2025年の日経平均株価は、4月に3万円近くまで値下がりした後、上昇基調に転じ、10月には初めて5万円を突破して5万2000円を超える水準をつけ、記録的な値幅を見せた。年末の終値は、前年末から1万円以上値上がりし節目の5万円台を維持した。

大納会でも節目の5万円台をキープ
大納会でも節目の5万円台をキープ
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アメリカ・トランプ政権の関税政策が大きく影響した年前半に対し、後半はAI需要をめぐる強気の見方が株価を押し上げたほか、高市首相就任に伴う積極財政への期待も相場を支えた。

円相場は、2025年初めには1ドル=150円台後半だったが、トランプ関税に市場はドル売りで反応し、4月には140円近くまで円高が進んだ。

しかしその後は、高市政権下での財政拡張が意識されるなか円安が強まる流れとなり、年末には再び150円台後半の水準に戻り、いわば「行って来い」の展開を見せた。

2026年はどのような年になるだろうか。

戦後「午年」株価は3勝3敗

相場には干支にちなんだ格言がある。「辰巳天井」と言われ、天井をつけやすいとされた2024年と2025年は、ともに年末の日経平均株価が最高値を更新したが、「午年」の2026年の格言は「午尻下がり」で、株価が下落しやすいとされている。

戦後6回の「午年」の日経平均株価の年間騰落率をみると、上昇と下落が3回ずつで、勝敗は五分五分だ。前回2014年は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や日銀による大規模緩和のなか円安とともに株高が進んだが、その前の2回は値下がりとなっている。2002年は、デフレが深刻化するなか前年末比で20%近く、バブル経済が崩壊した1990年は40%近く下落した。

AI牽引のバブル懸念

AIブームは、アメリカでの強まりが日本にも波及する様相となっている。東京市場でも、AI需要が拡大する企業を中心に利益が伸びるなか、東証プライム市場のEPS(1株当たり利益)は、2025年11月末時点で171.3円と高水準で推移している。

2025年末時点のプライムの時価総額ランキング(政府保有分を含む)では、半導体関連企業の上昇が目立ち、ソフトバンクグループのほか、東京エレクトロン、アドバンテストが15兆円を超えて10位以内にランクインした。

オープンAI、オラクル、ソフトバンクの3社トップと会見に臨んだトランプ大統領(2025年1月)
オープンAI、オラクル、ソフトバンクの3社トップと会見に臨んだトランプ大統領(2025年1月)

こうした状況のなか、世界的な過熱ぶりを指摘して調整局面入りを警戒する意見も聞かれるようになってきた。

アメリカで株式市場の過熱感を測る指標の一つとして注視されているのが、マージンデット=信用取引債務だ。投資家が証券売買にあたって金融機関から借り入れた債務の総額を指すが、アメリカのFINRA(金融取引業規制機構)によると、2025年10月末時点の残高は、1兆1836億ドルと、前年同月に比べ45%増え、コロナ禍の期間を除くと、リーマン・ショック以前の2007年以来の伸びを見せ、11月末時点でも36%増となった。

ニューヨーク・ウォールストリート
ニューヨーク・ウォールストリート

こうした数値は、投資家が高いリスク許容度のもとレバレッジをかけて取引を行っていることを示し、過去のITバブルに類似したリスクを示唆している、との警戒感を生んでいる。

一方で、AIへの期待は技術革新に伴う合理的な評価によるもので、相場を牽引する局面は続くとする見方も強い。高市政権は、AI・半導体など17の重点分野への官民による戦略的な投資を掲げ、供給構造の強化を打ち出したが、AI活用を収益性の持続的拡大につなげ、強い経済に結実できるかが大きな焦点だ。

アメリカ利下げと”2人のケビン”

強気相場を支えているアメリカの利下げ期待をめぐっては、大きなイベントが控えている。5月にFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の任期が満了となるのを前に、トランプ大統領は1月にも次期議長を指名するとみられている。

任期満了が近づくFRBパウエル議長
任期満了が近づくFRBパウエル議長

トランプ氏は景気刺激効果のある金融緩和を志向し、早期の利下げに慎重な姿勢をとってきたパウエル議長を公然と批判してきた。利下げへの積極性が指名のカギを握ると見られるなか、最有力候補と目されているのは、NEC(国家経済会議)のケビン・ハセット委員長と元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏だ。

