「ニュースこの1年」。今回は今年の漢字にも選ばれたクマです。
今年、富山県内の出没件数は1000件を超え、過去10年で最多となりました。今後必要な対策を考えます。
「怖い」
「怖い」
「いままでこんなことがなかったから怖い」
今年、県内で相次いだクマの出没。23日までの件数は1051件と、過去10年で最も多くなりました。
*リポート
「登山道の真ん中、ど真ん中です。クマがいます。エサを探しているんでしょうか」
県内でクマの目撃情報が寄せられ始めたのは8月。夏山でした。
*登山客
「さっきまで顔を出していた」
*リポート
「室堂周辺に現れたクマはここ、室堂ターミナルの屋上から目視で確認できる、あちらの斜面まで近づいてきました」
多くの登山客でにぎわう室堂ターミナルの近くでも出没しました。
そして10月に入ってからは人里にも出没。
*住民
「実際(クマを)見の前にするとクマがあんなに速いものかと。すごく怖かった」「(クマのふんが)点々と落ちている。怖い。外に出ることさえも。敷地内を通られたから」
人身被害も発生しました。
*クマに襲われた女性
「ごみを(ごみステーションの)箱の中に出してふたをしてから襲われた。突き飛ばされた。一瞬何が起こったかわからなかった。すごい力だった」
県がクマの出没した場所をまとめた地図です。去年と比べると、住宅が密集している市街地での出没が増えていることがわかります。
その要因と考えられているのがクマのエサです。
*立山町猟友会 栃山正雄会長
「(クマの胃袋に)あまり食べ物が入っていない。完全にエサがない。山に食べ物がないと思う」
今年は、主食となるブナやミズナラなどのドングリ類が軒並み不作で、専門家は、エサを求めて平野部へ移動するクマが増えたとみています。
*森林総合研究所 東北支所 動物生態遺伝 大西尚樹チーム長
「秋のエサは基本的にはドングリ。おととしと今年は凶作にあたる年で、山の中にエサがない。クマがエサを求めて動き回っている。つまり市街地に出てくるという状況」
この状況に政府も対策を強化しました。
*リポート
「現場では今2発大きな銃声が聞こえました」
今年、自治体の判断で発砲が可能になる「緊急銃猟制度」が導入されました。
10月、県内でも初めて緊急銃猟によってクマが駆除されました。
*リポート
「いま銃声が…」
この3カ月、緊急銃猟は、県内で合わせて9回許可され、このうち5件クマが駆除されました。
また、今年度の県内のクマの捕獲数は過去最多の355頭にのぼりました。
連日の出没でハンターからは悲鳴も。
*立山町猟友会 ハンター
「昔50人いた。この村だけで」
Q.ハンターが全然足りない?
「足りない。2人だもの」
ハンター不足が浮き彫りになりました。
その対策の切り札として、狩猟免許を持つ自治体の職員、いわゆる公務員ハンターが注目されました。
*上市町の公務員ハンター 木原剛さん
「自分たちは役場内で着替えて(銃を)持ってすぐ現地に着けるのがメリット」
来シーズン以降もクマは人里に出没し続けるのか…。専門家に聞きました。
*森林総合研究所 東北支所 動物生態遺伝 大西尚樹チーム長
「再来年また大量出没が起きるだろう。来年は出没が少ない年だと思う。少ないから大丈夫だということではなくて、再来年に向けて、とにかく来年は急ピッチで整備して、制度を作り、それを全国に展開してもらいたい」
森林総合研究所東北支所の大西尚樹さんです。
ドングリ類の凶作が2年ほどの周期で訪れることから、再来年以降、また大量出没が起きる可能性があると指摘しています。
そのうえで大西さんは、人とクマのすみ分けを徹底すべきだと訴えています。
*森林総合研究所 東北支所 動物生態遺伝 大西尚樹チーム長
「とにかく人里に近い、標高が低いエリア(のクマ)をゼロにする。クマは警戒心が強くて、開けたところは好きではないので、見晴らしのいいエリアを作るだけでも、だいぶクマの出没は抑制できる」
今年は暖冬の影響か、12月に入ってもクマの目撃情報があり、引き続き注意が必要です。