新米が店頭に並ぶようになって1カ月あまり、コメの値段は最高値に迫る水準で高値が続いています。
振り返ると、今年のコメ作りは、コメ不足・価格高騰の中で始まり、備蓄米の大量放出、そして猛暑と例年になく激変する環境で行われました。
県内の、ある農家の田植えから収穫までを見つめました。

水を張った田んぼに整然と並ぶ苗。
青々とした葉が伸び、穂がつき始める夏。
まっすぐに伸びる黄金色の穂が、頭を垂れる実りの秋へ。

登米市迫町。水が豊かなこの地は古くからコメ作りが行われてきました。
「登米」という地名は、「江戸に米が登る」ことが由来とも言われます。

伊藤秀雄さん
「今年はいいんじゃないですか、今年も、か。天候に合わせたコメ作りをしています。天候を変えられないからね。」

伊藤秀雄さん。1982年に仲間とともに生産組合を設立し、農協を通さず、コメ作りを続けています。
コメ不足と価格の高騰の中始まった今年のコメ作り。伊藤さんも戸惑いを抱えながら田植えに入りました。

伊藤秀雄さん
「我々生産者が去年の秋に全部売っている。それがなんで今みたいな倍の値段で売られなければいけないのか、流通の仕組みなので分かりません。」

6月。政府備蓄米の随意契約による売り渡しが始まりました。

新田尚さん
「今のところはさほど影響はない。秋のコメの値段が備蓄米の放出によってじゃぶじゃぶ出ていれば、じゃぶじゃぶ値段が下がってしまう。それはちょっと分からない。」

記録的な猛暑。例年以上に神経を使う夏になりました。

無事、出来秋を迎えました。

新田尚さん
「手応えとしてはいい」

伊藤秀雄さん
「今年は高温で、どうなることかと思ったんですけど、気を使って田んぼの管理をしたので逆に今年は質もいいし、収獲量もまずまず。」

伊藤さんの経営するレストランです。

伊藤秀雄さん
「今年きょうから初めての新米をお店で提供するんです。」


「本当にこのごはんがおいしい。ふわっとした爽やかさ、甘くて素直においしい。すごくおいしいです。」
「甘みがあって歯応えがあって、東京に住んでますけどなかなか東京では食べられない。とてもおいしいです。」

一方、新米が店頭に並び始めてもコメをめぐる状況は出口が見えません。

伊藤秀雄さん
「昨年の米価では農家はやっていけない。急に値段が上がり過ぎるのはお互いによくないと思っている。安定した食料供給をしっかりやっていきますので消費者の皆さんも一緒に考えながらやっていきたいなと思います。」
「コメ作りって本当に難しいんですよ。50年間やってますけど50回しか逆に作っていない。まだまだ勉強しなきゃいけないなと思います。…これ名ゼリフだから」

政府の方針や消費者の動向、そして、大きく変わる自然。
複雑な環境に翻弄されながらもコメ作りは続いていきます。

仙台放送
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