こちらは椎葉村の焼畑の様子です。
高千穂町や椎葉村など、県北山間部の5つの町村が世界農業遺産に認定されて10年となりました。
何世代にも渡り、継承されてきた独自性のある伝統的な農法と文化などが一体となったこの地域では、この10年で農業の担い手不足がさらに進みました。
椎葉村で焼畑を続けている団体は、交流人口を増やし伝統農法を残していこうと取り組んでいます。
椎葉村尾向地区の焼畑。
木を伐採した後の山の斜面を焼いて害虫や病気を抑え、ソバなどを育てます。
20年以上かけて森林に戻す循環型の農業は縄文時代から続くとされ、世界農業遺産の審査でも評価されました。
(焼畑蕎麦苦楽部 椎葉勝代表)
「科学的根拠がない時代に、ちゃんとそういうサイクルしてきた先人たちはすごかった」
焼畑を継承している、焼畑蕎麦苦楽部。
14日に世界農業遺産10周年を記念したイベントを開きました。
参加したのは、メンバーや地元の人など約60人で交流を深めました。
代表の椎葉勝さんは、焼畑の伝承には地元の担い手に限らず、幅広い人の関わりが欠かせないと考えています。
イベントが行われたこの施設は、子供たちが将来帰りたいと思う場所や人々の交流の拠点になればと、ことし4月に完成しました。
イベントには、熊本県からの登山客が飛び入りで参加しました。
(熊本県の登山客)
「体験できるなら、焼畑にも参加したいと思いました。」
焼畑に興味を持ち、移住した人もいます。
鹿児島県から9年前に移住した佐々木さつきさんは、火入れや加工食品作りなどに携わり、今では欠かせないメンバーの1人です。
(鹿児島県から移住 佐々木さつきさん)
「世界農業遺産になったことで、色々学ぶ機会がありまして、そういうのを継承することに自分も関わっていきたいと思っております」
椎葉代表の息子の竜也さんは焼畑を学び、将来は継承することを考えています。
(椎葉竜也さん)
「継承はしっかりしていかないといけない。これから僕もですし、息子の代もそうなっていけばいいなと思います」
世界農業遺産の認定で、以前より多くの人が焼畑に関わるようになりました。
(焼畑蕎麦苦楽部 椎葉勝代表)
「(お客さん、移住者などが)一緒にやりましょう、ああだこうだと。そういう知恵をいただいてるので、こちらも元気をもらえます。結構やる気出てきてますね。みんな」
人口減少が避けられない中、交流を深めながら焼畑への理解者を増やしていくことが、これからのカギとなっています。
また民間企業では、世界農業遺産認定を機に商品開発が広がりを見せています。
10月に開かれた世界農業遺産10周年記念シンポジウムで展示された商品。
こちらは山椒を使ったバターサンド。
山椒はハウス食品グループ本社やしいたけ農家などが栽培しています。
山椒はしいたけと収穫時期が異なり、新たな収入源として期待されています。
(杉本商店 杉本和英社長)
「ちゃんと成り立つ農業のモデルができると、俺もやってみようかとなるんじゃないかと思うので、その一つの提案として伝えればと思います」
山椒のバターサンドは今後、商品化される予定です。