トランプ氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで「2人のケビンはどちらも素晴らしい」と話している。

トランプ大統領
トランプ大統領

2025年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)では0.25%の追加利下げを決めたが、19人の参加者のうち、8人が2026年に「2回以上の利下げ」を想定した一方、「追加利下げなし」としたのが7人にのぼり、意見の隔たりが鮮明になった。関税政策の影響が続くとみられるなか、2026年はトランプ減税の税還付も始まる。

利下げ期待の剥落が株式相場の押し下げにつながりかねないなか、誰が議長に就任しても、FRBはインフレ抑制と雇用下支えの両にらみでの政策運営を余儀なくされそうだ。

日銀利上げ 後手に回るリスク

利上げの対応が後手に回る可能性が意識され始めているのが日銀だ。日銀は2025年12月に政策金利を30年ぶりの水準となる0.75%に引き上げたが、12月30日夕方の東京外国為替市場の円相場は1ドル=156円近辺で、高市氏が自民党総裁に選出される直前と比較すると、9円程度円安が進んだことになる。

日銀・植田総裁
日銀・植田総裁

財政膨張への警戒感のほか、日銀がこの先の利上げペースを急がないとの観測が、円売りを促している。2025年11月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月比で3.0%上昇、生鮮を除く食料は7.0%の伸びとなり、食料品の価格上昇が全体を押し上げる構図が続く。

帝国データバンクによると、食品の値上げは、2026年も、ひと月1000品目前後となり、年間1万5000品目に達する可能性がある。

食料品の値上げ相次いだ2025年
食料品の値上げ相次いだ2025年

2026年の利上げのペースについて、市場には年1回や2回とする見方があるが、円安基調が続けば、輸入物価の高止まりを通じて物価高を助長する懸念が強まる。円売りけん制のため、さらなる利上げへの決断を早⁠晩求められるとの観測も出るなか、インフレ圧力に対し利上げペースが追い付かなくなる「ビハインド・ザ・カーブ」のリスクも囁かれている。

追加利上げをどのようなペースで行い、どの水準まで継続するのか。日銀は、円安と物価動向をにらみながらの難しい舵取りを迫られることになる。

金利動向に一段の注視が必要に

2026年は、「金利のある世界」がより一層本格化し、家計にとって「金利動向」を一段と注視する必要が出てくる1年になりそうだ。

2025年末の日銀の追加利上げにより、住宅ローンの変動型金利は、2026年4月から基準金利が引き上げられ、既存の契約者は7月ごろの返済分から反映される見通しだ。日銀が段階的に利上げを進めていけば、さらなる上昇が見込まれる。

固定型金利も上昇傾向を見せている。円安でインフレが加速しかねないとの見方が、財政膨張への懸念とともに、国債売りを招き、長期金利が上昇ピッチを強めているからだ。

指標となる新発10年物国債利回りが一時2.1%と、約27年ぶりの高水準に達するなか、大手5行は、2026年1月から固定型金利をさらに引き上げ、3メガバンクでは10年固定の最優遇金利の平均が2.63%と、さかのぼれる2006年4月以降で最も高くなった。

じりじり上がる住宅ローン金利
じりじり上がる住宅ローン金利

金利の上昇は、預金金利が上がることで家計に恩恵がもたらされる面もあるが、金融資産が少なく住宅ローンの残債が相対的に多いとされる若年層では負担増となる傾向が強い。

将来のマネープランを点検するとともに、住宅ローンをめぐっては、新規借り入れの際も借り換えを検討する際も、返済額に対し収入の余裕がどの程度あるのか、この先の資金計画や手元資金の状況からどのくらいの金利上昇を許容できるのかなどを見極めて、どの金融機関のどのタイプが最適なのかを判断することが求められそうだ。

成長への底上げ力を試される1年に

AIが主導する内需の上向き軌道を実現し、投資や賃上げが進んで消費が勢いづく好循環の流れを確実なものにしていけるのか。

2026年「午年」は、物価上昇と金利上昇が同時に進むインフレ局面で、日本経済が成長への底上げ力を試される1年になる。

(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員