依然として深刻な後継ぎ問題です。全国で半数以上の企業が後継者不在となるなか、事業者が実名を公表して後継ぎを募集する新しい取り組みが注目されています。その名も「オープンネーム」です。
◆経営者の高齢化により差し迫る「事業」の後継者探しで注目…実名・顔出しの「オープンネーム」
(日本政策金融公庫担当者)
「川西さんは長年ウナギに真剣に向き合ってきた」
11月、岡山市で行われた事業承継のマッチングイベント。会場には後継者を探す事業者の紹介動画が流れます。
仕事に対するこだわりや承継することになった経緯。それぞれの思いがリアルタイムで配信され全国で約130人が視聴しました。
イベントは事業者が実名を公表して後継者を探す、「オープンネーム」と呼ばれる形式。後継者探しは匿名で行うことが多く、実名、顔出しでの募集は少ないといいます。
(日本政策金融公庫岡山支店 神田敦弘事業統轄)
「取引先や従業員に(会社の状況を)知られたくない経営者もいる。ただ経営者の高齢化が進み差し迫った状態。成約率を高めたい、イメージが違ったということがないように早く進めたいというニーズが出てきた」
深刻な問題となっている経営者の高齢化。実名で思いを伝えることでミスマッチを防ぎ、素早い承継につなげることが目的です。
◆コンテナ建築に人生をかけてきた倉敷市の73歳男性経営者 承継の理由は年齢による「気力」の低下
参加した経営者の一人、藤原洋志さん(73)。
(藤原洋志さん)
「私は営業が苦手で経営も苦手だがデザインだけは自信がある」
藤原さんは倉敷市である建築物のデザインを手掛ける会社を営んでいます。
(ヒロデザインラボ 藤原洋志社長)
「これがコンテナ。窓は壁を抜きサッシをはめ込む」
こちらの白い建物、もともとは海上輸送に使われる大きなコンテナでした。藤原さんはコンテナ建築を12年、多い時で年に10件ほど手掛けてきたといいます。
しかし…
(ヒロデザインラボ 藤原洋志社長)
「はっきり言って気力が続かなくなった。朝9時から集中して昼まで休憩なしでできていたが、30分15分でしんどくなる」
70歳を超え、維持することが難しくなった集中力。コンテナ建築業界自体は上り調子なことから誰かに事業を引き継いでもらいたいと考えています。
(ヒロデザインラボ 藤原洋志社長)
「要望に応じてラフプランを起こす。これが完成予想パース」
◆専門的な能力がなくても自分のデザインを「AIに学習させて」引き継げる仕組みづくりに着手
しかし、デザインの仕事は専門的な能力が必要というイメージから後継者側にもハードルが。藤原さんは自分が手掛けた100を超えるデザインや図面をAIに学習させて専門技術がなくても引き継げる仕組みを考えています。
イベントで流した動画でもこの仕組みをアピールした藤原さん。
(ヒロデザインラボの動画)
「平面図や立面図、パースとかあるのでこれを生成AIに学習させたらいいと思うんですよ。僕が今まで例えば1週間ぐらいかけてやってきたことが数時間でできる」
◆事業承継にスピード感求められる中「オープンネーム」は浸透するか
参加者の中で2人が興味を持ち、個別交流会に参加してくれました。
(ヒロデザインラボ 藤原洋志社長)
「興味は示してもらったがこれから。(顔出しで探す方が)いいと思う。(会社の)購入を考えている人も何も分からないのでは具体性がないから」
事業承継の新しい募集の形「オープンネーム」。経営者の高齢化が進み、承継にスピード感が求められる今、ニーズはますます高まっていきそうです。