物価高が続く昨今、昼食に500円はなかなか難しい時代だ。しかし富山県内には、今なお「ワンコインランチ」を守り続けるお店がある。地域とのきずなが支える、その秘密に迫った。

長年の愛情がつまった家庭の味「和味」

上市町に今年5月オープンした「お食事処 和味」。店の看板には「ワンコインランチ始めました」の文字が大きく掲げられている。
「お待たせいたしました。これが煮込みハンバーグです」


山田知子さんが出してくれたのは、なんと煮込みハンバーグが入った税込み500円の日替わりランチ。長年東京・八王子で居酒屋を営んでいた山田さんは、上市町への移住を機にこのお店をオープンした。

「お米が高いじゃないですか、それがあれなんですけども、自分でいろいろ工夫して、お値段は大丈夫なように。一番考えているのは、働いている人は、昼食べる時間がないですよね。それを短くしたい、とにかくはやく出せる。500円ならね、これがいいって思って」

アジフライやカレーライスなど日替わりで楽しめるランチには、お味噌汁も小鉢もついてくる。生姜焼きも評判だという。山田さんは「地元の人が気楽に、あそこに行ってね、食べながら話すと楽しいと言ってもらえるお店にできたらいいな」と話す。

午後3時からは居酒屋に変わり、手作りのつまみも楽しめるそうだ。

半世紀以上愛される「邦楽」のまち中華


砺波市にもワンコインランチを提供するお店がある。砺波駅近くの「中華料理 邦楽」は、50年以上前から営む地元で愛され続ける中華料理店だ。先代のお母さんの味を引き継ぎ、現在は姉妹でお店を切り盛りしている。

「はい、どうぞ」

出てきたのは、キャベツや白菜、キクラゲなど具材たっぷりの五目そばと、県産のお米を使ったたまごチャーハン。さらに小鉢とコーヒーがついて、驚きの税込み500円だ。
「薄味のほうが、お客さんが最後まで食べるがに楽やって言われるから、薄味でやっています」と三女の河合育子さん。


創業以来、味も値段も変わっていないというチャーハンは、中華鍋でパラパラに炒められ、ラーメンとの相性も抜群だ。
ワンコイン価格を維持できる秘訣は、長い歴史のなかで培った地域との絆にあるようだ。
「野菜とか持ってきてくれるお客さんもいらっしゃるしね。みんな助け合ってやっていけるんですよ、長いことやっているとね」

地域の絆が支えるワンコインの価値
食材のすべてが値上がりする中で、味を変えず価格を維持できる背景には、地域の人々との強いつながりがあることがわかる。長年培われた信頼関係と、「お客さんを一番に」という想いが、この価格を可能にしているのだ。

「美味しかったって言って帰ってかれるときが一番うれしいですよね」という言葉には、店主たちの真心がこめられている。財布にも胃袋にも優しいワンコインランチには、地域を思う優しさがつまっているのだ。
(富山テレビ放送)
