特殊詐欺被害の拡大が止まりません。
その手口はどんどん巧妙化していて、被害額は過去最悪。
おなじみのセキュリティ対策が詐欺被害の入り口になることもあり、知っておかないと防ぐことが難しい現実があります。
脅威を増す、新たな詐欺の手口について緊急取材しました。
■身に覚えのない未払い金 クレジットカード会社の電話が警察官へつながれる
【“クレジットカードの管理会社”を名乗る男】「こちらはですね日本指定信用情報機関。シミズと申します。オペレーターのシミズと申します」
記者にかかってきた1本の電話。
相手はクレジットカード情報を管理する会社のシミズと名乗り、記者におよそ24万円の未払いがあると話します。
身に覚えがないと伝えると…。
【“クレジットカードの管理会社”を名乗る男】「今後ローンや各種の手続きなどに影響が、でる可能性がある。それをブラックリストと呼ぶのですが。早急に福岡県警に被害届のご相談をすることをおすすめしています」
すぐに被害届を出すように促され、電話では警察官とされる相手との通話が始まりました。
【“警察官”を名乗る男】「福岡県警察本部のイノウエと申します。捜査二課ですね」
実はこれ、詐欺の電話で、相手は偽物の警察官。このように“警察官”を名乗る詐欺被害は急増していて、ことしの被害額は、およそ482億円に上っています。
電話を続けると…。
【“警察官”を名乗る男】「個人情報漏洩に関する刑事事件になりますので、これから正式な取り調べをさせていただきます。個人情報が周りの人から漏れている可能性も否めませんので、誰にも言わないようにしてください。家族や職場の人。取り調べの妨げになりますので」
記者に刑事責任が発生すると不安を煽り、その後、“取り調べ”と称してビデオ通話が始まることに。
■警視庁名乗る若い男 個人情報を提示するよう求める
そして顔を見せたのは若い男。「福岡県警」と話していましたが、着ていた制服には「警視庁」という文字が書かれています。
【“警察官”を名乗る男】「運転免許証かマイナンバーカードを、ZOOMのチャットで送ってもらって大丈夫ですか」
相手は個人情報を提示するよう求めてきましたが、記者であることを伝えると…。
(Q.関西テレビの記者です。)
【“警察官”を名乗る男】「もう一度いいですか?」
(Q.関西テレビの報道記者です。)
【“警察官”を名乗る男】「はい」
(Q.詐欺ではないですか?)
【“警察官”を名乗る男】「詐欺ではないですね」
詐欺ではないと主張したあと、ビデオ通話の画面は切られました。こうした詐欺の手口はどんどん巧妙化しています。
■不正アクセスを防ぐクリックが詐欺に悪用
パソコンやスマホを使っている時、「私はロボットではありません」という画面が出てきたことがありませんか?
ネットショッピングなどで不正アクセスを防ぐために求められます。
これを悪用した詐欺が「クリックフィックス」と呼ばれる手口。
「クリックフィックス」とは、セキュリティ認証のための操作と思って指示に従った結果、コンピューターウイルスに感染させられるというものです。
■被害の瞬間を再現 見た目は変化なしでも「パソコンの中身を全部盗られている」
取材班は、大阪市内にある専門学校で、被害にあう瞬間を再現してもらいました。
画面に表示される指示は『Windowsキー』と『R』を押して、『Ctrl』と『V』を押して、『Enter』を押すというものです。
指示通りに実行すると…
【OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校講師 前田美明さん】「黒い画面がちょっと出て消えちゃうだけなんです」
(Q.見た感じ何も起きていない?)
【OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校講師 前田美明さん】「そうです。ただ裏では動いていたりする」
見た目上は、パソコンの画面に変化はなし。
ただこの操作によって、悪意あるウイルスを自らの手でインストールしてしまい、クレジットカード情報やパソコンの位置情報などが、抜き取られる状態になってしまうといいます。
【OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校講師 前田美明さん】「パソコンの中身を全部盗られている可能性もあります。ユーザー側は何も感付かない。気付くのは厳しい」
ことし6月にこの被害に遭った千葉県の男性(40代)は、異変に気付かずに「パスワードが300回以上流出してしまった」と話します。
その後も「ロシアからパソコンにログインされたり、書いた覚えのない英語のメールが自分のアカウントから勝手に数百通送信されていた」といいます。
■「クリックフィックス」の対策は「被害や詐欺の攻撃を知っておくこと」と専門家
対策についてサイバーセキュリティーの専門家は…。
【株式会社ラック 仲上竜太さん】「自分でドアを開けてしまうような形で実行させるのが、『クリックフィックス』の手口です。一番できる防護策は、こういった被害や詐欺の攻撃を知っておくことが非常に大事」
■QRコードを悪用した詐欺 “返金コード”入力で相手に送金される被害も
さらに、詐欺の魔の手はこんなところにも…。
【記者リポート】「私たちの身近にあるQRコード。それを悪用した詐欺被害が増えています」
店での注文や決済など、日常生活で使うことが多い便利なQRコード。
しかし、不正なQRコードから偽サイトに誘導されたり、個人情報の入力を求められたりする事案が増えています。
10月には、京王電鉄にある電気通信大学の広告に“偽QRコード”のシールが貼られ、SNS上では“読み取ると正体不明のページに飛ばされた”などの投稿があり、大学側も注意喚起しています。
【電気通信大学HPより】「誤って読み込んでしまう危険性の高い、悪質な事例と考えます。十分ご注意ください」
また国民生活センターによると、ある男性がネットショッピングで服を買ったところ、業者から「在庫がなく返金します」とQRコードが送られてきました。
しかし読み取って指示された“返金コード(99980)”を入力したところ、勝手に9万9980円が相手に送金される被害に遭ったということです。
■ライブに行くと「全く同じチケット持っている人が3~4人」 チケットを偽造…新たな詐欺
また、こんな被害も…。
【詐欺被害に遭った20代女性】「ライブのチケットが手元になくて、SNSでチケット募集したんですけど、QRコードが載っていて、整理番号が書かれた画像が送られてきた」
東京都に住む女性は、去年アイドルのライブチケットを4500円で購入したところ、相手からQRコード付きのチケットが送られてきたといいます。
しかし…。
【詐欺被害に遭った20代女性】「現場に行ったんですけど、全く同じチケット持っている人が3、4人いて。そこで『詐欺だね』って気づいて発覚した」
チケットは“偽QRコード”が張り付けられていて、「そのチケットでは入場できなかった」といいます。
【詐欺被害に遭った20代女性】「(チケットが)送られてこないと詐欺だなと思うが、送られてきたので、全然詐欺と思わなくて…。こんな事して何になるんだろうと思いますね。わざわざQRコードを貼って、チケットを偽造しているんで…」
新たなテクノロジーやサービスを悪用する詐欺の脅威。
被害に遭わないために、私たちも知識をアップデートする必要があります。
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月1日放送)