「冬の味覚」カキの死滅が県内に広がり、民間調査会社の東京商工リサーチは、事業者への影響がおよそ300億円規模になる見通しを発表しました。
なぜ、このような事態が起きたのか…「ツイセキ」します。
今シーズンの出荷が始まったカキ。
しかし今、そのカキに異常事態が起きています。
【五十川記者】
「ここから見ても、水揚げされた瞬間からパカンと口が開いたようなものが、いくつもあるのが確認できます。身が入っていない・・・」
今年9月から10月上旬、呉市や東広島市などでカキが大量に“死滅”する被害が発生。
県は、夏以降に続いた海の「高水温」と「高塩分」でカキが弱ったという見方を示していますが…
海の生態系や環境に詳しい広島大学の山本民次名誉教授は、海中の酸素が少ない“貧酸素”が原因だと指摘します。
【広島大学・山本民次名誉教授】
「貧酸素は毎年起こっている。毎年、沖の方で起こっています。今年は酸素がない水が(水深)3メートルくらいまで来ている。これびっくりです」
貧酸素の海水がカキいかだがある岸側に押し寄せたのは、今年9月から県内に吹き続けた“北風”が関係しているといいます。
【広島大学・山本民次名誉教授】
「南風だったら貧酸素の水が下の方におさまっていたのが、北風が吹き続けてしまって岸にグッと来てしまった」
沖の方では毎年発生しているという“貧酸素”の状態。
“貧酸素”の要因は海底に溜まった“ヘドロ”化した泥です。
【広島大学・山本民次名誉教授】
「海底面でへドロから出てくる硫化水素がすぐに一瞬に、水の中の酸素を消し去ります。(海の)下からどんどん酸素がなくなっていく」
山本さんは貧酸素の影響はカキだけではないと、警鐘を鳴らしています。
【広島大学・山本民次名誉教授】
「海の底が貧酸素になるような場所では息ができないので、海底にすむ底生生物、エビとかカニとか貝とかゴカイとか、そういうやつは一気にいなくなります。これが漁獲量の減少のひょっとしたら最大の原因かもしれない。ヘドロ自体をよくする、硫化水素を抑えることが重要」
問題の解決に向け、早急な対応が求められています。
《スタジオ》
大量のヘドロを取り除くことは難しい。
山本さんはヘドロ化した泥から出る「硫化水素」を抑えることが大切だと指摘。
山本さんが取り組んでいるのが熱風乾燥させた「牡蠣殻」の利用です。
殻の表面にくっついた酸素をヘドロ化した泥の中の硫化水素と反応させて、硫化水素をなくすものです。
一方で、広い範囲で使おうと思うとコストもかかる。
このまま放っておくと、毎年「貧酸素」の状態が起こりうるということで、今後、様々な検証が求められます。