2024年から2025年にかけて、東京の大学を卒業した4人の若者が天草に移住した。就職先は航空会社や酒蔵などさまざま。それぞれが感じた天草の魅力とは? そして、決め手は何だったのだろうか?

稲刈りをする若者たち。東京の武蔵野美術大学の学生だ。大学が関わる産官学共同プロジェクトの一環として、2022年から毎年、3年生6人が天草に1カ月間滞在し、暮らしや産業などを体験している。

【武蔵野美術大学 若杉 浩一 教授/天草市出身】
「地域を体験するだけでは深い意味を知ることができない。観光者、訪問者ではなく、住民として体感や経験をするには長期の滞在が重要になると思う。ひと月、ここに滞在して、暮らしを〈まとう〉ことを大切にしている」

【学生】
「絵や写真、映像などおのおの自分が表現したいものを選び、土地の魅力を表現するためのものまで、一から考えてやっている」

【若杉 浩一 教授】
「デザインやクリエイティブは日本全国で必要だし、特に地域の中ではものすごくインパクトがあることにつながるのではないか。そういう体験を学生にさせたい。4人が天草に移住して仕事をしている」

そのうちの1人は御所浦島で暮らしている。大分県出身の鶴田 桃子さんは、2025年に『熊本県御所浦地域おこし協力隊』として、天草市の御所浦町に移住。地域の人と交流しながら情報を得たり、困りごとを手伝ったりしている。

【鶴田 桃子さん】
「『よく来てくれました』みたいな方がすごく多くて、来てよかったという気持ちにさせてくれたのが最初の印象。先生と一緒に作ったロゴマークをTシャツに刷って販売して、鮮魚店や太鼓の保存会も漁師のTシャツのデザインを任せてもらって、デザイン業務もやっている。生産者とかなり距離が近い暮らしになるので、食べ物でも何でも今まで簡単に買っていた物を一生懸命、汗水垂らして作っている人が近くにいると、いろいろな人の手がかかっていると実感しながら生活している」

【町民】
「見ての通り明るくて、桃ちゃんの魅力はあれだよ、ニコニコだよ、笑顔いっぱいの」

【鶴田 桃子さん】
「肩書とか考えずに、人として接してもらえている感じがして、こういう所に身を置いて暮らすことを若いうちにできたら、すごく幸せなことだと思ったのがある」

埼玉県出身の拜藤 心平さんは、天草ケーブルネットワークに就職。広告やパンフレット、イベントの看板などのデザインを担当している。

【拜藤 心平さん】
「なんで何も知らない僕のため、学生のためにここまでしてくれるんだろうというのが多くて。そういう姿勢がいいなと思って、その人にしてもらったことのように、ほかの人のことを考えて、物事をするとか何かを作ってみるとか、循環がこの地域の良さだと思って、移り住もうと思った。正解だった」

福岡県出身の進藤 圭那子さんは、天草エアラインに就職。搭乗手続きや保安検査、利用客の誘導などを行っている。

【進藤 圭那子さん】
「初めて会う人たちが家族のように迎えてくれる、そんな場所。私も仲間になりたい、一員になりたいと思ったのが一番のきっかけ」

夜の神社の境内に、祭りの練習をする進藤さんの姿があった。

【進藤 圭那子さん】
「『天草は何もない』という人が多いんですが、私は何でもあると思う。いろいろなことを教えてくれたり、すごく親身に他者に尽くしてくれる。(そのために)すぐに体が動くところがすごく尊敬できて、天草で学んだ一番大きなこと」

神奈川県出身の藤原 大地さんは、天草市唯一の酒蔵・天草酒造に就職。焼酎の仕込みや原料となる米やサツマイモの栽培、商品のラベルのデザインなどを担当している。

【藤原 大地さん】
「新卒の大学生ではなくて、藤原大地君に来てほしいと思ってくれていると感じて、こっちで就職する方が不安がないと感じて、天草に来た。いろいろな人と知り合いたいし、つながりたい。一人一人に得意なこと、役割があって、顔がしっかり見える。自分もできることを見つけて天草に返していきたい。(天草は)このまま変わらないでほしい」

【天草市 馬場 昭治 市長】
「4人が天草に来てくれたことで、天草の人たちもつないで、どんどんこの輪が広がっていくこと、そして、また4人のあとに続く学生たちがこの天草にやって来てくれることを期待している」

2025年3月発表の『天草市人口ビジョン』によると、2045年には旧本渡市を除く全地域で1975年の人口の約2~3割以下にまで大きく減少すると推計されている。『高校や大学の卒業後、天草市に住みたいと思いますか』という質問では、2015年は『住みたい』が約50%でしたが、2024年は約30%に減った。

【天草市『二十歳のつどい』出席者】
「就職先が増えたら、もっと人口が増えるのかなと思う」
「働ける場所をもっと多く提供してもらいたい」
「自分の強みや個性を発揮できる場所やイベントができたらと思う」
「大学や専門学校が増えたら、うれしい」
「バスももうちょっと増えるといいなと思う」

【若杉 浩一 教授】
「都市に何かが集中するのではなく、日本全体が循環し、持続していく社会を考えた時、クリエイティブの地域での在り方を考えた時に彼らの存在や体験、そこで何かをしていくことが学生のため、地域のため、我が国の未来のためでもあると思う。新しい地域の中でのクリエイティブやデザインをこれから積み上げていく時期だし、ようやく彼らもこの場所に慣れ始めて、さぁ次をやろうと思い始めた時期だと思うので、僕らも東京からただ見守っているのではなく、一緒になって新しい活動をしたいと思う。一緒に頑張ろう」

【鶴田 桃子さん】
「自分がどういうふうにしてもらったかを思い出しながら、おもてなしができるように心がけているのと、いろいろな世代、立場の人が一緒にここで行事をしたり、物を作ったりして、外からの交流も活発にしていきたい」

【拜藤 心平さん】
「温かい輪を増やしていきたい、もっと学びたい」

【進藤 圭那子さん】
「写真展をいつかやりたい。天草で撮った写真で、私が好きな天草の景色や人がいる瞬間や場面、好きな街を天草の人に見ていただきたい」

【藤原 大地さん】
「しっかりと地域に根付いた物づくりに誇りを持って、頑張っていきたい」

学生の受け入れは、地域づくり団体『しもうら弁天会』が毎年、協力している。

【若杉浩一 教授】
「どこでもいいというわけではないです、学生を連れてくる所は。学生を信頼して
預けることができるパートナー、仲間がいるかが重要で、信頼できる仲間に学生たちが育まれることが条件」

2025年10月、天草に1カ月間滞在していた現役の学生たちの送別会が開かれた。

【学生】
「離れるのが寂しいです。ありがとうございました」

【参加者】
「結婚式で娘を嫁に出す時のようです」

先輩たちのようにこの場所で生きていきたい。そう決めた若者がまた1人、この春、天草にやって来る。

かつて自分が〈天草の人は温かい〉と思ったように、自分も思ってもらえる日が来るかもしれない。この輪の中にいれば、いつかきっと・・・。

テレビ熊本
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