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「パナソニックのAI」と聞いて、思い浮かぶものはありますか? おそらく、多くの方が感じたのは「何をやっているのだろう?」かもしれません。実はくらしの身近なところから、社会を支えるインフラ、さらには未来のテクノロジーを生み出す研究・開発現場まで、パナソニックグループのAIは想像を超える広がりで活躍を始めています。今回は、そんなパナソニックグループのAI開発の最前線にいるパナソニック ホールディングス AI技術者の小塚 和紀にインタビュー。AI開発の舞台裏と、その“すごさ”の秘密に迫ります。

パナソニックのAIは、こんな場所でも使われている


――「パナソニックのAI」と言っても、一般の方にはなかなかイメージが湧きにくいと思うのですが、実はいろいろな場所で使われているんですよね?


小塚:そうです。パナソニックグループは、AIを誰もが安心して使える技術として、くらしの中に自然に取り入れることを目指しています。専門知識がない人でも、直感的に便利に使えること。それが、私たちのAI開発の基本姿勢です。例えば、最新の冷蔵庫に搭載されている「AIカメラ」もその一つ。庫内の食材をAIカメラが認識して、ストック管理を自動化することで食品ロス削減に貢献しています。


パナソニック ホールディングス AI技術者の小塚 和紀


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――食材を無駄なく使えるのはうれしいですね! でも、パナソニックグループのAIは家電だけではないんですよね?


小塚:おっしゃる通りです。皆さんが利用する空港の出帰国手続を行う顔認証ゲート。あの「顔認証技術」もパナソニックグループのAI技術が支えていますし、住宅の「間取り図」から建築費用を自動で積算するシステムなど、専門的なビジネスの現場でも活躍しています。さらには、未来の電子部品を作るための新素材開発の実験をAIが自動で行い、開発効率を25倍にした、なんていう研究開発の現場もあるんですよ。


国内空港に導入している顔認証ゲート


(左)AIが間取り図を解析し、建材数量と見積りを自動化。従来の手作業を効率化し、時間を大幅短縮 /(右)AIを活用した自動実験が可能なスマートラボ自動実験室


くらしからビジネス、研究開発の現場までさまざまな場面で当社がAIを活用できているのは、ユーザーが直接使える形でAIをいち早く製品に取り入れてきた歴史があるからです。例えば、カメラを向けるだけで顔を認識してピントを合わせる機能や、好みのテレビ番組を予測して自動で録画予約してくれる機能などもその一部です。カメラや家電などの小さな機器にAIを搭載するには、限られた処理能力や電力の中で、予測できない動きにも柔軟に対応できるような高度な設計が必要となります。私たちは、そうした制約の中でも高い性能と安全性を両立させる技術を積み重ねてきました。



――家電から空港のセキュリティ、そしてモノづくりの根幹まで……小さな機器に込めた知恵と工夫が、今のAIの可能性を広げているのですね! でも、それだけ多様なAIを開発するとなると、ものすごく大変なのではないですか?


小塚:これだけ多様な領域でAIを活用しようとすると、当然ながら開発は簡単ではありません。それぞれの現場に求められる精度や安全性、使いやすさはまったく違うからです。

冷蔵庫を例にすると、AIに「トマト」を覚えさせるには、人間が何万枚もの画像に手作業で正解のラベルを貼る「アノテーション」が必要となります。

これを空港のシステム、住宅のシステム……と個別にやっていたら、時間もコストもいくらあっても足りません。まさに「AI開発のボトルネック」でした。


【ミニ解説】アノテーションとは?

AIに学習させるための「教師データ」を作る作業のこと。例えば、画像に写っているものに対して「これはトマト」「これはピーマン」と、人間が一つひとつ正解のラベルを付けていく地道な作業を指します。AI開発の工程において、多くの時間とコストが費やされる部分です。

開発を“爆速”にするパナソニックグループの世界レベル技術 「Scalable AI」


――その壁を、どうやって乗り越えたのでしょうか?


小塚:私たちは、AI開発の「仕組み」そのものを進化させる道を選びました。その思想が「Scalable AI(スケーラブルAI)」です。そして、この思想から、AI開発の常識を変える世界レベルの技術を生みだしました。


【ミニ解説】Scalable AI(スケーラブルAI)とは?

