産婦人科医が思春期の中学生に行う「性教育」

11月25日、愛媛県松山市内の中学校で、産婦人科の医師が性教育の講演を行った。思春期の子供たちへ、正しい知識を伝えようとする県内の取り組みを取材した。

生理の不安解消へプロゴルファー東尾理子さんも活動

東尾理子さん:
「子供が3人いるんですけど、3人とも不妊治療で授かっています。20代、30代でゴルフをやっている時が、自分が妊娠できる適齢期だなんていうことを後から知った」

10月下旬、プロゴルファーの東尾さんは松山市の愛光中学・高等学校で、女子生徒に生理用ナプキンを贈った。子供たちが生理の不安を解消し安心して過ごせるようにと、これまで全国32カ所の学校で実施している。

ナプキンは専用のボックスに詰められ、学校のトイレに設置。ボックスには、生理に関する18種類のメッセージが添えられている。生理前の不調は病院で相談ができること。つらい生理痛は、治療ができること。どれも体を大切にするために必要な知識。

生徒:
「何日間生理が来なかったら気を付けた方がいいよ、みたいなのを書いていて、ためになりました」

メッセージの監修には、活動に賛同する松山市の医療機関が携わっている。

生理用ナプキンの贈呈
生理用ナプキンの贈呈
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小中学生に「性教育」を伝える産婦人科医

松山市の「つばきウイメンズクリニック」に勤務する鵜久森夏世医師。産婦人科医として、愛媛県内の小中学生に「性教育」を伝えている。

鵜久森夏世医師:
「性教育をすると、性行為をする年齢が早くなるんじゃないかとか、乱れるんじゃないかとか、寝た子を起こすなみたいなことをいう人は、ひと昔前は(言っていた)。もはやみんなスマホを持ったこの時代に、寝た子なんかいない。妊娠とか避妊とか性感染症、そういう狭義の性教育っていうふうにみなさん思いがちなんですけど、性教育ってそうではなくて、どうやって幸せに生きていくか。well being(ウェル ビーイング)っていうんですけど、そういうものを含めた包括的な性教育を目標にしているので」

どうやって幸せに生きていくか
どうやって幸せに生きていくか

「情報があふれる時代に正しい知識を」きっかけは子供の誕生

鵜久森医師が、「性教育」に取り組み始めたきっかけは子供の誕生。

鵜久森医師:
「息子が生まれてから、自分と違う性の子供が生まれたのがきっかけで、やはり子供にきちんとした知識を教えたいけど(男の子のことわからないから、何も自分は教育も受けてないし)どうやって教えていったらいいんだろうかっていうのがきっかけで」

情報があふれる時代に正しい知識を届けたいと、自身のクリニックから児童クラブ、学校へと活動の幅を広げてきた鵜久森医師。病院の仕事とは別に、2018年から県内の小中学校などで50回以上講演活動をしてきた。

小中学校などで50回以上講演活動をしてきた
小中学校などで50回以上講演活動をしてきた

「性的同意」とはなにか?

11月25日、久谷中学校の3年生に伝えたのは「性的同意」について。

鵜久森医師:
「性行為の同意を自分で判断できる年齢って決まってて、刑法で。何歳かっていうと16歳なんです。同意っていうのは明確なイエスとイエスです。大切な人と大切な関係であれば、ちゃんと話して、嫌なときは嫌って言っていいんです」

月経や射精など成長に伴う体の変化から、妊娠の仕組みや避妊の方法など、一歩踏み込んだ性の正しい知識を、産婦人科医としてあいまいな表現ではなく明確に伝えた。

あいまいな表現ではなく明確に伝えた
あいまいな表現ではなく明確に伝えた

『SOSを出せることが「自立」への一歩』

中学生への講演の中で、鵜久森医師は16歳の高校1年生で妊娠したAさんの事例を紹介した。

鵜久森医師:
「(妊娠がわかって)ようやく決心してお金集めて病院に行ったら、22週すぎてるので中絶できないと言われた。誰かに相談しようと思いながら時間がたって、結局相談できないまま出産に至った。一番私がみなさんにお伝えしたいのは、誰かに助けてって言ってほしい。困ったら友達、先生、まわりの大人、助けてって言ってほしいなと思います」

『SOSを出せることが「自立」への一歩』そのためにも正しい知識を持つことが大切と話します。

正しい知識を持つことが大切
正しい知識を持つことが大切

「ここまで内容が深い性教育は初めて」

生徒:
「ここまで内容が深いのは(性教育は)初めてでした。自分も相手もどう思っているかを、しっかり考えて行動するのが大切だと思いました」

生徒:
「お互いが満足になるような恋愛をしていきたいと思いました」

学年主任・灘野裕子先生:
「生徒たちはあと4か月で卒業。様々な高校、または就職という中で、正しい知識、そして幸せな人生という形で性教育を行っています。(性教育は)保健体育でやっているが、実際に合意であったり、何か起こった時に自分の身を守る方法はきょうの方が具体的で、生徒たちには大変有効だったと思います」

「自分も相手もどう思っているか」
「自分も相手もどう思っているか」

恋愛して、出産して…幸せな人生を願う「性教育」

鵜久森医師:
「お付き合いして恋愛することとか、妊娠出産すること、家族が増えることっていいことじゃないですか。人と人が対等であることも性教育の中に入る」

子供たちの幸せな人生を願って。産婦人科医として性教育の大切さを伝え続ける。

講演:
「幸せに生きるために性について学びましょう、ということなんです」

「性の知識は自分の心と体を守る鎧や盾」
「性の知識は自分の心と体を守る鎧や盾」
テレビ愛媛
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