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スマートフォンは、私たちの生活を大きく変えた。電話から情報端末へ、そして日常のインフラへ。その進化の裏側には、目に見えない「素材技術」の革新があった。薄型で軽量化した端末、ほぼ縁のない全画面表示、防水・耐衝撃性の向上。リサイクルなど環境に配慮した設計。そして、折りたためる、丸められる・伸ばせるというフレキシブルなディスプレイも視野に入ってきた。


目覚ましい革新を支えてきたのは、液晶ディスプレイを保護するシール剤、衝撃を吸収する発泡体、そして分解・再利用にも対応する両面テープ──。スマートフォンの進化の歴史をたどると、そこには積水化学グループが積み重ねてきた素材開発の軌跡が重なる。3つの事業領域の開発・営業担当者に話を聞き、「手のひらの中の最先端」を支える取り組みに迫った。



スマートフォン黎明期――新たなライフスタイルを支えた素材たち


スマートフォンの原型が生まれたのは、2000年代前半のことだ。日本では、携帯電話が急速に進化し、カラー液晶・カメラ・おサイフケータイといった独自機能が次々に登場。いわゆる「ガラケー(フィーチャーフォン)」全盛期だ。一方、欧米ではBlackBerryやNokiaなど、PDAやPCベースの端末が流行し、「情報を持ち歩く」という新しいライフスタイルがグローバルに広がり始めていた。


そして2007年――アップル社が開発したiPhoneの登場により、世界に「スマートフォン」市場が生まれる。指先で画面をなぞるだけで操作できる静電容量式タッチパネルが主流になり、それまで物理ボタンが中心だった携帯電話から、画面全体が操作領域となるフルスクリーン端末へと進化した。


「そのメガトレンドの裏側には、積水化学の微粒子や接着剤の技術があります。液晶ディスプレイの高精細化と薄型化を実現するうえで欠かせない存在になったのです」と、ファインケミカル事業部の根本英利佳は語る。


積水化学の「ミクロパール」は微細な導電性粒子としてACF(異方性導電フィルム)用途に使われ、「フォトレックS」は液晶パネルのシール剤(封止剤)として液晶の漏れを防ぎ、ディスプレイの耐久性と信頼性を高めてきた。



高機能プラスチックスカンパニー 

ファインケミカル事業部 ファインケミカル営業所 根本英利佳


「私が入社したのは、液晶ディスプレイ用のシール剤の需要が急成長していた時期でした。2000年代初期は韓国メーカーとのやり取りが中心で、サンプルを持ってソウルに飛び、打ち合わせを終えて夜に帰国。その日のうちに配合を調整し、翌朝には再び持っていく――といった開発秘話があったと聞きます。スピード対応とカスタマイズの積み重ねが、いまの信頼につながっているのです」


2001年に開発がスタートした「フォトレックS」は、迅速な対応力を背景に韓国の液晶メーカーでの採用を実現。2003年以降は世界の主要ディスプレイメーカーへと広がり、2013年度には液晶ディスプレイ用UVシール剤で世界シェア70%以上、スマートフォン分野では90%以上という地位を築いた。


その技術は、後継の「フォトレックB」にも受け継がれている。「細く塗れる精密さと柔らかく仕上がる両方の性質を兼ね備えた接着剤で、これはディスプレイの狭額縁化にも貢献するものです」と根本。


「スマートフォンの狭額縁化とは、ディスプレイの縁が細くなるということ。ディスプレイのほぼ全面を占めることで、動画や写真の迫力が増し、デザインも洗練されます。通常の接着剤では塗布時に広がりやすく、縁を細く設計するのが難しいのですが、「フォトレックB」はその広がりを抑えながら高い接着性能を保つことができます。これにより、ディスプレイの縁を限界まで細くし、表示領域をより広く見せることが可能になりました」


「フォトレックB」の柔軟性を支えているのが、アクリルとウレタンのバランスだ。特にアクリルの知見はファインケミカル事業部が長年培ってきた分野であり、そこに柔軟性と伸長性に優れるウレタン技術を融合することで生まれた。


「900%以上にも伸びる柔軟性は他の追随を許さない技術です」と、根本は強調した。


「ディスプレイが進化するたびに、求められる精度は高まる一方です。お客様が求めるものを少しでも先に察知し、先回りして開発する――それが私たちのカルチャーです」


そして、成熟期へ。軽く、強くを支えた「見えない素材」の進化


2010年代、スマートフォンは一気に成熟期を迎える。


Androidの普及とともに、有機EL(OLED)ディスプレイとLTE(4G)通信が登場し、画面はより鮮やかに、通信はより速くなった。有機ELは自ら光るディスプレイで、バックライトが不要なため端末を薄く・軽くできる。LTEは動画や写真を高速でやり取りできる通信技術。この両立が、スマートフォンを「持ち歩く情報端末」から「手のひらのパートナー」へと進化させた。


その進化を支えるべく、素材技術も新たなステージへ。防水・耐衝撃・軽量化など、構造を支える「見えない素材」の革新が進む。



高機能プラスチックスカンパニー

フォーム事業部 フォーム営業所 徐 瑜振


「私が担当しているのはフォーム材『XLIM(エクスリム)』です。一番の特徴は、薄くても強いということ。厚さはわずか0.04ミリ、つまり髪の毛よりも細いのに、しっかりと衝撃を吸収できるんです」と語るのは、フォーム事業部の徐。


フォーム材とは、プラスチックの中に気泡を分散させた多孔質構造の素材のこと。柔らかく、軽く、そして防水性や断熱性にも優れる。なかでも「XLIM」は、業界最薄レベルの厚さと高い衝撃吸収性を両立させた、フォーム事業部を代表する高機能素材だ。



