東京都は先週金曜日に、2026年度からの都市計画道路の整備方針案を発表した。その中に、これまでの道路整備の考えとは真逆となる、「道路を減らして歩行者や街に優しい道路整備」という新しい考え方が盛り込まれた。

区部都道49区間など優先的に整備

まず、道路計画の整備方針案の全体像を紹介する。都は区市町村とともに都道や市区町村道に関して、2026年度から優先的に整備する道路を選定して公表している。地元にとって経済的にも防災的にも大きく左右するので、重要な発表だ。

今回の整備計画案では、区部都道では中央区豊海から芝浦を繋ぐ環状3号線など49区間・約43キロが2026年度から優先的に事業着手を目指す路線に選定されたほか、区道では66区間が選定された。

多摩地域の都道では、47区間・約53キロが優先整備路線に選定されたほか、61区間が市町村道で選定されている。

このなかには、首都直下地震に備えて、災害時の政府災害対策本部予備施設や災害応急対策活動の拠点となる立川広域防災基地へのアクセスを強化するために、立川市富士見町7丁目を通る都52“立川3・1・34号線”や国立市谷保を通る都89“国立3・3・15号線”などのルートが選定されている。

「リーディング路線」で道路空間を再編

そして、この計画案のもう一つのポイントであり最大の特徴が、「道路空間の再編」という考え方が盛り込まれたことだ。今回から、整備方針案の中の道路空間の再配分を行うという「リーディング路線」が選定されている。

リーディング路線というのは、道の空間を減らして歩行者が歩くことができ、滞留できるスペースを創出するという全く新しいコンセプトだ。

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従来までの道路整備は、車道の整備が優先され、歩道があったりなかったりしていたが、リーディング路線では、例えば片側2車線のうち1車線を廃止して、歩道や地域の賑わい創出の空間として活用する。道路整備計画に車線を減らすというプランが盛り込まれたのはすごい。

道路整備の多くは、「道を作ってほしい」という地域の声からあがり、毎年、地方議員、国会議員らが地元住民とともに都や国への陳情合戦が繰り広げられている。さぞかし地元から抵抗があるのかと思うが、今のところそうした動きはない。なぜなら、道を減らす前提が、道路ネットワークが充実した地域に限っているからだ。ネットワークが充実すれば、交通が分散されるため、2車線の道路を1車線にしても渋滞が起こらない。

都庁周辺、渋谷駅周辺、池袋、上野が対象

都が初のリーディング路線に選定したのは、新宿の都庁周辺と、渋谷駅周辺、そして池袋と上野だ。

東京都庁
東京都庁

新宿では、都庁周辺の4号街路、小田急ハルクや思い出横丁に並行する7号街路、紀伊国屋や伊勢丹がある新宿通りなど6路線。渋谷では、大山街道(道玄坂、宮益坂)、神宮通りから代々木公園までの公園通り。上野では、アメ横と並行し上野恩賜公園に隣接している中央通り、上野と浅草をつなぐ浅草通り。池袋では、池袋駅東口を南北に通過する明治通り、東西に接続するグリーン大通り。路線により状況が異なるため、2026年度以降、本当に車線を減らして問題ないかなど検証する路線もあるという。

東京都内の歩道を歩いていると、幅が狭く、時には歩道が車道側に傾いているところもあり、車いすの人や、電動カーを使う高齢者にとって安全だとはいえない場所もある。2026年度から新しい取り組みが実施される東京都の道路整備計画によって、今後、都内の道路がどのように変わっていくのか注目していきたい。
(フジテレビ社会部 大塚隆広)

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。