ネット上での誹謗中傷や炎上。いまや私たちの生活では当たり前に見聞きする現象となっているが、その実態はどうなのだろうか。「ネット炎上」の意外な真実に迫る。

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ネット炎上はごく少数の声だった

ネット炎上とは、ある特定の個人や企業の行為や発言などに対して、ネット上で多数の批判や誹謗中傷が行われることだ。国際大学の山口真一准教授によると、炎上の件数は年間約1200件、1日あたり3件以上発生している計算になる。

しかし、炎上の実態は私たちの想像とは大きく異なっていた。

「ネット炎上1件について、X(旧Twitter)上でネガティブなコメントを書いている人は、ネットユーザー全体の約0.00025%に過ぎないということが分かった。ネットユーザーの40万人に1人ぐらいの声しか実は炎上には反映されていない」と山口准教授は説明する。

では、なぜごく一部の声が大きく見えるのか。それはSNSには極端な意見が増幅される特徴があるからだという。山口准教授の研究では、憲法改正について「非常に賛成」から「絶対に反対」まで7段階で調査した結果、SNS上では社会全体とは異なり、極端な意見のほうが多く発信されていることが明らかになった。

「極端で強い思いを持っている人ほど、どんどん大量に投稿する」のだという。

「極端な人」の意外な正体

街で聞いたところでは、誹謗中傷を書き込む人について「余裕がない」「若い人」「仕事をしていなさそう」「ひきこもり」といったイメージが語られた。

しかし、山口准教授の研究結果は、そうしたステレオタイプを覆すものだった。

「男性であるとか、主任係長クラス以上である、あとは年収が高いとか。そういった方の方が実は炎上に参加しやすい傾向にあるということでした。無職で引きこもりでネットヘビーユーザーで…というようなステレオタイプとは異なって、実はいろんな属性の人が加害者になりうる」と山口准教授は指摘する。

個人的な「正義感」が動機に

驚くべきことに、多くの人がネット上で攻撃的になる理由は、悪意からではないという。

「主にその人の中の個人的な正義感である。『許せなかったから』『失望したから』要するに相手が悪くて自分が正しい。こういった考えで攻撃するのが大半。あくまで個人の正義感」と山口准教授は説明する。

こうした「正義感」から発せられた言葉であっても、名誉毀損や侮辱罪に問われるリスクがある。では、どのような投稿が誹謗中傷に当たるのだろうか。

「その人自身や家族などを攻撃していたら誹謗中傷。『バカ』とか言葉でののしるとか、『容姿の否定』『人格の否定』こういったものが誹謗中傷に当たる」と山口准教授は明確に示す。

炎上されやすい投稿とは

山口准教授は、炎上されやすい投稿の特徴も指摘する。

「研究で分かっているのは政治の話題。自撮り(生活がわかる)恋人との仲良しぶりを投稿する」といった内容が炎上しやすいという。

さらに、「ネット上で嫌な思いをしている人ほど炎上に参加する傾向」があり、「炎上に参加している人は自分が正しいと思っているので、誹謗中傷を書いても気づいていないというケースが多い」と警鐘を鳴らす。

誰もが加害者になる可能性

「誰もが加害者になりうるということを認識して、その上でやはり一番大事なのは、投稿する前にまず読み返すということですね」と山口准教授はアドバイスする。

ネット情報に「個人的な正義感からの怒り」を感じたら要注意だ。行動する前に冷静になり、「こんな意見もある」と中庸を心がけることが、ネット社会を生きる上で大切なスキルとなるのではないだろうか。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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