岐阜県養老町にある「299(にくきゅう)」は、精肉業を営む店主の父が仕入れる飛騨牛を使ったハンバーグが話題の店です。最高級A5ランクの肉を使いながら、ランチセットは1000円と破格。家族のチームワークが生む、行列のできる人気店です。
■“自分の家のお肉で”… 精肉店の娘が開いたハンバーグ専門店
2025年7月にオープンしたハンバーグ専門店「299」は、連日お昼時には満席となる人気店。店主は、地元出身の伊東杏奈さんです。

杏奈さん:
「自分がハンバーグ好きっていうのが一番大きくて、“自分の家のお肉”を使ったハンバーグを届けられたらいいなと」
その“自分の家のお肉”を支えるのは、精肉会社を営む父の伊東國治さんです。この道50年の肉のプロ・國治さんが選ぶのは、最高級A5ランクの飛騨牛。

國治さん:
「飛騨牛のカッパ。脂が多いですけど、溶ける脂。甘みも出るし粘り気も出る。ハンバーグには適している」
國治さんの確かな目利きで仕入れた希少部位「カッパ」は、赤身の濃厚な旨みと上品な脂の甘みが特徴です。調理を担当するのは、杏奈さんのパートナー・祐基さん。ひき肉に塩コショウとナツメグを加えます。

祐基さん:
「入れすぎるとスパイスの方に味が引っ張られちゃうので、お肉の味そのものを出せるように(スパイスは)少なめで」

炒めた玉ねぎにパン粉と地元産の卵を合わせ、手の熱で脂が溶けないよう冷やしながら素早く混ぜます。焼き方にもこだわりが。中火で表面をしっかり焼いて肉汁を閉じ込めます。両面をじっくり15分焼き、自家製デミグラスソースをたっぷりかければ、「299ハンバーグ」(1000円)の完成です。

箸を入れた瞬間に肉汁があふれ出し、脂はサラッとしていてペロリと食べられます。「炙りチーズハンバーグ」や、おろしポン酢の「和風ハンバーグ」も人気です。
■「肉汁がすごい」…地元で評判のランチ
午前11時の開店と同時に店内は満席に。杏奈さんの母・富士子さんもホールを手伝います。

客:
「肉汁がすごいですね。米が進みます」
別の客:
「安いです。2000円くらいでも食べます」
目玉焼き(100円)やソーセージ(300円)のトッピングも人気で、トロトロの黄身と飛騨牛の相性は抜群です。

客:
「飛騨牛の甘みがふわっときて、おいしかったです」
正午を過ぎると忙しさもピークに。鉄板から心地よい音色が響き続けます。
富士子さん:
「元気で手伝わせてもらっているのが一番幸せです」
■“焼肉街道”の町で挑む養老の新名物・ハンバーグ
なぜ飛騨牛でハンバーグなのでしょうか。
地元客:
「養老町は焼肉オンリーなので、焼肉じゃないお肉料理がもっとできるといい」
別の地元客:
「焼肉店は多いけど、ハンバーグをメインでやっているところは養老町ではあまり見ないです」

養老町は古くから精肉業が盛んで、県道沿いには焼肉店が多く立ち並び“焼肉街道”とも呼ばれています。杏奈さんは「焼肉以外の店があまりないので、競合が少ないハンバーグで」と挑戦を決めました。しかし、最初は試行錯誤の日々だったといいます。
祐基さん:
「最初は肉汁が一滴も出ないようなハンバーグばかりで」
そこで、國治さんに相談したところ、ハンバーグに合う肉の種類や配合を教わり、希少部位「カッパ」を使うことになりました。

祐基さん:
「“ハンバーグで肉汁を出したいならこういう肉を”とお父さんに言われて。それで試作を重ねて今の形になりました」
杏奈さん:
「なるべく地域の人にも楽しんでもらえる価格で頑張っています」
精肉のプロである國治さんが仕入れた飛騨牛を、杏奈さんたちが試行錯誤して、絶品のハンバーグに仕上げました。さらに、家族ぐるみのチームワークが、お値打ちで絶品のハンバーグを生み出しています。
杏奈さん:
「地域の人が気軽に来てもらえるようなお店にしたい。名古屋や近県からも養老に来るきっかけになれば、養老のためにもなるのでうれしい」
“肉の町”養老に、家族の絆が焼き上げた新たな名物・ハンバーグが生まれました。
