企業が新たな場所や都市へと進出する場合、重要な要素の1つとなるのがオフィスの立地や規模などの条件面です。こうした中、企業の誘致に力を入れる静岡県静岡市ではこのオフィスをめぐり悩みを抱えています。
静岡市・難波喬司 市長（2025年10月）：
いま静岡市としてほしいのはオフィス
2025年10月。
静岡市の難波喬司 市長が指摘したのが市内のオフィス不足。
静岡市・難波喬司 市長（2025年10月）：
新しいオフィスがほとんど供給されていない。それがいま静岡市経済の活性化の大きな課題になっている
静岡市は深刻な人口減少に歯止めをかけるべく、雇用の創出や産業の活性化に向けて企業誘致に力を入れていますが、オフィス不足はその障壁となりかねません。
一体なぜオフィスが足りないのか？
11月28日。
静岡市の大学や専門学校ではデジタル人材の発掘に向けて首都圏のIT企業や団体が学生と意見を交わしました。
大学生：
人間味があるサービスをつくりたいと思っていて、その人の個性が垣間見えるところをサービスに落とし込みたい
主催した静岡市は、学生たちの潜在能力を肌で感じてもらうことで今後の企業誘致につなげたい考えです。
ドライビングフォース・田村麻紀 会長：
社員が通勤しやすいというところで駅の近くがいいと思うが、大学内のインキュベーション施設などをもし企業に貸してくれるのであればそういうところに置いてもよい
しかし…
鈴木櫻子 記者：
JR静岡駅からほど近い中心市街地です。ご覧のように古い雑居ビルが立ち並び、大型のオフィスビルは少ない印象です。
葵区紺屋町にあるビルを拠点に、ゲームアプリの開発を手がけるテックチャオ。
明るい印象のオフィスですが…
テックチャオ・五十嵐平馬 社長：
彼がデスクトップで机のスペースがめちゃくちゃ狭い
社員：
結構狭い。ここまで置いてしまうとこの辺くらいしか置けない。昼休憩はこうやってスペース確保している
床面積は約45坪で社員は27人。
仕事柄、どうしても多くのパソコンやモニターが必要なため社内は手狭な状況です。
社員：
広さがいまは欲しいかなという感じ
社員：
オフィスの中に社員食堂があり、自動販売機があるとより充実して業務に取り組める
目標は数年以内に社員数を倍増させること。
そのためにも新たなオフィスを必要としています。
テックチャオ・五十嵐平馬 社長：
人員を収容するオフィスは人をどんどん採用していく上で非常に重要なところだと思う。次はこの倍のオフィスを借りたいと不動産業者に相談しているが、なかなかそのレベルの大きな箱は空かないと言われている
通勤の利便性を考え、静岡駅から徒歩圏内でIT企業らしく先進的な空間を求めていますが、今のところイメージに合致する物件は見つかっていません。
テックチャオ・五十嵐平馬 社長：
とりあえず直近はリモートワークを併用し乗り切ろうとは思うが、現場の一体感に欠けてしまうので、何とかタイミングよく乗り換えて広いオフィスに成長していきたい
例えば、JR静岡駅の目の前にある地下2階・地上25建ての葵タワーも約60あるオフィスの稼働率はほぼ100%です。
企業誘致を進める静岡市は…。
静岡市産業基盤強化本部・恒川文栄 係長：
良好な物件は空くとすぐに埋まってしまう状況もあり、リストとしてたくさん企業に提供できない状況
静岡市によると現在、市内への進出を検討する企業は10社ほどある一方、市が把握している中心部の空きオフィスは約40件。
さらに、その9割が20～40坪の物件で60坪以上となるとわずか1～2件しかありません。
静岡市産業基盤強化本部・恒川文栄 係長：
会社によってはそのタイミングで進出したい時に（オフィスが）ないとなると他の都市を探そうとなるので、そのタイミングを逸しないようにはしたい
また、静岡駅周辺では北口の再開発事業の一環として商業施設やオフィスなどが入る大型の複合ビルの建設計画が進められていますが、資材や人件費の高騰などから270億円を見込んでいた総事業費が大きく上振れすることになり、当初の計画より完成が2年後ろ倒しとなる見通しです。
企業が進出意欲を高め、人と仕事が集まる街をどのように作っていくのか…官民一体となった戦略がいま、求められています。
