再開発が進む大阪・梅田でタワーマンションの建設をめぐって、地域住民が困惑する事態になっている。一体何が起きているのだろうか。
■変わりゆく梅田 タワーマンション計画に住民困惑
大阪の中心地といえば梅田。今年、グラングリーン大阪の開業など大規模な開発が進み、梅田西側の魅力は上昇中だ。その一方で東側の「茶屋町」エリアでは、ある異変が起きている。
記者リポート:梅田ロフトの跡地です。看板などは全てとり外されていて周囲は寂しい印象です。
さらに取材を進めると、この周辺で困惑する住民の存在が明らかに…。
マンションの住人:マンションから出ていかなあかんような危険な話で…。絶対出ていきたくないここで死にたい。
マンションの住人:自分たちの家がなくなる毎日生きた心地がしないです。
長年住み慣れたマンションがなくなり、引っ越しを余儀なくされる?
変わりゆく「梅田エリア」で起きる異変を徹底取材した。

■「うめきた」エリアの発展と「茶屋町」エリアの変化
ことし3月、グラングリーン大阪が開業。かつては貨物駅があった梅田駅の西側だが、いまや通称「うめきた」エリアとしてにぎわいの拠点となっている。
一方、梅田駅の東側「茶屋町」エリアではある異変が起きてた。
記者リポート:今年5月に移転した梅田ロフトの跡地です。看板などはすべて外され、周囲は寂しい印象です。
かつて、おしゃれな若者の街として人気だった「茶屋町」。しかし、そのにぎわいの象徴だった「梅田ロフト」がことし5月に阪神百貨店の中へ移転した。さらに、10月にはユニクロの旗艦店も移転するなど、大型店舗の「閉店ラッシュ」が起きているのだ。

■ガチャガチャが目立つようになった梅田の一等地
その代わり、新たに目立つようになったのは…。
ジョーンズラングラサール 山口武さん:最近いわゆるゲーム、ガチャガチャが割と目につきますよね。こんな一等地にガチャガチャか…。
梅田の不動産事情に詳しい山口さんによると、茶屋町は「変化の途上」にあるのだ。
ジョーンズラングラサール 山口武さん:テナント・店舗のラインナップをみると、比較的たくさんの方が住んでいる郊外の商業施設に入ってそうな…ここまで大阪が歴史的に変化してきて、世界レベルでもかなり上位に。少しエリート層というとあれですけど、(そこに)向かっていく方向が望ましい。
実際、阪急阪神ホールディングスは「茶屋町」エリアにある新阪急ホテルを12月から取り壊すなど、2030年以降に東側一帯で大規模な再開発を行う予定だ。
ジョーンズラングラサール 山口武さん:これから色んな企業も、ワーカーも集まってくる。そういった方が集まってきたときの受け皿として、”住宅”が必要であり、望ましい。
山口さんは、「茶屋町に富裕層向けの住宅ができれば、梅田全体の魅力が向上する」と話す。
ジョーンズラングラサール 山口武さん:全体としての大阪がより良い地域イメージができれば、最終的には多くの市民・府民にとって、非常に誇らしい街になるんじゃないか。

■38年前から住む住民に突然の知らせ
さらに取材を進めると、実際に梅田で進行中のタワーマンション建設計画をめぐり、地域住民が困惑する事態が起きていることが分かった。
茶屋町のすぐそば「鶴野町」にある「コープ野村梅田」。築45年で400以上の部屋がある。ここに38年前から暮らす渡辺建治さん(83)。
(Q.まわりビルばっかりですね)
コープ野村梅田に住む 渡辺建治さん(83):ここが建った時は、大阪湾に船浮いてるの見えた。何もなかった、高いビル。
2カ月ほど前、大手不動産会社からある資料が届いた。
(Q.いきなりこれが?)
コープ野村梅田に住む 渡辺建治さん(83):家に届いた、びっくり仰天。何の話か分からへん。
資料には、きらびやかなタワーマンションのイメージ図。コープ野村梅田の各部屋を、時価のおよそ1.5倍で買い取ったうえで取り壊し、2034年に新たにタワーマンションを完成させる計画が提案されたのだ。

