2025年10月に退任した石破茂前首相が12月20日、テレビ西日本の独占インタビューに応じた。この１年の政治は、前首相の目にどう映っているのか？ “石破節”で振り返った。
“核保有”発言「プラスにならない」
まずは、官邸関係者が「日本は核を保有すべきだ」との趣旨の発言をしたことを巡り、核保有することは「日本にとって決してプラスにならない」との考えを示した。
安全保障を担当する官邸関係者が2025年12月18日、記者団に対し「日本は核を保有すべきだ」という趣旨の発言。木原稔官房長官は「非核三原則を政策上の方針として堅持している」と会見で強調した。
「我が国が核を持てばNPT（核拡散防止条約）やIAEA（国際原子力機関）からも出て行かないといけなくなる。何よりも日本のエネルギーを支えている原子力政策が成り立たなくなる」。その上で石破氏は「核を持つことの安全保障上の意味は否定しない」としつつも「日本にとって決してプラスにならない」と述べた。
参議院選挙 自民党が歴史的大敗
7月に行われた第27回参議院議員通常選挙。最大の争点となった物価高対策で、消費税の減税を声高に訴えた野党に対し、2万円の現金給付を訴えた自民党は、歴史的な大敗を喫した。
「『消費税を撤廃せよ』とかね『食料品に限って半額にせよ』とかね、そういうご主張は、もう本当に2、3秒でパーンとできちゃうんだな。でも、耳触りのよいことばかり言っていると国は傾く。その辺をご理解頂く説得力が、私に十分なかったってことかな」
中でも躍進を見せたのが『日本人ファースト』を掲げ、福岡選挙区でも議席を獲得した参政党だ。
党を率いる神谷宗幣代表について「問題点を指摘するのは上手だ」と評した石破氏。その上で、参政党が掲げた『日本人ファースト』が受け入れられた背景について語った。
「やはり日本の経済的な地位がだんだんと低下をしてきた。コストカット型の経済でね、経済伸びない」
「じゃなくて、もう1度、日本が経済を、人口が減る中にあって上げていくってことが必要」
備蓄米を放出 “令和のコメ騒動”
そして日本の食卓を揺るがした“令和のコメ騒動”。二転三転する政策。コメの価格高騰を受け、石破政権では備蓄米を放出し、コメの増産に舵を切った。
しかし、その後誕生した高市政権では一転、事実上の減反政策ともいわれる“需要に応じた生産”へと見直されていく。
「なぜ増産に舵を切るのかという説明はかなり丁寧にしてきました。ですから、これを変えるってことであるならば『いやいや前の政権の言っていることは間違いでした。なぜならば…』というお話しをして頂かないと。増産に舵を切る、備蓄の体制を見直すということが大事じゃないかと私は今でも思っている」
政府が自治体に推奨する『おこめ券』の配布を巡り、経費や事務作業の観点から地方の不満が続出したことについては…。
「食糧をどうしますか、ということを真面目に考えた時に、さぁ自治体の負担を増やして『おこめ券』っていうと全体的にどうなんだろうねって」
「食糧の自給も安全保障だということを考えた時に、その場しのぎの政策っていうのは、これから先は慎まなきゃいかんのじゃないですかね」
「高市発言」による日中関係の悪化
さらにインバウンドをはじめ福岡にも大きな影響をもたらしている問題。
▼高市早苗首相（衆院予算委員会･11月7日）「台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのために、それがやはり戦艦を使ってそして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても『存立危機事態』になり得る」
台湾有事を巡る高市首相の答弁で冷え込んでいる日中関係。
「私が政権をお預かりした1年間、トランプ関税でアメリカとは本当にいろんな交渉を、赤沢さんを中心にやってきた、或いは関西万博もやっていた、多くの国から首脳がやってくる。中国は主に政党、与党ね、自民党、公明党で一生懸命努力をしてきた。やはりそれが途絶えるってのはいいことじゃないですよね」
中国軍による自衛隊への『レーダー照射問題』や2026年1月に控える中国への返還で国内の飼育数がゼロとなる『パンダ問題』など、方々に尾を引く高市首相の発言に防衛大臣も務めた石破氏は…
「首脳同士の信頼感、信頼感までいかなくても偶発的なそういう紛争というかな、そういうのを避けるための努力は併せてしていかなければならんのだと、私はそう思ってきましたがね」
「保守の本質は寛容さにある」
首相在任中は“らしさ”を失っていたとも評される石破氏。最後に、政治家としての自身のポリシーともいえる言葉を残した。
「私は保守の本質って寛容さだと思っているんですよ。批判とか意見とかしない方が楽ですけどね。けれども、だったら代議士でいる意味ないよねっていう。常に原点に戻んなきゃいかんと思っています」
（テレビ西日本）
