地域福祉を担うボランティアの民生委員。高齢者の見守りや子どもの安全確保などを行うが、全国的に「なり手不足」と「高齢化」が深刻な課題となっている。「なり手不足」の要因には、孤独死などへの「心理的負担」や「時代の変化」もあることが、取材から見えてきた。地域住民の安心な生活を支える上で不可欠な存在であり、行政による支援と時代に合った在り方の模索が求められている。

民生委員とは

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民生委員・児童委員は法律に基づき地域住民が安心して生活できるよう地域福祉を担う、厚生労働省から委嘱されたボランティアだ。非常勤の地方公務員で、無報酬だが活動費が支給され、3年の任期で活動する。

民生委員として16年目を迎えた宮崎市の押川慶子さん(74)。

民生委員の定数は市町村ごとに決められており、宮崎市では27地区で定数741人に対し667人と、74人が不足している(※充足率90%)。押川さんが所属する中央西地区でも、定数31人に対し2人が不足している。

高齢者の見守り活動

高齢者宅を訪問する押川慶子さん。毎月1回、5人の見守りを担当している。

民生委員 押川慶子さん:
こんにちは、民生委員の押川です。お元気ですか?昨日は寒かったですね。

世間話から体調や困っていることがないかの確認まで、寄り添いながら会話を続ける。

訪問先の住人:
時々覗いていただくと、こっちも心強い。台風なんかの時、お電話いただいたり、いらっしゃるだけで違う。

民生委員 押川慶子さん:
お年寄りの方たちは外に出づらくなるので、その点、訪問して、いろいろお話をさせていただいたりとか健康状態を確認して、社会福祉協議会に報告するみたいな感じでやっている。地域で見守っていくというのはとても大切なことだと思う。

児童の下校見守りも

続いて移動してきたのは、車の通行量が多い交差点だ。4人の民生員が交差点に立ち、子どもたちが安全に下校できるよう見守っていた。

中には、42歳で民生委員になり、36年目を迎える人もいる。

民生委員36年目 中窪民子さん:
70歳ぐらいまで皆さん働かれるので、それが終わってからじゃないと、こういうボランティアのお仕事には就いていただけない。どうしても高齢化になってしまう。

深刻な「なり手不足」

また、「なり手不足」の要因の一つとして、心理的な負担を指摘する声もある。

押川さんは「自分が見守っているところの方たちが何かあったときに、自分の責任になるんじゃないかとか、実際、孤独死の人たちもいらっしゃいましたし、そういう責任感というところで足踏みされている方がいらっしゃるんじゃないかなと思う」と話す。

月に1回、地区の民生委員が集まり、行政から高齢者への伝達事項などを共有する定例会議が開かれる。今回は、新しく民生員になった4人も出席した。

新任民生委員(50代):
地域に助けていただいたので、恩返しかなと思って。できることをしようと思って。

新任民生委員(70代):
仕事の負担になるかなと思ってはいるんですけど、自分のできる範囲で背伸びをしないでやっていければいいかな。

人々の生活スタイルが多様化し、地域の在り方が変わってきている時代だからこそ、地域をつなぐ民生員の役割は重要性を増している。

中窪さんは「(昔の時代の)向こう三軒両隣みんなで助け合うということができていれば、もしかしたら民生委員はいらないかもしれない。(今の時代は)そういうことができないから民生委員は必要かなと思う」と話す。

宮崎県の民生委員充足率

地域にとってかけがえのない存在・役割の民生委員。

宮崎県の民生委員の充足率右肩下がりで、2025年度は89.6%と、初めて90%を割り過去最低となった。

宮崎県によると、26市町村の民生員の定数2614人に対して2342人と、272人が不足している。平均年齢も70.0歳と、過去最高となっている。

今後、時代に合った民生委員の在り方を模索していく必要があるだろう。

(テレビ宮崎)

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