仙台放送の取材で明らかになった宮城県大郷町・石川町長陣営の“影武者”疑惑です。公職選挙法に詳しい専門家は、「小規模自治体ほど1票の差で結果が決まる」と行為の重みを指摘します。
大郷町民の告発によりますと、石川町長の後援会の男性は、町長選期間中の8月30日、候補者のタスキを着用して選挙活動をしたということで、男性と石川町長が公職選挙法違反にあたるとしています。
大郷町をめぐっては、スマートスポーツパーク構想をめぐって町が二分する議論が起こっていました。
人口減少が進む中、サッカーグラウンド12面などを新たに整備し、町に人を呼び込もうという大がかりな構想です。
構想見直しを訴えた石川町長は、推進してきた現職を514票差で上回り、初当選を果たしていました。
10月27日、影武者疑惑について石川町長に話を聞くと。
大郷町 石川良彦町長(Q.違反は自身で把握していたか)
「分からなかった。違反は、違反なんでしょうね」
自身の関与を否定したうえで、経緯を確認する意向を示しました。
公職選挙法に詳しい明治大学大学院の湯浅墾道教授です。警察の捜査で今回の行為が裏付けられれば、違反にあたるとし、選挙結果への影響も否定できないとしています。
明治大学大学院 湯浅墾道教授
「大都市の選挙ではSNSなどのインターネットを使った選挙運動の効果が相当大きくなってきている。地方の小さなところでは、まだまだ、SNSなどよりも実際の選挙運動の効果の方が大きいと考えられる。今回のタスキの件も含めて、人手による選挙運動の効果というのは、まだまだ大きいだろうと思います」
タスキを着用していた男性は仙台放送の取材に対して「思い付きでやってしまった」と繰り返し違反という認識はなかったと説明しています。
明治大学大学院 湯浅墾道教授
「公職選挙法の規定が難しいことは事実なんですよ。しかしながら難しいから守らなくていいですということにはならない。候補者本人だけではなくて、それを助ける周りの人たちも含め、十二分に理解する必要があると思います」
湯浅教授は人口減少が進む中、全国的に、大がかりな町おこし政策の是非が争点となる選挙が増えているとしています。
そのうえで、公正な選挙で合意形成を図るためにも法律の順守が必須だと指摘します。
明治大学大学院 湯浅墾道教授
「特にその小規模な地方公共団体になればなるほど、本当に1票の差で結果が決まってしまうということもありますから。小規模なところこそ、選挙運動についてのルールをきちんと守らないと、選挙戦が過熱してしまうということになりかねない」
疑惑が浮上した中、28日は、スポーツパーク構想についての住民説明会が開かれました。
石川町長は当選後、構想を推進してきた事業者・スポーツXに対し、6面への規模縮小や、賃料の値上げなどを提案。話し合いの結果、スポーツXが撤退することで9月、合意しました。
町側は合意に至らなかったことが構想の全面中止を意味するものではなく、改めて構想の是非や規模などについてアンケートを行った上で、今後の方針を決めたいと説明しました。
参加者した地権者などからは、具体的なスケジュールや予算規模を示してほしいなどの意見が相次ぎました。
参加者
「ここまで3年4年かかって、プラスまた3年4年。ここからいなくなる人もいるかもしれない」
大郷町 石川良彦町長
「地権者の方々からいろんな意見出ましたので、これを参考にしながら対応していく」
一方、影武者疑惑については説明会で言及せず、取材に対し、28日の夜の段階では、「まだ経緯把握には至っていない」と回答しています。