ネット通販大手「アスクル」がサイバー攻撃を受けてから、29日で10日が経過しました。
29日午後、アスクルは出荷を停止していてたコピーペーパーやペーパータオルなど、37のアイテムを医療機関や介護施設などからFAXで注文を受け付けると発表しました。
しかし、本格的な復旧はまだのようです。
アスクルの子会社に配送の一部を委託している「無印良品」や「ロフト」などでは、物流障害の影響でネットストアでの販売を一時停止しています。
そんな中、特に大きな影響を受けているのが医療業界です。
先週「イット!」が取材した東京・足立区にある訪問看護を行う会社では、アルコール消毒綿が残りわずかとなっていました。
訪問看護ステーション ブロッサム・西村直之社長:
(アルコール消毒綿の)在庫があと7箱。あと10日ぐらいしかもたない。
この時から約1週間、29日の状況を聞いてみました。
訪問看護ステーション ブロッサム・西村直之社長:
酒精綿というアルコールの綿があと3箱になった。プラス1箱をドラッグストアで購入して合わせて4箱。(アスクルは)その日の早い時間帯に頼めば、うまくいくと当日その日にくる。(アスクルは)遅くても翌日には来る。他の業者に依頼をすると1週間ぐらいはみなきゃとなる。
さらに、都内にあるクリニックでも影響が長引いていました。
いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
医療で使う物品の購入ができなくなってしまった。「メディカルシーツ」という処置・手術・点滴などのときに(ベッドを)汚すわけにはいかないので、上にきれいな滅菌シーツを敷く。はっ水・吸水が絶妙なバランスで、しかも吸水力の強い、おむつ以上ビニール未満の専用シーツがあるが使い捨て。(在庫が)切れてしまい買おうと思ったが、アスクルじゃないと売っていない。
医療備品の約7割をアスクルに注文しているというこのクリニック。
今は別のサイトから購入しているといいますが…。
いとう王子神谷内科外科クリニック・伊藤博道院長:
皮膚の縫合用のステープラーも(別会社だと)3倍の値段の見積もりが来た。(他の備品も)一般の買い方をすると2倍・3倍の値段がついてくる。処置や人件費を考えると赤字に近くなるので悩ましい。
街の人からは、「医療関係で産休中だが、アスクル使っていたので大変だろうなと思って。(子が)病気になり 「(備品が)足りない」と言われたら、どうしようもない。かわいそうなので、早めに対応してもらいたい」など不安の声が上がっていました。
一方、アサヒグループホールディングスへのサイバー攻撃によるシステム障害も続いています。
街では「コンビニでアサヒだけ入っていない。ショーケースが空いてしまっている」「アルバイト先が飲食店だが、『ビールが来ない』と騒いでて、困った」などの声が聞かれました。
アサヒへのサイバー攻撃から1カ月がたったわけですが、様々な方面で影響が続いているようです。
まずスーパーへの影響ですが、店頭販売には影響はあまりないそうです。
ただ一方で、オンラインは一部のスーパーではアサヒの商品を一時販売休止しているところもあるということです。
そして「お歳暮」について、一部の百貨店では影響が出そうです。
例えば大手百貨店の関係者は「ビールは売れ筋の1つなので、今の状況が続けば客の希望に添えない場合も出てくるのでは…」と話しました。
これはアサヒや他のメーカーともに、お歳暮より通年商品の供給を優先する必要があるためということです。
そんな中、ビールに合う「とんかつ」を提供する飲食店にも影響が出ているようです。
分厚いお肉を低温でじっくりと揚げた白いとんかつが名物のお店「とんかつ六角箸」では、普段はアサヒビールではなくサントリーのビールを提供しています。しかし…。
とんかつ六角箸・田中朋行さん:
通常使っているのがサントリーのプレミアムモルツだが、そちらが入ってこなくなって代替のものを使うことをやっている。今は代替でオリオン(ビール)を使用しています。なかなか関東だとオリオンビールって飲める場所って沖縄居酒屋さんしかない。「こういうふうに飲めるのはうれしいね」という話は伺ってます。
このサイバー攻撃による影響はいつまで続くのでしょうか。
それぞれの現場で対策が進められています。