星野リゾートが手掛けるリゾートホテル『リゾナーレ下関』が、2025年12月11日、関門海峡をのぞむ山口・下関市にオープンする。開業を目前に様々な準備が大詰めを迎える中、支配人から新人まで、全ホテルスタッフが臨む“試練の1日”に密着した。

全室“海峡ビュー” 室内に“砂浜”も

12月11日にオープンする『リゾナーレ下関』。星野リゾートが九州・山口地区では初となるリゾートホテルだ。

この記事の画像(24枚)

『リゾナーレ下関』のコンセプトは“海峡のデザイナーズホテル”。地上12階建てで、9タイプ全187室すべてから関門海峡の景色を楽しめる“海峡ビュー”となっている。

11階のスイートルームには、砂浜を再現した一角もあり、プライベートビーチにいるような空間が特徴だ。

また、屋外プールは、すぐ目の前に広がる関門海峡と一体となるような感覚を味わえる。

全スタッフ緊張 “社内試泊”

関門エリアの新たなランドマークとして期待される『リゾナーレ下関』。開業まで2週間となった11月20日、全ホテルスタッフが緊張する“社内試泊”が行われた。

全国にある星野リゾートのホテル支配人や各部門の責任者が実際に宿泊し、サービス内容の確認や最終チェックを行うというもの。

客は系列ホテルの責任者など
客は系列ホテルの責任者など

細かなチェックが入るため、新しいホテルをスタートさせるスタッフにとっては、開業前最大の試練の場だ。その中に準備に奔走する若きホテルマンがいた。

「順番参りましたらご案内しますので」。接客にあたる『リゾナーレ下関』のスタッフ、新原祐生さん。新原さんは、北九州市出身で入社8年目。

沖縄の系列ホテルで経験を積み、「幼いころから訪れていた下関の魅力を伝えたい。そして、自分の中で1度、開業に挑戦してみたい」と会社に異動希望を出し、新ホテルの立ち上げメンバーに加わった。

午前11時30分。ユニフォームを着替えて現れた新原さんの仕事は、この日、キッチンからスタート。

ビュッフェの準備にあたるが、その量はなんと、約100人分のカプレーゼ作りから。冷菜3種類を3時間でそれぞれ100人分ずつ、1人で仕込んでいく。

実は、星野リゾートでは、調理に加え、フロント業務、客室の清掃など、ほとんどの業務に専門スタッフはおらず、スタッフ全員で様々な業務を分担して行う。

そのメリットは、「各部署が最も忙しいピークタイムに、人手が足りない部署の人員を補い合うことができること」。加えて、「レストランで話して知ったお客様の情報を、次は、フロント担当の際も生かせるのが最も強み。常にお客様に寄り添えるから」と新原さんは語る。

様々な客層想定し徹底チェック

午後3時。いよいよ全国から集まる星野リゾートの関係者を迎える時間だ。宿泊者は、外国人観光客や家族連れなど、様々な客層を想定して“おもてなし”について細かくチェックされる。ホテル業界のプロは、どういう点を見ているのか?

「ウェルカム感であったり、言葉遣いであったり、実は手の指し示しなども少し注意しながら見ていました」と語るのは、『リゾナーレ八ヶ岳』の高橋伶央総支配人。また、『リゾナーレ大阪』の松田直子総支配人は、「混雑してきた時に、どのようにお客様にお声掛けするかなど、チェックしていけたら」と噂通りの厳しさだ。

時間通りに100人分の仕込みを終えた新原さん。次は、フロント業務につく。「お待ちしておりました。それではご案内いたします」。笑顔で客の目を見て挨拶する新原さん。「不安そうなお客様や些細な反応をしっかり察知して、お客様にお声掛けをこちらからしていく」と積極的な気持ちでフロントに立とうと決めていた。

食事は『ふぐ』料理を存分に

滞在のメインイベントとも言うべき食事は、2つのダイニングからセレクト可能。いずれもこの地域ならではの『ふぐ料理』が味わえる。

ビュッフェスタイルのダイニングでは、『ふぐのから揚げ』やブイヤベースなど、1コーナー丸ごと『フグづくし』。他のホテルにはない地元特産メニューが特徴だ。

この日訪れた“厳しいお客”からは、料理の評価は高かったものの、設備面で1つ、注文が付いた。

「メニューがたくさんあるが、お子様には配膳されている台が高い。子供達は、自分で料理を取りたがるので、楽しく子供が食べられるように踏み台とか用意したほうがいいのでは?」と『星野リゾート』の予約インターフェース・イールドマネジメント担当の小林亜紀子さんが意見を寄せた。こうした実践的な指摘やアドバイスが寄せられるのが、この“社内試泊”の利点でもある。

午後7時30分。『海響館講座』を前に、新原さんがフグの人形を並べていく。ホテルの隣にある水族館『海響館』で飼育されているフグを詳しく知ってもらおうと、新原さんが2か月にわたって準備してきたアクティビティだ。

宿泊者は、もちろん無料で参加できる。「ホテルだけではなく下関全体を観光場所として盛り上げていけるような、滞在を通じて下関体験を私たちは提供したい」と『リゾナーレ下関』の清水りぼん支配人は、地域と連携したホテル作りをアピールする。

実際に新原さんの海峡館講座を観た『リゾナーレ』マーケティングブランド担当の葛西由貴さんは、「子どもだけに向けたアクティビティだと、どうしても大人が退屈してしまうが、大人も知的好奇心が膨らむ内容なので、現時点での評価としてはかなり良い」と高評価。新原さんも「手応えとしては80%ぐらい」とほっと胸をなでおろす。

ホテル内の施設はもちろん、提供される料理やアクティビティなど、開業準備も大詰めとなった『リゾナーレ下関』。緊張の“社内試泊”を終え、これからオープン本番に向けた最終チェックの日々が続く。

地域活性化に向け、関門海峡に面したエリア全体の魅力向上のため基本計画を策定し、官民一体で取り組んでいる下関市。その中核である『リゾナーレ下関』へのオープンは、待ち望んだ観光客の増加と地域への経済的波及効果が期待されている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。