27日から県内の一部地域で「タクシー」の運賃が値上げされました。
2023年以来となる運賃改定、タクシー業界の現状に迫ります。

県内2番目の人口を擁する福山市。
JR福山駅のタクシー乗り場では、続々と利用客が乗り込んでいきます。

【毛利 祥子 記者】
「いつもの駅前の風景ですが、きょうからタクシーの初乗り料金が変わったんです」

県内の広島市近郊の市町を除いた12市5町で、27日からタクシーの初乗り運賃が、これまでの1.5キロあたり750円から、1.42キロあたり800円となりました。
運賃の値上げは2023年6月以来となります。

【利用者は】
Q:値上がりは?
「いやです。安いほうがいいです」
Q:800円という値段は?
「仕方ないかな」
「賃金上げないというのはあると思うので…」

利用客からも思わず漏れる本音…走行中に加算される運賃は288メートルあたり100円となり、運賃改定率は過去2番目に高い12.09%となりました。
運賃の値上げにはどのような背景があるのでしょうか。

福山市新涯町に本社を置くアサヒタクシー。
この会社では155台の車両を保有しています。
26日は運賃改定に備え、車体のシールの貼り替えやメーターの変更作業に追われていました。

【アサヒタクシー 運行監査本部長 冨田 直也 さん】
Q:改定をどう受け止めている?
「乗務員が少なくなり、高齢化している。平均年齢は60を超えているので、そういう意味では若い人を採用したい。今走っている方の賃金もあげたいというのもある」

国土交通省・中国運輸局は先月、この地区のタクシーについて運賃改定を決定しました。
その大きな理由の1つが深刻な乗務員不足です。

国土交通省のデータによると、福山市など12市5町の乗務員数の推移は、2020年から右肩下がりに減少。
去年までの5年間で400人ほど減っています。
さらに乗務員の平均年齢は64.6歳と高齢化も課題となっています。
今回の値上げは乗務員の賃金水準を引き上げるなど、労働環境を改善しドライバーの増加につなげる狙いがあります。

【アサヒタクシー 乗務員 小川 晋平 さん】
「やっぱり生活していかないといけないし、モチベーションも上げてやっていかないと、危険と隣り合わせの仕事だし、体にも負担のある仕事なので、それなりの待遇は欲しいなと思う」

ドライバー歴3年の小川晋平さん。

【アサヒタクシー 乗務員 小川 晋平 さん】
「ただ利用客には負担がかかってしまうので、そこは…考える部分もある」

小川さん自身も複雑な思いを抱いています。

【アサヒタクシー 乗務員 小川 晋平 さん】
「メーターが上がっていくことにすごく高い乗り物だと思うし、決して安い乗り物ではない。利用客の気持ちはよくわかる。安全が一番で、それが欠けてしまうとどうにもならないので、安全が一番で運転しています」

利用客が安心かつ快適に利用できるよう、この会社では運賃改定で得た収益を安全性能の高い車両の導入や社員の教育費などに充てる予定です。

【アサヒタクシー 運行監査本部長 冨田 直也 さん】
「事業者の給料アップ、会社としての車などの経費にかかる部分を補うための運賃値上げとなるのでご協力をお願いしたい」

~スタジオ解説~

タクシー運賃の値上げはエリアによって時期や料金に違いがあります。

27日から値上げされた呉市・福山市など12市5町で1.42キロあたり800円、12月5日から広島市近郊の2市4町は、1.45キロあたり800円となります。

また走行中に加算される運賃の額は、前者の市町の加算運賃は288メートルあたり100円ですが、後者の広島市近郊は100メートルあたり100円となっています。

なぜ同じ県内でも違いがでるのか…。
中国運輸局によりますと運賃改定は各事業者の営業実績を加味して算出しているということです。人口の多い地域と少ない地域では利用客数や回転率で違いがあり、営業実績にも差が出やすいので、こうした面も考慮し算出されています。

テレビ新広島
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