“ストーカー対応のスペシャリスト”
山川真人警部補:
「おはようございます」
愛媛県警本部生活安全部人身安全対策・少年課に所属する山川警部補。この日向かったのは松山東警察署だ。
松山東警察署人身安全対策課・高市洋警部補:
「ストーカー被害者に対する執着が強い行為者なので、禁止命令かけても(ストーカー行為が)あるっていう、つきまといが起きる可能性は極めて高いということよね」
“ストーカー対応のスペシャリスト”として、県内の各警察署で発生する事案について,
繰り返しつきまとうことなどを禁じる「禁止命令」を出すかどうか、どういった体制で被害者の身を守るのか、などを判断するのだ。
女性3人が同じ男からストーカー被害 うち1人は休職中
山川警部補は早速、管内の女性3人が同じ男からストーカー被害を受けているとされる事案について、松山東署の担当者から報告を聞いた。
高市洋警部補:
「被害者が3人いて、禁止命令を望んだ2人、より不安がっている2人の被害者に対して、今(禁止命令を出す)準備を進めているところで、それで禁止命令違反があれば今度はもう検挙していくということにはなる。そうせざるを得ない状況」
被害者の1人は、通勤中に男に目を付けられその後、自宅まで執拗に付きまとわれたという。今、女性は怖くて出社出来ず休職している。

警察も最新の状況確認は欠かせない
山川警部補:
「被害者の方って(自宅の近くに)もう(防犯)カメラを付けたりしている?被害者は(自宅から)避難をしています。避難していて(避難先は)知られていないので(カメラは付けなくて)大丈夫と。(加害者の状況を)逐一教えてほしいという希望は出されています。そらそうよねたまたま偶然会いましたとかね。そういうのは無いにこしたことはないので」
ストーカー被害は少しでも対応を誤ると、被害者の命の危険につながる可能性があるため、警察も的確に判断できるよう最新の状況確認が欠かせない。
山川警部補:
「(本事案は禁止命令を)出す予定で動いています」

日々考えるのは、“事件を起こさせない”こと
県警はここ5年間、毎年150件ほどのストーカー被害を受理している。その中で加害者が「禁止命令」を破るなど悪質なケースとして、今年に入り11月末までに28件を検挙。連れ去りなど犯行がさらにエスカレートすることを防ぐため、細心の注意で対処している。山川警部補が日々考えるのは、“事件を起こさせない”こと。その原点となっているのは…。
山川警部補:
「相手がどう考えているのか、どう思っているのかというのを、すごく考えすぎてしまうというか、共感してしまう。私の若い頃なんですけど、そういうふうな私の姿勢を見て、上司からは『お前は優しすぎるな』と、『犯人のことも考えてしまう、刑事には向いてないんじゃないの』みたいなことも言われたこともあるんです」
かつての上司から『弱点』とも言われたその「優しい性格」、その優しさがある事件をきっかけに“強み”に変わる。

2005年の伊予市で起きた少年犯罪で少年の取り調べを担当
2005年3月、伊予警察署の管内では複数の非行少年グループが、1年間に172件の事件を起こすなど、少年犯罪が多発。山川警部補は逮捕された少年の取り調べを担当した。
山川警部補:
「『大人は敵』というような考え方というのが多くて、やはり初めは完全に拒否する、話もしてくれないというところもあったりするので、毎日毎日顔を合わせてくだらない話もしながら、信頼関係を築いていくと、徐々に徐々に話し出す。自分のしたことを素直に悪かったというふうに反省してくれる。最後にはそういふうになったので、そういうのを目の当たりにすると、これでこの子は大丈夫かなと。立ち直ってくれるかなと」
一部のグループは解体され、少年らの更生につながった。
長年その姿をそばで見てきた上司も全幅の信頼を置いている。
県警・生活安全部人身安全対策管理官・網本功警視:
「彼は本当に優しい性格をしておりまして、叱るべきところは叱る。助言するところは助言する。そういった持ち味で対応してくれていると思います」

山川警部補は松山市の繁華街大街道へ
山川警部補は松山市の繁華街大街道に向かった。
山川警部補:
「この辺でいえば色んなもの壊したりとか、店に入ってトラブルを犯したりとか、夜中までずっと帰らずに溜まってしまうようなことがあります」
街の少年たちに声をかける。
山川警部補:
「こんにちは。警察で補導でまわりよんよ。別に特に何かしたっていうわけじゃないんやけど、いま遊ぶ分には全然かまんのやけど、これを夜遅い時間まで遊ぶとかというのはしないように、早めに帰りましょうとお願いします」
早めの帰宅を促す山川警部補。
山川警部補:
「いまはなんしよるん?」
少年:
「いまは(書店に)行って参考書を見ていました。受験生なんで」
山川警部補:
「3年生?そうなん。頑張ってねごめんね声かけて。頑張って勉強してね」

「なるべく笑顔で声掛けしています」
少年たちに声をかける山川警部補の表情。それはいつも、『笑顔』。
山川警部補:
「怖い顔して行っても話はしてくれないので、なるべく笑顔で声掛けしています」
山川警部補が考える補導の目的は、決して「叱る」ことではない。被害者に寄り添い、少年たちに向き合う。悲しむ人が1人でも減るように、これからも事件の芽をひとつひとつ摘み取っていく。

