自民党は16日、天才的プログラマーとして知られる台湾のオードリー・タン氏を招き、ディープフェイク(偽情報)対策について議論した。
現在は台湾のサイバー特命大使を務めるタン氏は、初代のデジタル担当相を務めていた当時、マスク不足対策となるアプリを立ち上げるなどICT(情報通信技術)を駆使して台湾での新型コロナウイルス感染拡大防止に成功した立役者として知られ、現在は主にデジタル民主主義を推進する活動に取り組んでいる。
タン氏は、台湾でのディープフェイク対策の一例として、インターネット広告に登場する人物本人による承認をデジタル署名で求めるなど広告主側に確認の徹底を義務づけ、著名人になりすました詐欺広告や偽情報を掲載したプラットフォーマー(=SNSなどの情報サービス事業者)に対して賠償責任を連帯して負わせるといった法律を制定したことで、被害が激減したことなどを明かした。
自民党でディープフェイク対策合同プロジェクトチームの座長を務める平将明前デジタル相は、タン氏が紹介した台湾での先進事例について「日本でもできるのか、法制上どういう論点があるのか、早急に政府で検討するよう私からも指示した」と述べ、ディープフェイク対策を急ぐ考えを示した。
AI(人工知能)の性能が飛躍的に向上したことで、テキスト・画像・動画・音声など様々なコンテンツを自律的に生成できる技術が急速に普及するとともに日増しに高性能化が進んでいることに伴い、著名人になりすました詐欺や偽情報による被害は急増していて、自民党は今後、複数回の議論を重ねたうえで、年明けには提言を取りまとめる方針だ。