日本の伝統的な加工食品・干物。その製造企業の倒産が2025年は急増しています。
干物作りが盛んな静岡県沼津市の店からは苦悩の声が聞かれました。
村田彬 記者:
それではいただきます。身がふっくらとしていて噛むほどに脂の甘さを感じ、とても美味しいです
干物の生産量が日本トップクラスを誇る沼津市。
「五代目小松 ひものや」では遠赤外線でじっくりと焼き上げた7種類の干物をセレクトできるコース料理が人気です。
日本の伝統的な加工食品・干物。
その製造企業の倒産が2025年は急増しています。
東京商工リサーチによると干物や塩漬けを製造する企業の倒産は2023年は3件、2024年は1件でしたが、2025年は9月までですでに6件に達しています。
倒産原因は6件のうち5件が販売不振。
物価高に伴う製造コストの増加や原料不足なども追い打ちをかけているといいます。
こちらの和食店では…。
ヤマカ水産・小松寛 社長:
(2026年1月から)サバはどうしても値上げをしなくてはならなくて、かなり大幅な値上げをする予定
外国産の魚は円安や輸送費の高騰もあり仕入れ値が2割から3割ほど上昇。
これまでは企業努力で何とか値段を据え置いてきましたが、一部の干物については値上げに踏み切る決断をしました。
ヤマカ水産・小松寛 社長:
値上げをしないと赤字になる部分については値上げをせざるを得ない。慎重に見極めつつと思っている。最高に美味しい干物を用意しているので干物を忘れないで食べてもらいたい
創業52年の老舗「ひもの屋沼津ふなと」。
職人が1枚1枚手作業で仕上げた約25種類を常に販売しています。
ひもの屋沼津ふなと・渡邉一浩 社長:
お客さんからの相談が何件もあるのが「お歳暮を頼もうとしたら頼んでいた店がもうやっていない」と、今年だけで数件来ている。寂しさよりも仕方がないというのは、やりようがない部分もあるので
製造が盛んな沼津市でも干物を扱う店が減少しているといいます。
年々高騰する魚の仕入れ価格。
こちらの店では国内で水揚げされた魚で作る干物を2024年と比べ5%から10%ほど値上げしました。
また、脂乗りが抜群、ノルウェー産のサバで作る人気の干物は…。
ひもの屋沼津ふなと・渡邉一浩 社長:
異常というか異常を超えている値段になる。通常の今までの原料仕入(価格)の倍になっている。あり得ない状況。このままでいったら例えば販売価格1200円になる
渡邉さんによるとノルウェー政府が資源管理のため今期の漁獲枠を3割程度減らしたことで仕入れ価格が高騰。
販売価格はこの3年、600円で据え置いてきましたが、2026年には値上げをせざるを得ない状況です。
この時期相次ぐのがお歳暮用商品の注文ですが、サバの仕入れを制限しているためサンマやホッケをラインナップに加えて対応しています。
ひもの屋沼津ふなと・渡邉一浩 社長:
どうやって沼津の大きな産業の歴史をみんなで引き継いでいくのか考えていかないと、これは個々の努力でしかない。本当に美味しい干物を作り上げていくことが一番大事なことだと思う
日本伝統の食文化を守りその美味しさを後世に伝えていくために。
試行錯誤する日々が続きます。