■「ここで死にたい」高齢住民の悲痛な叫び
コープ野村梅田に住む 渡辺建治さん(83):なんぼ高いお金をもらっても、ここを出てどこか買おうと思っても、そのお金では買えない。この周り(のマンションは)はもう高くなってるから。年いった人は絶対出ていきたくない。ここで死にたい。
渡辺さんは「住み慣れた場所での生活を奪われる不安は、お金に変えられない」と話す。
一方、不動産会社側は「コープ野村梅田が、古い耐震基準を元に建てられたため、いずれ建て替えなどが必要になる」と主張。引っ越し先の紹介も行い、新たにできるタワーマンションへの入居を希望すれば、優先的に購入できるようにするなど、「ルールにのっとった手続き」だと説明しているが…。
コープ野村梅田に住む 渡辺建治さん(83):(今は)共益費が安いから、みんな年金で暮らせる。一番上の部屋は22億円とか、一般の人が住めないようなマンションになる。
(Q.マンションが建て替わる2034年には…)
コープ野村梅田に住む 渡辺建治さん(83):生きてないやん。8年後やったら91歳になりますやん。

■急すぎる提案に対する住民の声
不動産会社側は提案から2カ月がたった、11月29日に計画を進めるか賛否を問う決議をとるよう求め、賛成が7割に満たなければ撤退する方針。
住民たちは、毎日のように集まっては対応策を話し合っている。
コープ野村梅田に住む 渡辺建治さん(83):こんな紙切れ一枚(議決書)で、出ていかなあかんなんて、おかしいやんな。今まで長いこと生きてきたけど、こんなんでやられるとは思ってなかった。
所有者の半数は部屋を貸し出すなど、住まいとして利用していないことから、売却に賛成する可能性が高いのが実情。不安を抱く住民からは「提案が急すぎる」という声が相次いだ。
住民(70代):(開発計画が持ち上がることは)理解はするけど、高齢者がたくさん住んでて、こういう問題に疎い人がたくさんいるのに、何日までに判断せいというのは無理な話。
住民(70代):ここ目の前にイオンがある。秒でいける。私は体が悪い。ここなら安心して買い物行って、気分が悪くても帰ってこられる。他行けない。
中には9月に購入したばかりという夫婦も…。
9月に購入した夫婦(30代):住み始めて1カ月で提案があって、売るか売らんか決めろみたいな、ハチャメチャなことに。
そもそも、不動産会社側が住民側に提案することをマンションの管理組合が認めたからこそ起きた今回の事態。
関西テレビは管理組合に取材を試みたが、回答は得られなかった。

■街づくりにおける「合意形成」 阿倍野エリアでは40年以上も
街の開発に伴う住民との”合意形成”をめぐる問題は、決して珍しいことではない。大阪市の「阿倍野」エリアの大規模再開発では、計画から40年以上の年月をかけ、地域住民との合意形成を図ってきた歴史がある。
まちづくりの専門家は、「合意形成が難しいからこそ、丁寧な話し合いが必要だ」と指摘する。
立命館大学理工学部 阿部俊彦准教授:今回の(マンション)建て替えの話もそうですし、一般的なまちづくりもそうなんですけど、当事者同士だとなかなか話し合ってもうまくいかない。中間的に専門家なり、合意形成を支援する、客観的な立場でコーディネーター的に入る方が必要。
急激な街の変化にともなう地元住民との認識のズレ。誰もが納得のいく街づくりは簡単ではない。
しかし、今回のケースでは提案から決議までわずか2カ月という短さに、住民の多くが戸惑いを感じている。
高齢者が多く住む住宅での大規模な変更に際して、十分な説明期間と丁寧な合意形成プロセスが求められているのではないだろうか。
(関西テレビ「newsランナー」2025年11月27日放送)

