370万円から約770万円の人は、2026年8月から月の負担上限額が5700円引き上げられ、8万5800円に。2027年8月には、所得区分が細分化され月の負担上限額は最も大きい人で38%増えることになる。

ただ、現行の制度を使っても薬代はじめ日々の経済的な負担は大きく、治療を続ける女性にとって気がかりなのが子どもたちのことだ。

引き上げ撤回求める署名は17万超え

女性の高校生の子どもは、大学受験も控えていて「子どもの夢はしっかり守ってあげたい」と話す女性。

「骨髄腫自体は、あまり余命が長くないというか、そのように言われていますので、私が亡くなったあとも、家族が生きていくためになるべく負担をかけたくない。この制度を維持するために何か見直すことが必要ということは十分理解しています。ただ長く治療を続ける立場として、働いていても治療と生活の両立は簡単ではないということをしっかり理解して頂いた上で見直しを検討頂けたら…」(多発性骨髄腫を治療中の県内在住の40代女性)。

制度の見直しを巡っては2025年3月、当時の石破政権の元で負担額の引き上げ案が出されていたが「当事者の声を聞いていない」と患者団体などの強い反発を受け、引き上げが見送られていた。

見送りから9カ月、厚生労働省は関係者の意見を踏まえ、前回は最大70%を超えていた負担額の引き上げ幅を半分ほどに抑えたほか、長期療養者に配慮したとしている。

一方で、引き上げ撤回を求めるオンライン署名は17万を超え、署名を厚労省に提出した団体によると「実質賃金が上がらない中で、これ以上の負担は厳しい」と20代から50代の現役世代を中心に切実な声が届いているという。

命に関わる問題 求められる丁寧な議論

「最初に聞いたときは、まずお金のことがよぎった。入院のときとか仕事はしていないわけですし、収入はなくなるしですね」と話すのは、福岡市内に住む50代の女性。2020年に初期の乳がんが見つかった。

手術に約30万円、放射線治療に約20万円がかかったが、いずれも高額療養費制度が適用され、自己負担額は半分程度で済んだという。

「いきなり手術で何十万もって言われたときに、やっぱり頭が真っ白になって『出せない』って思うし『放射線をしますか?』って聞かれたときも『おいくらぐらいかかるんですか?』って、やっぱり聞いちゃいましたし、もしも制度がなかったら、もしかして『やめます』って言ってたかもしれない」(乳がん治療で制度を使用した福岡市内在住の50代女性)。

1人暮らしで治療の間、収入もなくなってしまうことから制度に救われたと話す女性。増え続ける医療費を抑え、制度を維持するためとする政府の考えに一定の理解を示すが、治療の選択肢を減らしてしまうのではと不安な思いを口にした。

「再発しないとも限らないし、また別の病気やがんになるかもしれないと考えたときに、この制度は大事な制度だと思うので、病気している人を切り離すようなやり方はして欲しくないなと思いますね」(乳がん治療で制度を使用した福岡市内在住の50代女性)。

誰もが直面するかもしれない医療費の負担を支える高額療養費制度。制度を維持するため、負担の議論は避けられない一方で、命に関わる問題として丁寧な議論が求められている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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