愛知県みよし市が、東海地方で初となる「無痛分娩」の費用補助をスタートします。妊婦から賛同の声があがっていますが、そのメリットやデメリットについて産婦人科医に聞きました。
■1回あたり上限10万円…みよし市が補助制度をスタート
みよし市が2026年1月1日から始める、無痛分娩への補助制度。市内の医療機関で無痛分娩で出産した市民に対して、1回あたり10万円を上限に費用を補助します。
みよし市の小山祐市長:
「痛みとか不安を理由に、出産や妊娠をためらう方たちの不安を和らげることが一番の目的」

東京都などでは、既に無痛分娩の費用を助成する制度が始まっていますが、東海3県の自治体では初めての試みです。
■無痛分娩とはどのようなものなのか
小牧市で年間およそ400件の無痛分娩を行っている「ミナミクリニック」を訪ねました。
ミナミクリニックの南宏次郎院長:
「分娩時の陣痛の痛みを緩和する。意識もしっかりしていますし、赤ちゃんの泣き声もしっかり聞こえます」
無痛分娩は、背骨の間から針を刺し、カテーテルという細い管から麻酔薬を注入して痛みを和らげるものです。無痛と書きますが、痛みが全くなくなるものではありません。

ミナミクリニックでは、事前に無痛分娩と決めておく計画無痛ではなく、「オンデマンド無痛」を採用しています。
南院長:
「陣痛が始まって分娩が進行していく中で、『麻酔したい』と言われれば、背中からここで麻酔を入れます」

陣痛が始まってから、どうしても痛みが辛くなった場合に、妊婦が希望をすれば麻酔を開始するもので、いつお産が始まるか分からないため、医師やスタッフは24時間体制です。
このクリニックの無痛分娩の費用負担は8万円ですが、およそ4割が無痛を選択しているといいます。
母親ら:
「落ち着いてお産できるので、そこがメリットかなと」
「やっぱり自然分娩が怖いというのもあって、痛みがないんだったら、そっちの方がいいかなと。(みよし市の補助金は)すごくうらやましい」
南院長:
「どうしても我慢できないほどつらい痛みになった場合に、痛みを和らげてくれるすべがあるんだと、妊婦さんがそう思えることは、一つ救いになるのかなと」
■合併症のリスクも…知識・経験もつスタッフ確保に課題も
一方で、南院長はそのリスクにも目を向けるべきだと指摘します。
南院長:
「純粋にデメリットは、薬を使うことによる妊婦さんの色々な合併症ですね」

重篤なものも含め、様々な合併症を引き起こすリスクがあり、特に麻酔による合併症には細心の注意が必要で、麻酔中は常に血圧などのバイタルチェックや、麻酔の効いている範囲の確認をしています。
南院長:
「いい位置にカテーテルがあればいいんですけれども、これが誤って髄液の中に入ってしまうと、髄液の中に直接大量の麻酔が投与されることになりますので、これはすごく危ない合併症につながる」

さらに、24時間体制で麻酔に対応するため、十分な知識や技術を持った医師やスタッフの確保にも課題があるといいます。
南院長:
「妊婦さんの選択肢が増えたことはいいことだとは思いますけれど、一朝一夕で麻酔の管理は身に付くものではありませんから。(準備不足のまま)一気に広まることは、結構危ないのではないかなという危惧はあります」