スマートフォンが普及期に入った頃、課題となっていたのはガラスパネルの割れやすさだった。そのため、ディスプレイの裏面にはフォーム材を貼り、衝撃を吸収する緩衝用途に力を発揮していたという。徐が、その特性を掘り下げて説明する。


「衝撃の緩衝用途は、設計の工夫や素材の改良によって少しずつ減ってきました。ただ、防水性能の重要性が高まる中で、フォーム材の役割はむしろ強まっていると感じています。フォーム材、つまり発泡体と聞くと、水を吸う柔らかい素材を想像されるかもしれません。しかし、私たちが開発した発泡体は独立気泡構造といって、水を通さない仕組み。つまり“水を吸わないスポンジ”のような素材なんです」


この特性を活かして、スマートフォンのコネクター周辺や小さな部品のまわりをドーナツ状に囲うように貼ることで、水の侵入を防ぐ。外からは見えないが、確かに機能する――「XLIM」は、スマートフォンを守る「陰の主役」だ。


しなやかさと強度を両立し、0.04ミリという極薄でもしっかり発泡できるのは、長年積み重ねてきた材料選定と発泡技術のノウハウの賜物である。



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テープ製造部 デバイス材料技術開発課 副主任技術員 堀尾明史


多賀工場でテープの開発に臨む堀尾明史も、スマートフォンを支える素材の一端を担っている。


「スマートフォンを見たときに、テープなんてどこに使われているの? と思う方も多いかもしれません。でも実は、この中にはテープがたくさん使われているんです」


そう語りながら、堀尾は端末を手に取って説明する。タッチパネルを貼り合わせる透明両面テープ、カバーガラスと筐体を固定する高強度テープ、そして内部の基板やカメラ、センサーを支える微細パーツ固定用テープ――。日常の中で私たちが目にすることはないが、テープはスマートフォンの骨格を支える重要な素材だ。





先に根本が触れた「狭額縁化」も注力してきたテーマの一つ、と堀尾が続ける。


「画面をできるだけ大きく見せるためには、縁の部分を極限まで細くする必要があります。その限られたスペースの中で、しっかり接着しながらも目立たないように。テープの厚さ・粘着力・貼りやすさ、そのすべてが試される開発テーマなんです」


近年は、リユースやリペアに対応した“剥がせるテープ”の開発にも取り組んでいる、と堀尾が触れた。


「一度貼ったパネルを、熱や光などのトリガーで粘着力を下げて再利用できるようにする。そんなニーズが2020年ごろから出てきていました。先を読んで少しずつ開発を進めていたことで、実際の採用にすぐ応えられたんです」


堀尾は先を読む開発姿勢を「ものづくりのカルチャーとして受け継いでいる」と語った。スマートフォンのライフサイクルが長期化し、リユースやリペアの需要が高まる中、堀尾が手がけるテープもまた、「貼る」から「剥がす」までを見据えた設計へ。もはや単なる接着剤ではなく、固定する・守る・再生させる――多彩な機能を担う素材になっているのだ。

未来への挑戦―フォルダブルから、その先へ


進化するスマートフォンは、いま“かたち”そのものを変えようとしている。画面を折りたためるフォルダブルモデル、くるりと巻けるローラブルディスプレイ――。デバイスとしての自由度が広がるほど、素材に求められる要件も高度化していく。


「フォルダブルのように可動部分が増えると、より柔軟で、しかも高精度な接着が必要になります。私たちの『フォトレックB』は、まさにそのために進化した素材です」と、根本は先を見据える。


デバイスそのものの形が変わる時代。狭額縁や曲面といった複雑なデザインにも正確に塗布できるシール剤は、今後さらに存在感を増していくだろう。


フォーム事業部では、柔軟性と強度という相反する性能の両立を目指し、新製品の開発に取り組んでいる。徐は「5G/6G時代を見据えた高周波対応も重要なテーマです」と語る。


「高周波通信では、素材が電波をどれだけ通すかが性能を左右します。内部に空気を多く含むフォーム材は電波透過性に優れ、通信特性の向上にも貢献できる。まさにフォーム材の特性を活かせる分野です。」


また、サステナビリティの観点からも新しい挑戦が始まっている。再利用やリペア対応の粘着材、植物由来のバイオテープなど、環境負荷を抑える製品開発だ。


「リユース用途で触れた“貼って、剥がして、また使う”という機能設計はもちろん、原料から見直してCO₂排出を減らすバイオベース素材の活用にも取り組んでいます」と堀尾が説明する。


ディスプレイの形が変わり、通信が進化しても、素材は端末のいたるところで力を発揮し、次世代デバイスの可能性を広げていく。


「クライアントの要望を先んじて読み、余裕を持って開発を進める――それが次代の優位性になる」と、堀尾は、変化の激しい市場の中で「先を読み続ける姿勢」を語る。


「重要顧客とはお互いの開発ロードマップを共有する関係を築いています。2〜3年先の技術動向を見据えて、私たちの開発テーマを提案します」と、根本も続ける。


そして徐は言う。「お客様と直接会って話を聞くことが、すべての出発点です。圧力センサーで性能を数字で示すなど、伝わるプレゼンテーションを突き詰めてきました」


素材をつくることを超えて、人と技術、そして社会をつなぐ。手のひらから飛び出したスマートフォンは、かたちも、あり方も、さらに自由に変わっていくだろう。


メンバーは、そのデバイスから広がる時代を見据え、「次の生活をどう支えるか」という問いに向き合っている。素材の技術は、見えないところで、静かに、そして確かに未来をつくっていく。



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