最終戦で劇的なJ2残留を決めたカターレ富山。安堵とともに、J2で戦う上での課題も見えた1年でもあった。

来シーズン、チームはどこへ向かうのか。この重要なオフシーズンにチームをどう強化していくのか。カターレ富山の左伴繁雄社長に話を聞いた。

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「安堵4割、責任6割」。劇的残留の裏で感じていたこと

――今シーズンは劇的なJ2残留となりました。どんな風に振り返りますか。

左伴: 「劇的」とか「奇跡の」とか言われているんですけど、どう感じているかと言ったら、やっぱり良かったなという安堵の気持ちが4割ぐらいです。

残りの6割は、ここまで引っ張ってしまった責任の方を考えている方が大きいですね。負けがこんでこうなってしまったのですから、めでたいと手放しで喜んではいけないという自制の方が強いです。

――シーズンを通して見えてきた課題は何でしょうか。

左伴: シーズン途中で安達監督に交代して攻撃力を強化し、人もボールも動くサッカーをやりました。経営者の責任ですが、20試合あれば物にできると思ったものが、ラスト3試合までなかなかできなかった。

ただ、残り3試合で完成形に近い形でできたというところでは、順位は評価できませんが、やってきたことが間違ってなかったということについては意味のある年だったと思います。

J2に上がったばかりで落ちそうなクラブだから行かない、というJ1の選手が多かったのですが、ここでスタートラインに一斉につけたし、最後の方のサッカーを選手も代理人も見てくれているはずなので、ブランド力という点では少し上がっていると思います。

「FWは目玉に」。得点力不足解消へ、強力ストライカーを。

――来シーズンに向けて、補強のポイントはどんなところだと考えてらっしゃいますか。

左伴: もう圧倒的に得点が少なかったので。モビリティのあるサッカーをやるとは言っても、この選手にボールを預ければ1点入るな、枠に飛ばすな、というストライカーの獲得に今年の夏は振られまくったんです。

ただあの時は落ちそうなクラブだったので。今度はスタートラインについているので、良い選手がいればピンポイントで取りにいく、強力な選手を取りにいくというのは言っています。フォワードは目玉にしていきたいと思っています。

――若手の育成も重視されていますか。

左伴: それは宿命ですね。今のクラブのサイズだと、やはり1億円、2億円の外国人とか、J1のエース格というのは絶対にとれません。ですから、若い子たちが主力になっていくというサイクルは続けていかないといけないですね。

過去最高の強化費6億円。狙うは「勝ち点60」

選手を補強する上で重要なのがクラブの経営面。カターレは毎年著しい成長を遂げている。

今年度は先月下旬に発表された第三四半期までの決算で過去最高の12億4100万円を記録。今年度通期では5年前の3倍近くとなる14億円規模まで業績が伸びる見通しだ。これは昨年度のJ2各クラブの業績に当てはめると11~12位に該当する。

左伴: 私が来たときは年間5億円だったのが、14億円くらいまで今年度末いきそうです。ただ、ほかのJ2のクラブと比べるとまだ真ん中以下。会社としてはすごい勢いで伸びてきてはいますが、業界として競争比較するとまだまだ中位よりも下です。

ですから、良い選手をとるというのも大事なんですけども、コストパフォーマンスを上げるために若い子たちに主力になってもらう。いわゆる「育成型のクラブ」であるという姿勢は絶対崩しちゃいけないと思いますね。

――その上で、来季のチーム強化費はどのようにお考えですか。

左伴: 増やします。今年は5億円ほどまで人件費とチームの運営費がとれてきて、来年は6億円の大台に乗っけようかなと。

「勝ち点効率」という考え方があって、勝ち点1あたりにいくらかけるかという指標です。仮に1点あたり1000万円だとして、強化費が6億円だと勝ち点60になります。勝ち点60点だとJ2の順位でベスト10に入る。そのくらいは狙っていかないと。

今年は1桁順位と言っていたのに、5億円を割り付けて勝ち点1点あたり1000万円を軽く超えるような、効率の悪いチーム運営をさせてしまったので、来年は6億円のラインは強化部に与えたいと考えています。

百年構想リーグは「潜在一隅のチャンス」

来シーズン、Jリーグは「秋春制」への移行に向けて、2月から6月の約半年間は通常のリーグ戦とは異なる特別大会「百年構想リーグ」を開催する。

左伴: 財力が相対的に低いクラブにとっては、潜在一隅のチャンスだと思っています。昇降格がないので色々なトライができます。

小さいクラブには、若くて出番に恵まれない、伸びしろのある選手がいっぱいいる。百年構想リーグのなかでトライアルで使っていけるというのは、かなり大きな追い風になると思います。若手を主力化していくことに注力したい。ピッチに出ている11人の平均年齢をいかに下げるかということを考えたいですね。百年構想リーグはすごく良いレギュレーションです。

あるべき目標は「もう一つ上のカテゴリーに行くこと」

そして来年8月、通常のリーグ戦が開幕する。

――来季の目標、そしてクラブが目指すべき場所についてお聞かせください。

左伴: 富山県にあるJクラブのあるべき目標というのは、このカテゴリー(J2)にいることじゃないんですよね。もう一つ上のカテゴリー(J1)に行くっていうことなんです。

それが何年かかるかっていうのは話は別にして、そこに視座を置いて、来シーズンも戦っていくっていうことを胸に刻むことがとっても大事だと思います。

カターレは1月には新チームが始動し、中旬からは高知県でキャンプを行う。そして2月、約半年間の百年構想リーグが開幕する。

J2とJ3の40クラブが地域ごとに4つのブロックに分かれるこの大会で、カターレは金沢や新潟、高知や今治などが入る「WEST-A」ブロックで戦うことが決まった。

過去最高の強化費を投じ、若手の突き上げを促しながら、悲願のJ1昇格へ。カターレ富山の新たな挑戦が始まる。

(富山テレビ放送)

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