特集です。
国内各地で災害が相次ぐ中、重度の障害がある当事者や家族は災害にどう向き合っていけばいいか考える講演会が16日の日曜日に宮崎県宮崎市で開かれます。
「遷延性意識障害」という障害をご存じでしょうか?
遷延性意識障害は日本意識障害学会によると、病気やけがで治療をしたにも関わらず3カ月以上にわたって自力で動くことや食べること、排泄ができず寝たきりの状態を指します。
この障害がある人の中には意識がない人もいますが、中には意思を示せる人もいます。
かすかな意思表示で家族とつながる宮崎市の男性を取材しました。
宮崎市に住む大徳敬祐さん37歳。
重度の障害があり寝たきりで、父親の幸博さん、母親の容子さんがケアをしています。
(敬祐さんの母 大徳容子さん)
「かけ物はモーフとしま模様でいい?」
1988年生まれ。
スポーツ万能で野球が大好きだった敬祐さん。
高校3年生の時にバイクで転倒し、交差点で前から来た軽乗用車にはねられました。
一命はとりとめたものの、頭部損傷で医師から遷延性意識障害という重い脳の障害が残ることを告げられました。
(敬祐さんの母 大徳容子さん)
「命さえあれば何とでもなると。悲観的な感じではなかった」
家族会の代表・谷口正春さんに話を聞くと、この障害がある人は宮崎県内に多くいることが見えてきます。
(遷延性意識障害家族の会つくし 谷口正春代表)
「昔言われていたのは植物人間という表現。県内で200から300人、推定値で。全国でも5万から7万人という推定値でしかデータがない」
母親の容子さんは事故のあと、胃ろうで栄養をとり、こまめに体勢を整えることが必要な敬祐さん中心の生活を送ることを決意。
療養、介護生活は18年、訪問介護に支えられています。
2時間ごとに訪れるヘルパーがストレッチやバランスボールを使った運動で筋肉や脳に刺激を与えます。
一方で訪問介護では思うようにいかないことも…
(敬祐さんの母 大徳容子さん)
「2時間空けないと(ヘルパーが)入れないというのがある。来てほしい時に来てもらえない。制度的に無理というのがある」
(遷延性意識障害家族の会つくし 谷口正春代表)
「宮崎は特に。田舎に行くほどヘルパーを抱えているところは少ない。家族がその分をしなきゃいけない。だから家族は絶対に家を離れられない。在宅の場合」
これまで、この障害には医学上「意識がない」とされてきましたが、10年ほど前から一部の人に意識があることが分かっています。
敬祐さんは会話をすることはできません。
母の手のひらに置かれる敬祐さんの人差し指。
そのわずかな動きで意思を読み取ります。
指談と呼ばれる伝達手段です。
(敬祐さんの母 大徳容子さん)
「オカファーさんは知ってた?」
「はい」
「ありがとうございます」
「訴えたいときは歯ぎしりで訴える。その時に何?と聞くと、じゃ暑いって書いて。あ、つ、い。次寒いって書いてさ、む、い」
この日、大好きだった野球をしていた頃のビデオを久しぶりに鑑賞しました。
(敬祐さんの母 大徳容子さん)
「あら敬祐じゃない?敬祐じゃない。分かってた?」
「そうやね。潤んでますよ。懐かしいね」
「悔しいって言ってますよ」
容子さんによると、敬祐さんには最近回復の兆しが見えてきたといいます。
長年の介護が実を結んだのでしょうか。
少しずつ口から食事をできるようになりました。
(敬祐さんの母 大徳容子さん)
「指談を通して、今日は寒いとか言っていたので、そうやってしゃべれはしないけれども伝えようとはしている、分かっていると分かってほしい。意識がないんじゃない、手立てがないということ。お父さんお母さんって呼んでほしい」
「伝えようとしている」
遷延性意識障害の中には敬祐さんのように言葉を持っていることを知ってほしい。
敬祐さんの両親はそう願っています。