約40年親しまれてきた長野県松本市のJR松本駅の音声が設備の更新などを理由に11月16日で聞き納めとなる。この声を担当した声優の沢田敏子さんが先日、松本駅を初めて訪れ、「記憶に残り続けたらうれしい」と惜別と感謝の言葉を口にした。

どこか旅情を誘う駅の名物アナウンス

JR松本駅。列車が到着すると―。

「まつもとぉ~まつもとぉ~」

語尾を伸ばし、どこか旅情を誘う独特の自動音声が流れる。

JR松本駅(10月30日)
JR松本駅(10月30日)
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約40年ほど前から使われ市民だけでなく観光客、鉄道ファンからも愛されてきた。

しかし、放送機器の更新に伴い11月16日で「聞き納め」となる。

“声の主”沢田敏子さんがJR松本駅へ

「まつもとぉ~まつもとぉ~」

声優・沢田敏子さん:
「あぁ、聞こえる、聞こえる」

11月1日、特急あずさから松本駅に降りた女性。

沢田さん:
「なんか、本当に感慨深い」

声優の沢田敏子さん。実は自動音声の「声の主」だ。

アルプスの少女ハイジのナレーションなどで知られる沢田さん。40年ほど前に当時の国鉄から依頼を受け、さまざまな駅のアナウンスを担当した。

声優・沢田敏子さん(11月1日)提供:松本・長野駅自動案内放送研究保存会
声優・沢田敏子さん(11月1日)提供:松本・長野駅自動案内放送研究保存会

松本駅用には特別な注文が入ったそう。

沢田さん:
「松本は今までと、他とは違う雰囲気を出してほしいと言われて、松本はすごく空気が澄んでいて、山の澄んだ空気とそこからイメージが膨らんで、やまびこみたいな読み方にしましょうかねと、試行錯誤しながら」

「まつもとぉ~まつもとぉ~」

沢田さん:
「アテレコしてみた」

初めてホームで聞いた感想は―

沢田さんにとっても思い入れが強い放送だったが、今まで松本駅に来たことはなかった。

まもなく「聞き納め」になると知り、交流のある鉄道ファンと一緒に今回の訪問を企画した。

沢田さん:
「17時20分発、特急あずさ50号」

音声や映像を記録に残す―。

「特急あずさ50号」のアナウンスを記録に残す沢田さん(提供:松本・長野駅自動案内放送研究保存会)
「特急あずさ50号」のアナウンスを記録に残す沢田さん(提供:松本・長野駅自動案内放送研究保存会)

初めてホームで聞いた「名物放送」は?

沢田さん:
「スピーカーから出る音が、空気の関係で音声が違って、柔らかく聞こえるときと、力強く聞こえるときがありますね」

「親しんでいただき本当にありがとう」

改札を出た沢田さんに松本市在住で仲間の鉄道ファンが―。

松本市在住の鉄道ファン:
「まつもと~、まつもと~」

沢田さん:
「まつもと~、まつもと~、終着、松本です」

鉄道ファン:
「ようこそ松本へ!」

沢田さん:
「素晴らしい、空気が澄んでいる。長年、使っていただいてありがとうございます」

沢田さんの訪問を企画した鉄道ファンは―。

沢田さんと訪れた鉄道ファン:
「他の駅と比べると味わい深い。沢田さんの声質で『まつもとぉ~まつもとぉ~』と伸ばすところが好きで、音声と記憶に残していきたい」

沢田さんの訪問を企画した鉄道ファンと記念撮影
沢田さんの訪問を企画した鉄道ファンと記念撮影

名物放送は11月16日で終わるが、沢田さんは記憶に残り続けたらうれしいと話している。

沢田敏子さん:
「親しんでいただいて、本当にありがとうございました。(機械の)老朽化のために放送がなくなるということでございますが、私は老朽化していませんので、吹替とかアニメでなじんでいただきたい」

沢田さん:
「まつもと~まつもと~終着、松本です」

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