パナソニックが掲げるAI開発のコンセプトの一つ。優れたAIを一つ作るだけでなく、それをさまざまな製品やサービスに素早く、効率的に展開(スケール)させていくための技術や仕組みのこと。「あらゆるお客様に素早くAIをお届けする」ことを目指しています。




――世界レベル、ですか!


小塚:例えば、先ほどの面倒なアノテーション作業を劇的に変えた技術が「HIPIE(ヒピエ)」です。これは、AI分野で最も権威のある国際会議の一つに採択されており、AIにテキストでお願いするだけで、画像の中から自動で対象物を見つけ出し、複雑な形状に対してもラベルを貼ってくれます。この技術のすごいところは、事前に学習していないような細かな違いも指示できる点です。例えば、ただ「トマト」と教えるだけでなく、「腐りかけのトマト」や「パックに入ったミニトマト」「四つ切りのキャベツ」といった、個別のアノテーションが必要だったケースでも、テキストで指示するだけでAIが正確に認識してくれるんです。


この技術のおかげで、従来、手作業で60秒かかっていた作業が、わずか5秒になりました。さらに進化した「SegLLM(セグエルエルエム)」という技術では、物体名に加えて、より複雑な位置関係についての指示も可能です。AIと“会話”するように、「一番左のトマトだけ、ヘタの部分は除いて」といった、人間同士のようなやり取りでAIを賢くできるようになったのです。



――飛躍的なスピードアップですね。AIと“会話”して賢くする……。まるでSFの世界ですね。


小塚:さらに、「そもそも学習させるための“お手本画像”が世の中にない」という、もっと難しい問題もあります。というのも、パナソニックの事業は、お客様のくらしに密着したものや、特定の業務に特化した現場が多いため、学習に使えるような大量の画像データが世の中に存在しないケースが多いのです。


――お手本がないと、AIも学びようがないですよね。


小塚:その常識をも覆したのが「Diffusion-KTO」という画像を生成する技術です。これもまた世界トップレベルの会議で認められた技術で、AIが作った画像に対して、人間が「この画像はいいね」「これはちょっと違うな」と評価するだけで、AIが私たちの意図をくみ取り、どんどん欲しい画像を自動で生成してくれます。例えば、冷蔵庫の中に様々な種類の野菜がきれいに並んでいる画像が欲しい、と思っても、そんな都合の良い写真はなかなかありません。しかしこの技術を使えば、お手本ゼロから、AI自身が私たちのために最適な学習データを作り出してくれるのです。


ただ賢いだけじゃない。“誠実”で“信頼”できるAI 「Responsible AI」


――パナソニックグループには世界レベルの開発スピードと技術力があることはよく分かりました。一方で、それだけ強力なAIだからこそ、社会で使う上での「安全性」や「信頼性」も重要になりますね。


小塚:その通りです。だからこそ、私たちはもう一つの柱である「Responsible AI(レスポンシブルAI)」を何よりも重視しています。実は、AIは事前に学習していない現象に出くわすと、知ったかぶりをしてしまうことがあります。ですから、「知らないことに対しては知らない」と判断してくれるような仕組みを組み込むなど、人が安心して使えるような技術がとても重要なのです。


【ミニ解説】Responsible AI(レスポンシブルAI)とは?

「責任あるAI」という意味。AIが公平・公正であることや、プライバシーを守ること、判断の透明性を確保することなど、人が安心して使えるAIを実現するためのパナソニックグループの思想や取り組み。「あらゆるお客様の信頼にこたえる」ことを目指しています。

https://tech-ai.panasonic.com/jp/responsible-ai/




――AIがリアルな空間で移動するような場面、例えば工場の搬送ロボットが予期せぬ障害物に出会った時などに「知ったかぶり」で突き進んでしまったら、大事故につながりかねませんね。


小塚:その通りです。そこで私たちは、AIが「知らないこと」を「知らない」と正直に判断できる技術を開発しました。それが「FlowEneDet」です。この技術は、AIが自分の知識の範囲を理解し、学習していない未知の物体を検知すると「これは知らないものです」と教えてくれます。これにより、予期せぬ事態においても、AIが暴走することなく安全に停止したり、人に助けを求めたりといった行動が可能になるのです。


