今、関心の高い話題を詳しく解説する急上昇ニュースのコーナーです。「お客様は神様」か?カスタマーハラスメント、通称「カスハラ」を巡る最新の状況を森岡記者が取材しました。
(森岡紗衣記者)
「今や社会問題化している「カスハラ」。客からの不当な要求のほか暴言や暴行に発展するケースもあります」
こちらが実際のカスハラの事例です。
・長時間の電話
・大声での暴言を繰り返す
・殺すなどの発言による脅し
・インターネット上の投稿(従業員の氏名公開など)
(萩原渉キャスター)
「私もアルバイトをしていた時、この仕事をするようになってからもこれに近いようなことを経験したことがあり、精神的に追い詰められるので悪質ですよね」
(森下花音キャスター)
「悪質だと思うのですが、受け取る側によって変わってくると思っている。カスハラには明確な定義はあるのですか」
(森岡紗衣記者)
「実はカスハラ対策の難しいところは、法律上で明確な定義がないことです。そのため、何がカスハラに当たるのか客と接する現場では判断が難しいケースが多いんです。現状と先進的な自治体の取り組みを取材しました」
11月5日、岡山市で開かれた事業者向けのカスハラ対策セミナー。社会問題化するカスハラにどう向き合えばいいのか、真剣に耳を傾ける多くの参加者の姿がありました。
2025年6月の法改正により、事業主には、2026年秋から従業員をカスハラから守るため対策が義務化されます。違反した場合は行政からの勧告や公表の対象となります。
対応が急がれるなか、現場からはこんな声が。
(セミナーの参加者は…)
「(カスハラの)線引きがよく分からない」
「良かれと思って言ったことが、言い方でカスハラのように捉えてしまう」
「障害者が(カスハラの)つもりがないのに勘違いされていないかという不安もある。相互の勘違いもあるのでは」
「社員も若い人や年配の人もいるので、受け取る方の問題もある」
やはりカスハラの定義が明確になっていないことで、対応の難しさが浮き彫りに。
今、先行して取り組みを進めているのが岡山市です。市議会でカスハラの事例を明記した「カスハラ防止条例」の制定に向けて議論が進められています。2026年度からの施行を目指していて、実現すれば政令指定都市では初の事例です。
(岡山市議会特別委員会 高橋雄大委員長)
「サービスを提供する人もサービスを受ける人も双方が尊重される消費社会をつくっていくことが一番大事。そういう視点から議論している」
改正された法律では、事業主がカスハラから従業員を守ることに重きを置いているのに対し、市議会で検討される条例では、客や就業者にもスポットを当てようとしています。社会全体でカスハラをなくしていくことを目標としているのです。
カスハラは行政の現場でも大きな問題です。岡山市が2024年12月から2025年1月にかけて職員を対象に行ったアンケートでは、回答した職員のうち約5割が「カスハラを受けたことがあるまたは見たことがある」と回答。最も多かったのが、「侮辱、大声、脅迫などの乱暴な言動」で次いで「長時間の拘束」でした。
2025年8月、市は職員に対するカスハラの基本方針を示しました。ただ公務員という立場上、業種の特性に合った対応となるよう注意を払っていると言います。
(岡山市人事課 中田裕一副主査)
「市民対応の原則としては、まずは丁寧に話を聞くこと。クレームなどですぐにカスタマーハラスメントと決めつけないよう(職員に)伝えている。悪質なカスハラを受け続けて職員が病んでしまうことがないように職員を守っていくための基本方針」
(森岡紗衣記者)
「カスハラを巡っては、これまで具体例がなかったことが課題でしたが、いま岡山市議会で話し合われている新しい条例の中にはこの具体例が明記され、13の項目が実際にカスハラに当たるとしています。その一方で、条例として「罰則」は設けない方針を示していますが、悪質なものは刑法に触れる可能性があると説明しています」
(森下花音キャスター)
「このように具体的にカスハラの例が示されていると、客の側もこれに該当しないようにしようという、自分を守ることにつながるのではないかと」
(萩原渉キャスター)
「何が適切な主張で何がカスハラなのかは難しいところがあるかと思いますが、こういう事例が「カスハラ」ですよと示すことが第一歩になると思うし、市民に知ってもらうというのはすごく大きな一歩ですね」
(森岡紗衣記者)
「全国規模で見ると、東京都・北海道・群馬県で既に条例が定められています。特に早かったのが2025年4月に全国で初めて制定した東京都。岡山市の条例も東京都の条例を参考に議論が進められています」
(森下花音キャスター)
「カスハラ条例は東京だけではなく全国的な動きになっているのですね」
(森岡紗衣記者)
「今、三重県では、より踏み込んだ罰則付きのカスハラ防止条例も検討されています。これは全国で初めての事例ですが、今後、厳しい条例が増えていく可能性があります。岡山市議会特別委員会の高橋雄大委員長も「条例の制定はゴールではなくカスハラ対策のスタート」と話していて、一人一人がカスハラへの意識を高め、社会全体で対策を考えていく必要がありそうです」