山形市などで展開するスーパーが開発した調味料が、2025年の「おいしいもの総選挙」で史上初の3年連続最高金賞を受賞し、殿堂入りを果たした。パッケージ刷新やキャンプブームを機に、年間6万本のヒットとなった。現在は通販が中心だが、全国的な注目を集めている。

ローカルスーパーから殿堂入り

山形県に本社があるローカルスーパーで売られている調味料が、今ひそかなブームを巻き起こしている。

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黄色いパッケージが目印の調味料「ガリスパ!」。
1本463円、粉末状のガーリックスパイスだ。

売り場を見てみると、次々と商品を手に取っていく客の姿があった。中には2本まとめてカゴに入れる客や詰め替え用と一緒に買い求める客もいた。    

カゴの中には大量の肉と“詰め替え用”のガリスパ!
カゴの中には大量の肉と“詰め替え用”のガリスパ!

大量の肉と合わせて購入していた女性(40代)は「クリスマス用に焼き肉をやる予定なので、それで(「ガリスパ!」を)使おうと買った。野菜炒めに使うこともあるので、結構な頻度で買っている」と話す。

この調味料を販売しているのは山形県と宮城県の12カ所で金・土・日のみ営業する「週末びっくり市」だ。

この地域密着型スーパーが開発した調味料「ガリスパ!」が、2025年の「おいしいもの総選挙」で最高金賞を3年連続で受賞し、初めて殿堂入りした。

「ガリスパ!」は、醤油を乾燥させて粉末状にしたものをベースにフライドガーリックなどと独自に調合したものだ。

愛用歴約3年の30代女性:
(「ガリスパ!」)ひとつで味が出る。しょっぱくも辛くもないので下味にすると2歳と3歳の子どももおいしく食べている。

愛用歴約3年の40代女性:
普段、野菜炒めとか野菜をあまり食べない子どもが、「ガリスパ!」で味付けすると野菜炒めを食べてくれる。

「ガリスパ!」は販売から約8年、2024年に販売数が6万本に達しヒット商品の仲間入りをしたが、発売当初からヒットしたわけではなく、開発者によると「最初はポロポロくらい」の売れ行きだったという。

たった1人での着手から人気商品へ

11月に発表された「おいしいもの選手権2025」で「ガリスパ!」はグロサリー部門で56商品の中から最高金賞に選出された。

おいしいもの選手権で殿堂入り
おいしいもの選手権で殿堂入り

この選手権は全国104のスーパーマーケットからえりすぐりの「おいしいもの」を集め、インターネット投票で人気商品が選ばれるもので、史上初の3年連続受賞となり殿堂入りした。    

ところが、都内で聞いてみると「知らない」の声が続出。名前からイメージするものを聞くと「ガーリックスパゲッティ?」と答えた人も。

「ガリスパ!」は現在オンライン通販が中心で、関東での店頭販売は限られた数店舗のみだ。
では、なぜ注目を集めるようになったのか。

「週末びっくり市」の営業は週末3日間のみで、主力商品は精肉だ。
安倍桂介執行役員は「食肉の卸としてスタートしたのが原点。徐々に肉以外にも『お魚売ってよ』『野菜売ってよ』『食品売ってよ』という声に応えていくうちに、今の形ができた」と話す。

看板商品は牛の横隔膜の一部「サガリ」だ。
脂身が少なく、あっさりしているこの部位をおいしく食べてほしいという思いから「ガリスパ!」の商品開発が始まったという。

開発者である結城和真取締役に話を聞いた。

取材班:
開発したのはどなたですか?
結城和真取締役:
開発したのは私です。

取材班:
チームで作ったとか?
結城和真取締役:
私が単独で作りました。    

営業部長の結城取締役は、元々取引のあった醤油メーカーに協力を依頼し、液状ではなく、これまで自社で作ってこなかった粉末状の調味料に挑戦したという。

結城和真取締役:
(看板商品である)サガリは普通の肉と違って内臓肉なので、赤身で肉肉しく、醤油とニンニクがすごく相性がいいと考えた。

調味料のベースは、日本人の口になじむ「醤油」で、サガリに負けないパンチ力を出すため「ニンニク」を加えることになったという。

依頼を受け開発に携わったしょうゆメーカーの担当者は、そのバランスに試行錯誤したと話す。

株式会社エムエスエフ・横道健太郎さん:
ニンニクだけ強くてもえぐみが残ったり、香りだけが強いスパイスになる。醤油とコショウ関係とかのバランスを作るのは、黄金比を見つけるのが非常に難しかった。

改良を重ねること約半年、「ガリスパ!」は完成した。ところが、発売当初はすぐにヒットとはいかなかったという。

パッケージ刷新と“コロナ禍”が転機に

しかし、あるひとつの変化がきっかけで売り上げ上昇の転機になった。

発売当初のパッケージ
発売当初のパッケージ

結城和真取締役:
最初は今のデザインではなく、赤っぽい色のあまり目立たないようなデザインだった。「少しオリジナル感出した方がいいよ」と助言され、そこからパッケージ変えようか、と。

以前は赤いパッケージに小さく「ガーリックスパイス」と表示されていたものが、2021年からは黄色に黒字で大きく「ガリスパ!」の文字が書かれている。

結城和真取締役:    
色を変えてからは目立つのか、手に取ってもらえることが増えました。    

そして、コロナ禍のキャンプブームも重なり、徐々に売り上げが上昇。年間6万本を超えるヒット商品に成長した。

しかし、すでに全国で名を馳せる商品と比べると、その知名度は高いとは言えない。

結城和真取締役:
(店舗販売は)週末しかやっていないので、週末しか買えるタイミングがない。まだまだ(認知の)定着はしてないと謙虚に思っております。

では、なぜ全国で20万人以上が参加したインターネット投票で、3年連続最高金賞を獲得することができたのか。

「おいしいもの総選挙」事務局長は、「ガリスパ!」が支持を得た要因をこう分析する。

くふう トクバイ おいしいもの総選挙2025・草深由有子事務局長
くふう トクバイ おいしいもの総選挙2025・草深由有子事務局長

草深由有子事務局長:
他にもスパイス系の商品は色々あるが、そういった商品に比べコストパフォーマンスの良さも非常に支持されたポイントかと。まだ一部の地域でしか販売していないが(ファンの)熱量が高く、このような形で受賞したと考察している。販売する店舗が増えれば、もっと手に入るチャンスが増え、人気になっていくのではと楽しみにしている。

ローカルスーパーが生んだ人気の調味料、真の大ヒット商品になれるのか今後に注目だ。
(「イット!」12月23日放送より)

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