2013年、「餃子の王将」の運営会社の社長が射殺された事件の初公判が、きょう=26日午後に開かれ、被告の暴力団の男は起訴内容を否認し”無罪”を主張しました。
”異例”の展開を見せた初公判の様子を傍聴した記者の報告です。
■「防弾パネル」に「ブルーシート」
【酒井麻衣記者】「特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の田中幸雄被告(59)は、2013年、何者かと共謀し、王将フードサービスの社長だった大東隆行さん(当時72)を射殺した殺人などの罪に問われています。
午後1時半から初公判が始まりましたが、通常とは異なり、法廷に防弾パネルとブルーシートが設置されて、傍聴席と証言台が区切られ、ブルーシートは開廷2分前に外されました。
さらに検察側には、大きな2メートルほどのホワイトボードが設置され、誰かを隠しているような形で始まりました」
■ハキハキ力強く「無罪」主張
【酒井麻衣記者】「田中被告は上下スーツ姿でサンダル眼鏡にマスク姿で入手しました。
入廷時に一礼。さらに弁護側、検察側、裁判官側にも一礼しました。
その際にノートを持っていて、傍聴席をぐるりと見渡し、誰かを探しているような素振りも見せました。
問いかけられた際には、「はい」とハキハキ答えていて、起訴内容について問われると「私は決して犯人ではありません。任侠の志として濡れ衣の一つや二つ、甘んじで受け入れます。
だからといってセンセーショナルな事件まで到底承服できない。私自身は決して犯人ではありません」と力強い声で無罪を主張しました」
■”叫び声”で一時休廷
【酒井麻衣記者】「その後、検察側の冒頭陳述が始まる予定でしたが、検察側の姿が隠された場所から「何が無罪やねん。工藤会ががなんやねん。一般人に手出していいんか。うちの大切なお父さん殺して」と女性の泣きながら叫ぶ声が聞こえました。
さらに傍聴席からも男性の叫び声が聞こえるなど、一時堤内は騒然としました。
裁判長は田中被告を一旦退廷させ、休廷する措置をとりました」
■「息をひそめて深海魚のように」で犯行隠し通す意図?
【酒井麻衣記者】「その後、再開された検察側の冒頭陳述では、被告が事件の報道の後、「警戒を解いてはいけない。息を潜めて深海魚のように」と携帯電話に入力していたことを明らかにしました。
これは「田中被告が犯行を隠し通そうとした」と主張したいものだとみられます。
また、他の組員に「『旅行に行く。電話には出られない』などと伝え、音信不通になり、組事務所への出入りもなかったと指摘しました。
一方弁護側は、田中被告が事件当時、現場の京都ではなく「福岡にいた可能性がある」という主張を初めて述べました。
福岡にいたのであれば当然「無罪」になるため、検察側とは”全面対決”の見通しです。
さらに、弁護側は検察側の主張について、「間接証拠ばかりで立証に値しない」として、検察側の主張を不十分として崩していく戦略をとるとみられています」
■被告が「工藤会」のためか”異例”の対応
【青木源太キャスター】「初公判、異様な雰囲気・展開となっていますけれども、裁判員もいないという裁判なんですよね」
【酒井麻衣記者】「今回の事件、他の裁判との最大の違いは裁判員がいないということです。『殺人罪』の裁判は原則、『裁判員裁判』で行われますが、去年、最高裁がこの事件については対象から除外する決定をしました。
法律では、『裁判員の生命や身体などに危害が加えられるおそれがある場合、対象から外す』と規定されています。
工藤会をめぐっては、過去に殺人罪などに問われている野村悟総裁が1審で死刑判決を受けた際、裁判長に『生涯後悔するぞ』などと声を上げたこともありました。
今回の決定も工藤会に所属する人物の心理に一般人を参加させることへのリスクを考慮したものとみられています」
【青木源太キャスター】「『無罪ちゃう言うてるやろ』という女性の叫び声が響いて一旦退廷させられたということですが、その時の田中被告はどんな様子だったでしょうか」
【酒井麻衣記者】「特に動揺することはなく、少し前からちょっと前のめりでソファに座っていたのですが、その様子でずっと前を向いている様子でした」
■判決は来年10月
「直接証拠」がない中での裁判はどうなっていくのでしょうか。
判決は来年10月に言い渡される予定です。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」11月26日放送)