――なるほど、「知らない」と判断できることが、信頼につながるのですね。


小塚:はい。そして、信頼性だけでなく、リアルな現場で求められる「速さ」と「賢さ」を両立させる技術が「SparseVLM(スパースVLM)」です。AIは賢くしようとすればするほど、判断に時間がかかるという弱点がありました。そこでこの技術は、AIが人間のように本当に重要な情報だけに“注目”する仕組みを取り入れました。これにより、「賢さ」と「速さ」という、相反する性能の両立を実現し、高速かつ正確な判断を可能にしたのです。


「SparseVLM」と既存のスパース化の比較(採択論文より引用)

パナソニックグループが描く、AIと共に歩む未来


――「Scalable」という世界レベルの技術力で開発を加速させ、「Responsible」という誠実な姿勢で社会からの信頼に応える。この両輪があるからこそ、さまざまな場所でパナソニックのAIが活躍できるのですね。


小塚:はい。私たちの強みは、AIというソフトウェアだけでなく、AIをモノづくりに活用し、さらにそのAI技術を製品という“ハードウェア”に落とし込んできた点にあります。例えば、熟練技術者を凌駕するAIを構築して、製品設計を支援する「設計AI」もその一つです。


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設計AIをシェーバーの開発に活用した事例


――AIを作るだけでなく、AIを使ってモノづくりもしている。まさに、モノづくりの会社ならではの総合力ですね。そうした強みをAIという切り口でグループ全体に広げ、お客様への価値提供につなげていこうという動きもあるのでしょうか。


小塚:はい、まさにその方向性を打ち出したのが今年発表された「Panasonic Go」です。これは、AIを全社のビジネス変革やお客様への提供価値向上につなげていくための、いわばグループ全体の重要な取り組みです。私たちが今日お話ししてきたような「Scalable AI」や「Responsible AI」の思想に基づく技術開発は、この「Panasonic Go」の実現を下支えするものだと考えています。


私がかつてAIの最先端を学ぶためにアメリカの大学へ留学した際、トップレベルの技術者たちと触れ合う中で、「データを創る」という発想に出合いました。それは、目指すべき領域を先に定め、その未来に必要な技術や情報を集めていくという考え方です。この斬新な視点は、今も私の中で生き続けています。技術の進化は日々加速していて、昨日の技術が明日にはもう古くなる。そんな世界では、目の前の現象にとらわれるのではなく、実現すべき未来を見据えることが欠かせません。私たちの技術は、グループ全体の生産性向上や、お客様のお困りごとを解決する新たなソリューション・サービスの創出に貢献しています。その大きな流れを技術の力で加速させていくのが、私たちの使命です。技術と経営が両輪となって、パナソニックグループならではのAIの価値を社会にお届けしていきたいと考えています。


【ミニ解説】Panasonic Goとは?

パナソニックが長年培ってきた知見、技術、そしてハードウェアを最大限に生かし、AIを活用したビジネスへの変革を推進するグローバルな企業成長イニシアティブ。事業運営、顧客への価値提供、そして収益創出のあり方を根本から変革し、2035年までにソリューション事業を含むハードウェア・ソフトウェア事業において、AIを活用した事業をグループ売上全体の約30%の規模に拡大することを目指しています。

https://news.panasonic.com/jp/press/jn250108-5


長年にわたり、くらしに寄り添う製品の中でAI技術を磨き上げてきた歴史。それが今、空港のセキュリティシステムや未来の新素材開発といった、社会の根幹を支えるスケールの大きな技術へとつながっています。「Scalable」な開発力と「Responsible」な誠実さ、そしてモノづくりを通して培われたAIを製品やハードウェアに落とし込む実装力。これら全て揃えて、パナソニックグループならではのAIを実現していきます。


◆パナソニックグループのオウンドコミュニケーションメディア Panasonic Stories

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グループの考え方や取り組み、挑戦をタイムリーかつ分かりやすくお伝えします。

※今回の取り組みはこちらでも紹介しています

https://news.panasonic.com/jp/stories/18063







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